緑が深く山に囲まれおおよそ現代の文化とかけ離れた村。村民は少数で農耕を主に生活を保っていた。しかし、平和に暮らしていたその村も国の異変により平穏な時が脅かされようとしていた。
「コレ!そっちにいっちゃいけない!」
畑を耕す腰の曲がったばあ様が山へ向かおうとする少女を止める。灰色がかった空はその言動に従いなさいと言わんばかりに次第に黒みを帯びてくる。
「大丈夫よ。山菜を採ってくるだけだから・・・」
「ま、待ちなされ!そっちの方向は・・・」
年を取って声も強く出ないばあ様は霧の立ちこめる山へと消えていった少女を心配そうな顔をして見守るように立ちつくした。 少女の名前はマヤ。新月村の巫女が産んだ忘れ形見。マヤの母、サトは類い希な神通力を持って放射能にやられた土を実りある土に蘇らせた。その後、村の若者と結婚してマヤを生む。平和な村に幸せな家族。少数で若者が少ない村にとっては喜ばしいことばかりだった。
何よりもサトの神通力が村人をあらゆる面で救っていた。それから十年後、不幸の影は突然やって来た。村を囲んでいる山から一人の男がやってきて殺戮を始めたのだ。巫女としてのサトとその夫であるリキは村民をまとめ被害を最小限にとどめ、その男を捕まえた。神通力により男の狂気を取ると奇妙な事を口走り、血を大量に吐いて死んでしまう。
「黒い月を見るな」
それから頻繁に同様の事件が起こり、サトはリキや村人の静止を振り切って村の結界となるべく自ら村の周囲が見渡せる金突き台で命を絶った。 籠いっぱいに山菜を詰め込んだマヤは村へ戻ろうと腰を上げる。来た時よりも更に黒みを帯びた霧の向こうに弱々しく光を放つ帯状の結界が見える。
「お母さん・・・」
マヤはその結界を見ながら呟く。
「今日も村は平穏だったよ。お母さんのおかげね」
母が結界となったとき、マヤは十歳だった。当時どうして母親が死ななければならなかったのか解らなかったが、あれから五年が経ち解りかけてきた。と言うのもマヤもサトの血を引く巫女に他ならないと言う力が現れてきたからだ。物思いに耽りながら村へ戻ろうとするマヤの耳に叫び声が聞こえる。
気になって立ち止まると本木田道の遙か遠くから聞こえてくるようだ。マヤは吸い寄せられるように声の発せられている場所へと向かっていった。 マヤは来た道を戻り更に進んで結界を抜けたことも気づかないで声の下へと進む。近づくにつれ声はどんどんと大きくなる。金属と金属のぶつかる音が聞こえたと思い立ち止まると突然前の黒い物体が倒れ人型をした影が現れる。
「お?こんな所にもいたか・・・ウッシッシッシ」
日が暮れるのも忘れて声の方角だけを頼りに歩いてきたので、何が起こったのかマヤには理解できない。そうしているうちに月明かりが二人を照らすとマヤは驚愕した。自分の前で倒れたのは男の人でその返り血を浴びた自分と真っ赤な目で狙うように自分を見つめる長身でやせ形の男。腰が砕け地面に座り込もうとするマヤに男は腹部を蹴られそのまま意識を失った。
マヤは大勢のざわめきと叫び声で意識が戻る。それと同時に下腹部に鈍い痛みを感じた。目を開けると自分の周りを金網越しに大勢の人が群がっていた。手足の自由が利かないので自分の体を見ると目を疑う光景がマヤを襲う。裸で磔にされているのだ。
しかも両足は限界まで開かれ、男の人を受け入れる準備もできていない大事な所に自分の腕ほどもあるパイプのような物が入れられていた。下腹部の痛みはその物体から出る何かで膨らまされているせいだった。 自分の置かれている状況がうまく飲み込めないマヤのすぐ横で太い男の声が鼓膜を破る声量で群衆に言う。
「ダークムーン様とその配下である屈強な兵は周囲の町を手に入れられた。これで我々は食料に困らなくなる。ダークムーン様に栄光あれー」
群衆からは歓声が上がり、それと同時に捕まった人々が次々と殺されていった。幾つもの断末魔がマヤの脳裏をかすめ、いつ自分の番になるのか怯えていると目の前に赤い目をした男が現れた。
「フッフッフ。怯えているなぁ。いいぞ~、その怯えた目。冷や汗に濡れた白い肌。食欲がそそる~」
「閣下。この娘はどうしますか?男どもは全て食用に処理しました」
黒いマントを翻し男は言う。
「この少女の前で残った女どもを始末しろ。メインディッシュをよりおいしくするために恐怖を与えるのだ~。おっと、下ごしらえを忘れるなよ」
「御意」
そう言うと黒マントを羽織った男は去っていった。 黒マントの男は気を失う前に会ったあの男だった。そして、彼こそがダークムーン本人だった。マヤはダークムーンが去った後に更に肛門に挿入されたパイプから液体を入れられ苦しんでいた。
「何故・・・こんな事するの?私・・・どうなるの?」
苦しいながらも側にいる兵に問いかけるが誰も微動だにしない。
「お願い!教えてっ!」
腹に力を入れて声を振り絞ると下腹部から激痛が走る。
「ほぉ~。生きの良い物だ。こりゃうまそうだなぁ~」
群衆の中の赤い目をした一人の男が自分を指して言う。マヤは直感的に悟った。この人達は私を食べるつもりなんだと。 そうしているうちに自分の前に裸の女性が四肢を板に釘で打たれ、仰向けのまま現れた。それを見た群衆の中の赤い目をした人々は他の群衆をかき分け群がる。女性の声とは思われない断末魔が一つ聞こえ、数分で彼女はただの生ゴミへと姿を変えていた。そんな光景が幾つも続き、絶望的情景にマヤは力無く首を垂れる。
「仕込みは終わったか?ん?な~んだ。こいつもう観念していやがる。こうなると肉が締まらないんだよな~。まぁいい、ゆっくりと恐怖を堪能して貰おう」
再び自分の前に現れたダークムーンが言う。
「じゃ、始めるか・・・」
男の手がゆっくりと細く変形し、黒く光る剣に変わっていく。黒光りした剣はもやのかかった太陽の光に鈍く反射し、マヤの腹部を浅く切り開いていく。赤く鮮やかな血が白い皮膚を嘗めるように下へと滴り落ち、下に置いてある大きな桶に次第に溜まっていく。
男は膨らんだ下腹部に変化していない方の手を入れ、ゆっくりと引きずり出した。激しい痛みと吐き気がマヤを襲う。そして、取り出された自分の子宮とそれを今、正にほおばろうとしている男の表情とその行動に最高の恐怖を感じる。
「いやー!!やめてー!」
首を激しく横に振るマヤに更に激痛が走り、意識を失いかけるがすんでの所で現実に引き戻されてしまう。
「人肉を溶かしてそれを子宮に入れてほおばるのは最高にうまい。ふっふっふ。そう思わないか?」
男の問いかけにマヤは息を切らしながら叫ぶ。
「思うわけ・・・無いじゃない!悪魔!鬼畜!」
「良い褒め言葉だ。が、旧人類に何を言われても何とも思わない。フッフッフッフ」
笑いながら更に男はマヤの体から腸を引きずり出し噛み切る。
「グアァッ・・・旧人類って・・・何よ!あなたが新人類とでも・・・言いたい訳?」
恐怖を通り越して痛みと苦しみだけがマヤを襲うようになってもマヤは言う。
「人間の本来持っている力・・・。黒い月が与えてくれた・・・」
男はそれだけ話すと貪るようにマヤの中に顔を突っ込み食べ始めた。
「あぁぁー!!!」
肺に溜まっていた全ての空気を吐き出すように叫び声をあげるマヤに巫女の神通力が光となって体を包む。 光は男の首を音もなく切り、腹部に頭の入ったまま灰色の空へと消えていった。
第二章 生き人形
光り輝く建造物。滑るように走る流線型の車。そして、町行く人々は色とりどりの滑らかな生地の超薄型の宇宙服のようなスーツを着てのんびりと歩いている。未来型のビルを抜けて少し郊外に出ると緑が生い茂っていて、そこではペットを連れてのんびりと散歩をしている。どこから見てものんびりとした空間だが、現代を生きている人にはいささか異様な雰囲気に感じるところがある。
それはペットだ。犬とか猫を想像する人も多いだろうが、ここではその他に人間もいる。大きな大戦の末、人間は精神的に進化し自らの体に手を加えて長寿になった。しかしながら、それを良しとせずに昔ながらの考えを持った人達はやがて旧人類と蔑まれ最後には新人類と化した人達に支配されていったのだ。旧人類達は戦いの末敗北を喫し、新人類の食料としてあるいはペットとして飼われる運命となる。
この都市の名前は「ネオ東京」。最新の技術が結集し見る物全てが輝いている。その中で大きなクリスタルに覆われて中の様子が見えない工場がある。有機物製造工場だ。その中では旧人類を仕分けして新人類達に商品として出していた。今で言うなら豪華な豚の解体場とでも解釈していただければ良い。
「おい。今日は珍しいのが来たぞ」
一人の長身の男がクリスタルの箱に入れられた少女を台車で運びながら他の者に言う。
「うぁ~。これって、オリジナル?クローンじゃないんだ?どこで手に入った?」
青い服を青い血で更に青みを帯び、振り返る。
「すぐ側の人口公園内の芝生さ。健康のために散歩していたら落ちてたんだ。どこから来たのか知らないが、どっかのペットでもなさそうだから拾ってきたんだ」
「すげぇなぁ。そんな事も在るんだ。で、ペットにするのか?食用にするのか?食用だと引く手数多だぞ。数千万の儲けだなぁ・・」
一人ニヤニヤする背の小さい男に長身の男は検査ボックスへ少女を箱ごと入れる。
「まっ、検査次第だな。年も若いし可愛い方だからペット処置して飼うのも悪くない」
暫くすると検査ボックスに取り付けられているディスプレイに少女に関するデータが表示される。それを見た長身の男は腕組みをして考え込んでしまった。
「どうかしたのか?金の卵に欠陥でもあったとか?」
ため息混じりに長身の男は話す。
「あぁ。どうやらこの少女の体内に異物が混じっているらしい。それは体の全てとほとんど融合していて取り外せないようなんだ」
「は~っはっはっは。とんだ期待はずれだったな。せっかくの金の卵も雑種じゃ値段も下がったりだ。食用にしても買いたたかれるな。ペット用の食事にするか?」
背の低い男はそう言いながら隣の部屋を指さす。隣の部屋では使い古されたペットが天井に吊されている。
「どれ、お前さんのために部屋を空けるとしよう」
そう言うと背の低い男は操作室に入っていった。暫くするとペットが吊されている部屋に明かりがともり床下からパイプが幾つも出てきてペットたちの肛門に挿入されていく。低い振動が男のいる部屋にも伝わり次第にペットたちは腹を膨らまされながら足をばたつかせる。
雄も雌もいろいろな表情と声を数分出しながら体型を変えていく。ペットに注入されている液体は体内の肉や骨を分解し液体状にするのだ。十分もするとペットはただの風船となって頭があった方から液体を垂れ流していた。背の低い男が操作室を出ると同時に風船からパイプが抜かれ勢い良く液体を流す。
「後は抜け殻を良く乾かしてスーツ製作に送れば終わり。ほれ、空いたぞ」
長身の男は溶かされたペットと検査ボックスの中の少女を見比べていた。おしいなぁ。そう思った瞬間、彼の頭の中に囁く声が聞こえてきた。
「我を・・・我を出せ!この女から我を・・・」
とっさに男は背の低い方に今の声の事を聞いた。
「おいおい。気でも狂ったのか?俺は何も言っていないぜ・・・うん?もしかして大部未練があるのか?分かった分かった。好きに悩んでくれ。俺はこの後ペットに食事と散歩をしてやらないといけないからな」
そう言うと、やれやれと言った感じでゆっくりと部屋をでって行った。その途端、長身の男の脳裏にさっきの沈んだ深みのある男の声がグルグルと周り出す。そうして入間に意識を失うとその場に倒れ込んでしまった。
「御主人様!」
あまり帰りの遅いのを気にしてショートカットで金髪の若い女性が首輪をしただけの姿で部屋に入ってきた。
「御主人様?」
その場に座り込み男の姿を見ているとやがて立ち上がり大きく背伸びをした。
「ふぅ~。ちょっとこいつを借りるぞ・・・」
目を真っ赤にして座り込む女に男は睨み付けるようにして言うと操作室へと入っていった。検査ボックスから出された少女は箱に入れられたままペット処置室へと入れられ中の明かりがつくと箱を取り外される。ベット上の台に仰向けに寝かされた少女の四肢と首は鉄製の輪で台に固定され、股を機械によって限界まで開かれると肛門とバァギナに透明なパイプが挿入された。
「ん・・ん?」
体の異変に少女が気づいたのはこの時だった。下から貫かれるような激痛と体内に侵入してくる異物に少女は体を動かそうとするが台に固定されていて思うように動けない。そのうち体内に入ってくる異物が腹を膨らませるほどに声が出なくなり目だけが眩しい天井を見上げていた。操作が終わった男は操作室から出てくると座り込んでいる金髪の女の首を持ち上げ立ち上げる。
「ふっふっふ、俺がここを出てからこんな者を作ったのか?相変わらずおもちゃ好きだなぁ。どれ・・・」
そう言うと男は女の下腹部に指の爪を立てゆっくりと突き刺していった。女は抵抗しないがその目は痛みを堪えていた。その上の額には菱形のチップが埋まっている。チップにより思考が制御されているのだ。
「ほ~。これとチップの併用でペットにしたのか・・・良い考えだ」
男が下腹部の直腸に有機質で出来た筒が外側を覆っているのとその内部には弁が仕込まれていて決して逆流しないように細工されているのを確かめた。その手は女の子宮を掴みニヤリとする。
「まだ・・・初期型だな?よしよし良いぞ~」
そう言うと男はスーツを解除して裸になり隆々とした太く長い男根を女に深々と突き刺し、激しく腰を振った。それと同時に男の手はそのまま内臓をまさぐる。二人が激しく燃え上がっている頃、少女は自分の体が変わっていくのに気がつき始めていた。液体を入れられ膨らまされた腹部は既に元に戻っている。
しかし、体内に入れられた液体の効果により細胞が変えられていくため体が熱っぽくなっているのだ。もうこれで終わりだろうと何となくホッとしている少女に更に追い打ちをかけるように腹部にメスが入れられる。アッという間に中身が見えるように皮膚を開かれ、自分の内臓が自分の体よりも上に持ち上げられるのを吐きそうになりながら見る。
ちょうどその時男は絶頂に達したらしく、少女の光景を見て急いで操作室へと戻った。犯された女は体中を血まみれにし、内臓が体から床に散らばっていた。あまりに激しかったのか女の額についている菱形のチップも粉々に砕けている。
「このままだと俺は復活できないじゃないか」
男は取り出された内臓を慎重に元に戻し、バァギナに挿入されているパイプに液体を送る。
「フッフッフ・・・・これで良い」
男は薄ら笑いを浮かべながら血を吐きその場に突っ伏してしまった。暫くすると少女の下腹部は異様に盛り上がりその体内にいると思われる物体は大きさと共に活発に動くようになる。そうしている間に気を失っているはずの少女からうめき声と共に膣口を破壊しながら赤ん坊が産まれた。
その赤ん坊は産み落とされるやたちまち成長し15,6歳ぐらいの少女の姿になって、自分を産み落とした少女を眺め、うすら笑みを浮かべてその場から掻き消すように消えていった。一週間後、少女は見たこともない部屋のベットで目が覚める。部屋全体が輝いていて、自分の寝ているベットはまるでカプセルのようなのだ。
「良く休めた?」
体が透けるほどの薄い真っ赤なスーツを身につけた金髪の若い女性が部屋に入ってきて少女に言う。女性の首にはうっすらと残っている首輪の痕と額には菱形の痣が薄く浮き上がっていた。
「えぇ。とりあえず・・・」
そう言うと自分が今まで見たことを信じてくれなくても良いからと言う気持ちで話した。
「そう・・・あなたは、残念な事にペットに改造されたの。私もそうだった。けど、額に打ち込まれていたチップがうまい具合に壊れて自分を取り戻すことが出来たの」
うつむき加減に少女はため息をつく。これから私どうなっちゃうのだろう?ペットにされちゃうのか?いろいろな不安が胸をよぎっていく。
「心配いらないわ。あなたの飼い主は私。いや、形だけね。そうしないとこの町では不審に思われちゃうから。どう?こうなった元凶をつぶしに行かない?私達人間をおかしくした元凶」
「へ?」
突拍子もない言動にじっと彼女を見る。
「あなたのこうなった事実も、私がペットにされた事実も黒い月現象なのよ」
その言葉に自分の腹を喰った男を思い出す。
「黒い月って・・・どうするんですか?」
金髪の女性は鼻で笑いながら少女に計画を話す。
「って言う事は・・・元々黒い月って言うのは人間が作り出した物?」
「そう。で、ずーと飛び回れないから月に一回この都市のどこかに着陸するの」熱っぽく話す女性に少女は言う。「いろいろ知っているんですね・・・どうしてペットにされちゃったんですか?」
「黒い月によって能力が進化した人達にとって私達は無力だったの。そこで、彼等の培った技術の一つ。治癒能力向上を奪おうとしたの。でも、そう易々と奪える物じゃなかった。そこで私達はペットになることを望み新人類達にその身を預けた・・・。ペットは簡単に死なないように治癒能力向上の改造を施されるの。私もそうだしあなたもそう」
そう言うと果物ナイフで自分の皮膚に切り込みを入れる。じわっとにじみ出る血は青かったがその傷口は物の数秒で塞がった。
「ね。こんな風な能力。でも、彼等は私達の思考なんかお見通しだった。能力を奪った上に反乱を起こすのを防ぐために私達の食と思考を奪った」
「思考って・・・菱形の機械でしょ?食って?」
「あなた今までどうやって食事をした?」
女性の問いかけに少女はジェスチャーで示す。
「そうそう。口で食べていたでしょ。今の私達にはそれが出来ないの」
そう言うと、女性は透明なボトルと棍棒を二回りぐらい細くしたチューブのついだ棒を持ってきた。そして、自分の前で実演してみせる。
「こ・・・んな感じで食事をとるの。普通の人間じゃないんだ・・・・」
壁に吊されたボトルはチューブを伝って体内に入っていく様を少女は呆然と見ていた。
「ふぅ・・・。ごめんね。あなたもこんな体にしちゃって・・・」
少女は深いため息を一回すると顔を上げてにこっと笑った。
「良いよ。命の恩人だし。本当は食べられたときに死んでいたはずなんだもん。あぁぁ、なんか吹っ切れたら体の力抜けてきたなぁ・・・ねぇもしかして空腹感もないの?」
その言葉に手を打って思い出したように言う。
「あらら、そうだった。胃を全部取られているから空腹感はないんだけど脱力感が起こるんだった。町に出ましょうか?」
頷く少女に女性はハッとして聞く。
「そう言えば・・・まだ名前聞いてなかったね」
「ん?わたし?私の名前はマヤ。あなたは?」
「私はジャンヌよ。よろしくね」
マヤはジャンヌのペットとして二人町へと出かけていった。
第三章「正義の下で」
ネオ東京から少し離れた所に大きなクレーターが地平線の彼方まで広がっている。
「つい数年前までは富士山が見えたのに・・・」
ジャンヌは過去を見るかのようにクレーターを見る。それよりも以前から生きていたジャンヌ達を新人類と称する黒い月に魅せられた人達は旧人類達を尽く迫害していった。旧人類達よりも数倍の耐久性と順応性は通常兵器ではかなわない。だからといって核兵器を使えばただでさえ旧人類と見かけが同じなのに共倒れになりかねない。そこで旧人類はその数を減らしながらも地下に潜んでいた。
「ここよ」
ジャンヌがマヤに案内した場所はクレーターを下った中程にある洞穴だ。促されるまま洞窟の漆黒の闇を進んでいくと薄暗いが光のある大きな広場に出た。
「うぎゃー、お、お願い・・・もう、酷いことしないで」
声のする方向を見るとマヤの視界に十字の木枠に両腕を開いた形で縛られ、足首も固定されている全身血まみれの若い女性が飛び込んできた。
「何をしているの!」
ジャンヌの一喝に女性の脇の男二人がこちらを向く。
「こいつは新人類だ。俺達の中に紛れ込んで全滅させようと企んでいたんだ」
「ち、違います!お願いです助けて!」
「うるさい奴だ。よし、お前が俺達と同じだと言うのならこれをやれば分かる」
一人の男が刃渡り15?ほどあるナイフを持ち出した。
「何をするの!やめなさい!」
ジャンヌがナイフを取り上げようとするともう一人の男に後ろから羽交い締めにされ倒される。
「ふん!何が、新人類に勝つためにペットになってでも能力を奪いましょうだ。俺の娘はぺっとになったは良いがそのまま操り人形にされてしまった。他の奴も同じだ!・・・待ってろ。お前達もすぐにこの女と同じようにしてやる」
ペットになるためには若い女性ではなければならなかった。それ以外だと即座に新人類達の食料にされてしまう。長い間の潜伏期間が外に出ない男達の思考を悪化させ、食料調達もままならないため、最初は新人類を数人で倒して食料にしていた。そのうち人間が人間を喰うことに何のためらいもなくなっていたのだ。
「へん!何が違いますだ。もう鞭の傷が消えているじゃねぇか、観念するんだな」
そう言うと男は十字の木枠に縛られた女性の下腹部にナイフを突き立てた。
「お願い!殺さないで!」
「そう言って俺達の妻や娘は助かったのかな?まるで犬猫のようにしたくせに!」
「う、ふぐぁ、お、お願い・・・」
ナイフの刃はすっぽりと体内に入り柄の部分が静かに流れ出る血によって赤く染まる。男は懇願する女性に恨みをぶつけるようにナイフの柄を軸に体内に入り込んでいる刃の部分を大きく回転させた。すると女性は叫び声を上げながら暴れだした。良く見ると女性の体は筋肉の部分が叫び声と共に太くなっているのが分かる。
男は女性の身体の変化に気が付き自分の腕ごとナイフを体内にめり込ませる。それと同時に女性は縄をちぎって男に襲いかかる。しかし、驚愕の女性の行動もそれまでだった。女性は低いうなり声を上げて男もろとも地面に倒れる。
「ふぃー。新人類とやらのパワーには参っちゃうな。おい、この女ばらして食料にしておけ」
血みどろのナイフを持った男の目線がジャンヌとマヤに向く。
「さて・・・次はお前達だ」
そう言うと二人は背後から数人の人に服を脱がされ両腕を後ろに組まされて紐で縛られた。
「どうする気?こんな事したって何にもならないわよ」
ジャンヌの言葉に男は言う。
「こんな事?お前達のおかげで何人否何百人の人が犠牲になったと思うんだ?もっと別の方法があったんじゃないか?見ろよ回りを!ここに残ったほとんどの奴はその日喰うにも困ってあんなに痩せて痩けてるんだ」
「それは黒い月が原因だってあれほど言ったじゃない!」
「黒い月がこの都市に降りてくるのを待ったさ・・・でも今までこなかった!どれだけ待ったと思う?その間にどれだけの人が死んだと思う?全部お前達の戯言だろ?」
そう言うと奥から1メートルぐらいの黒いボックスの上に人が一人座れる分の椅子が付いた物が運び出された。
「お前はこの椅子に座って貰う。そしてここにいる全員の食事になれ。もしそれを拒めばこいつを前の奴と同じように殺す」
そう言うとマヤを掴み上げてナイフをかざした。
「わ・・・わかったわ。その子を放してくれるのなら座るわ」
男は無造作にマヤを放り投げジャンヌを半ば強引に椅子に座らせる。椅子の中央にはブラックボックスから直径6センチほどの金属の棒が10センチほど突き出ている。
「その棒を自分の膣に入れろ」
ジャンヌは乾ききった自分のバァギナに半ば強引に中に棒を導く。
「う・・・くぅ」
椅子から突き出た棒を自分の体内に入れ、座るのを見て男はブラックボックスに繋がっているハンドルをジャンヌの正面に向ける。
「これを自分で回せ」
「何をする物なの?どうせ殺すんでしょ。教えなさいよ」
「おっと、抵抗するとお前の連れが死ぬことになるぜ」
そう言うと持っていたナイフをマヤに投げつけた。ナイフはマヤの股間をすり抜けて地面に突き刺さる。
「まっ、どうせ死ぬんだ。教えてやる。そのハンドルを回すとお前の中に入っている棒がどんどんボックスから伸びてお前を串刺しにする。更に、20センチ程体内に入ると棒自体が三倍ほど拡張して内部の棒がナイフに展開して内臓を切り出す仕組みだ」
「なっ・・・」
ジャンヌの表情が青ざめ凍り付く。
「お前達の意見でこれだけの被害が出たんだ罪を償うんだな」
「あんた、狂ってるよ」
マヤはよろけながらも立ち上がり男に言う。
「ジャンヌが間違っていたと言うのなら何故その時あんた達は止めなかったのさ。それを止められもせず全ての罪をジャンヌに着せようなんて馬鹿じゃないの?それで新人類に勝てるって言うの?」
マヤの言葉に男は怒りやっと立ち上がったマヤを蹴り倒し仰向けに倒れたところを馬乗りになって露わになっている腹部にナイフを突き立てる。
「やってみなさいよ。私を殺したからって何にも変わらないんだから。こんなんじゃ、近い内に貴方達も終わるんだから」
「やろー。言わせておけばいい気になりやがってお前から先にぶっ殺してやる」
ナイフの刃が数ミリマヤの腹部にはいると同時にジャンヌが叫ぶ。
「待って!その子は何も知らない!もし罪に問われるのなら私だけで充分のはずでしょ」
そう言うとゆっくりとハンドルを回した。
「う・・・ぐっ、はぁ・・・うっ」
男はジャンヌの行動に手を止めた。その一瞬を付いてマヤは男のナイフを自分の縛っている紐にすりつけ切った。
「この馬鹿男!」
マヤのパンチは男の顔面に命中し思いの外衝撃的だったのか男は鼻を押さえて倒れる。
「やっちまえ!」
回りの男どもが武器を持ってマヤにたかるが手から発せられる神通力が男どもを吹き飛ばす。
「ジャンヌ!」
マヤはジャンヌを椅子から引き剥がそうとするがいつの間にか足が固定されていて身動きがとれない。どうにかして椅子に固定されている足を解放しようと鉄製の固定具の解除する所を探すが見つからない。
「ふぁっ、ぐぁぁぁぁ、あっあっ、くぅー」
ジャンヌの体が上に一瞬飛び上がり悲痛なうめき声を上げる。ハンドルに乗っていた手は脂汗で滑り、ゆっくりとハンドルだけが動いている。
「ジャンヌ!どうしたの?ねぇ?」
マヤの問いかけにジャンヌは体中の筋肉を緊張させて棒の侵入に抵抗し、唇を血が出るほど噛みしめ目は強く瞑っていてマヤの声は聞こえていないようだ。
「もう、止めようがない。その機械は20センチ程体内に入ると自動モードに切り替わる。体内では既に棒が展開されて中の臓器が取り出されているはずよ」
奥で捕まっていたと思われる一人の少女が広場に出てきてマヤに言う。そして、マヤに殴り倒された男の懐に手を入れ鍵を見つけるとブラックボックス下部にある鍵穴に入れる。マヤはいったん椅子から離れ謎の少女の所へ行った。
程なくブラックボックスの正面蓋が開き二人で覗き込む。多くの歯車と箱の中央に直径30センチはあるパイプが一つとそれに繋がって大きめのトレイが上から下まで幾つもある。その一番下には今取り出されたばかりの臓器が転がり出てきた。
「どうすれば良い?」
マヤは素性も知らぬその少女に聞く。
「分からない・・・下手にパイプを切れば上の女性も危ないわね。そうだ。動いている歯車を止めよう」
少女は辺りに歯車を止める硬い物を探したが小さな石では砕け散りそうな大きな歯車もある。その様子にマヤは箱から出て自分が殴り倒した男を引きずって戻ってきた。
「何をするの?もしかして・・・」
「そう。この男に止めて貰いましょ」
そう言うとマヤは男の衣服の一部を歯車にかみ合わせたゆっくりと男の体が持ち上がり立ち上がった状態で男は意識を戻す。
「あっ、何を?なんじゃこりゃ!早く取ってくれ!」
自分の腕の部分の衣服に絡まっている歯車に徐々に引き寄せられているのを見て悲鳴を上げる。
「今度はあんたの番ね。止める方法なんか知らないんでしょ。あんた自身で止めなさいよ今まで正義の名の下に何人も殺してきたんでしょ。ジャンヌが罪に問われるんじゃなくてあんた自身が罪に問われるべき何じゃない?」
「な、何を根拠にそんなことを!早くこの服をナイフで切れ!」
「私の前でも同じ事言える?」
なぞの少女が男の眼前に姿を現す。
「お・・・お前は!何故だ!何故し・・うぎゃー」
男の声は自分の体が骨事潰される音と共に掻き消され歯車が止まり静寂になる。
マヤは歯車が止まると箱から飛び出してジャンヌの体を持ち上げようとすると首を横に振りマヤに言う。
「駄目。抜けないわ。・・・体内の棒が展開されて・・・」
そこまで言うとジャンヌは内部から体中をずたずたにされたせいで口も利けない状態になる。
「これ」
マヤのすぐ横に来た謎の少女が男が持っていたナイフを差し出す。
「これで腹部を切り裂いて棒から彼女を解放するの」
少女はマヤにそう言うとその場に倒れる。良く見るとあちこちにみみず腫れや血の流れ出た跡が付いている。マヤは少女からナイフを貰うとジャンヌに言った。
「これであなたの腹を切り裂いて棒と貴方を離れさせる。良い?」
その言葉にジャンヌは力無く頷く。マヤは血が滴るジャンヌの膣口から出来るだけ内部を傷つけないように切り裂いていった。腹腔内部に溜まっていた血がマヤの両手を青く染めると中に開いて止まっている金属の棒が見えた。胸元の少し手前で止まっているが腹部の臓器は切り出される途中だったのか管があちこち分散されている。やっとの思いでジャンヌを椅子から引き離し地面に横たわらせるがその後の処置はマヤには分からなかった。
しかし、ジャンヌもマヤもペット用に改造された身であるため普通なら死んでもおかしくない傷でも死にはしない。しかし、苦しみは普通の人と同じが故に普通の何倍も苦しまなければならないと言う事になる。マヤはナイフで切った皮膚が塞がりつつあるのを見てボックス内のトレイにあった臓器をジャンヌの体内に戻した。
その後、マヤは洞窟内に捕らわれていた新・旧人類の女性や男性を解放する。ジャンヌも回復に向かい。一安心の所にマヤの元にあの謎の少女が歩いてきた。
「私はマミヤ。あの男を倒してくれてありがとう。おかげで助かったわ」
「いいえ。でも何故こんなに捕まっていたの?」
「多くはここに住んでいた人達よ。私や他数人は違う所で住んでいて、意見に合わない人は新人類だって言って捕らわれ、食料にされるために殺されるのを待っていたの」
「って言う事はみんな改造されちゃった人?」
「そうね。だから女性ばっかりでしょ。男はこの時代に生きられないのよ」
「そう言えばさっきまでのびていた男達は?」
「どこかに行ったわ。又どっかで人さらいでもするんじゃないかしら」
少女は無表情のままそこまで話すと洞窟を出ようとした。
「ちょ、ちょっと待って!どこ行くの?あなた一人じゃ危険よ」
マヤの声にマミヤは小声で(黒い月が来る)そう言ってその場を後にした。
「黒い月って・・・」
意識が戻ったジャンヌがマヤの手を借りて起きあがると
「あのこ、黒い月の場所を知ってるみたいだったね」
「うん・・・」
「ついて行ってみるか?」
ジャンヌの言葉にマヤが頷く。
ジャンヌとマヤは洞窟を抜けマミヤの後を追いかけていった。洞窟のずっと奥にバラバラにされた男達のことを気づくこともないまま・・・
最終章「カニバリズム」
ネオ東京からさほど遠くない海辺に廃墟と化した大型研究所だった建物がある。マミヤとジャンヌ、マヤはその中へと入っていく。今のような状態になる前、この研究所では自然保護団体の拠点として多くの自然保護に関する研究資料を吐き出していた。
しかし、人口が増大する一方で食糧問題は年々深刻になり最後には自然保護と人間の命とどっちが大事なのかを議論するまでに至った。ちょうどその頃、人の遺伝子も解読が終了し、あらゆる病気に対して遺伝子的に治してしまうと言う画期的な発明がより確立した物として登場した。自然保護と食糧問題のさなかで誰かが言った。
「遺伝子的に人と同じでも形さえ違うなら食料にしても良いのか?」
倫理面に発展して問題が複雑化した中、ある研究員が遺伝子変換銃を作り軍隊に送る。命中しても命に別状はないが当たれば遺伝子情報が書き換えられ姿を変える。どんな美人な女性でもどんな屈強な男性でも人以外の何かの動物に変わってしまう。一般的には豚に変えられるようになっていた。 記憶の断片がジャンヌの脳裏をよぎる。
「ここは・・・私がいた場所?」
建物の中へ入り瓦礫をかき分けて中庭に出ると黒いドーム場の球体が着地していた。紛れもない黒い月。ジャンヌはとっさに下に転がっていた折れ曲がって赤く錆びている鉄パイプを手にとって身構えた。マミヤは一人球体の前に立つ。
「ただ今戻りました」
球体が微かに振動し表面に人の形をした者が現れる。
「ダークムーンよ。良く戻った。神通力を手に入れたか?」
「はい、首尾良くあの女から手に入れました」
マミヤの指さす方向にはマヤが居る。
「な、何を言っているの?ダークムーンって・・・もしかして?」
「そうだ。私がお前から産まれた新しいダークムーン。もう前のように人を食わなくても良くなった。お前のお陰だ感謝する」
「な、何を言っているの?いったい何のために?」
よほどのことに動揺を隠せないマヤはマミヤを見る。
「ふっふっふ。別に狼狽することはない。お前が産まれるずっと前にこの女がやったことだ」
そう言った指先はジャンヌを指す。
「私は知らない!何も知らない!」
「自らの体をペットにして記憶を消したようだがそんな物は何時か封印が解かれる。お前自身この建物に入って何も感じなかったか?」
ジャンヌはその言葉を聞かないように耳を手で押さえ首を左右に振っている。
「その女は結果的に私を進化させた。そう責めるなダーク。さぁ、最後の仕上げをしよう」
「はい・・・」
マミヤと自分を偽ったダークムーンはすぐさま裸になり両手で自分の体を確かめるように触る。
「名残惜しいか?お前と私が融合すれば絶対的な力が手にはいる。さぁ・・・始めるんだ」
球体の表面から男が消え銀色の棒が現れる。先端は丸くなっているが指二本ほどの太さで下に行く程なだらかに太くなっている。その長さは一メートル。体内に入れるとすると喉元で止まる程度の長さ。ダークムーンはおもむろにその棒の先端を自分の口の中に入れ十分に濡らす。
「何をするの?それが黒い月なんでしょ?どうするの?こっちに来て」
マヤの言う言葉にダークムーンは少し微笑んだ。
「私が融合すれば貴方もきっと分かる・・・」
そう言うとダークムーンは自分の陰部に棒を誘い腰を下ろした。
「うぅっ・・・・・」
棒は十センチほど体内に入ったところでダークムーンは動きを止める。それとほぼ同時に球体からアームが出てきてダークムーンを固定すると球体が動き出しダークムーンを上にして止まる。一度止まった棒の侵入がゆっくりダークムーンの陰部を押し広げながら中へ飲み込まれていく。
「ねぇ早く止めようよ。このままだとマミヤが!」
マヤはジャンヌの腕を取り一緒にマミヤの所に行こうとするが錯乱しているジャンヌはマヤの声が聞こえない。
「頭の中に・・・誰かが居る」
ジャンヌは消した記憶が戻りつつあるのを必死で抵抗しているのだ。
「ふぁあぁぁぁ」
ひときわ大きな声がするのが聞こえるとマヤはマミヤの方向を見る。陰部を破壊して深々と刺さった棒は鳩尾まで達しているようだ。棒の形が見えるほど腹部は形を変えていた。マヤは球体の周りを探し始める。これが人工的に出来た物ならばどこかに操作する場所があるはず。球体を隈無く探すと薄い画面がはめ込まれた操作盤とその横に上から流れ出る血液を溜めるタンクが見つかった。
勢いよく流れ出る血液の出所はマミヤの体からだ。マヤは再度上を見た。マミヤは既に肉の塊と化していた。喉まで入った銀色の棒が命の全てを吸うように真っ赤に染まり体内に入っている部分はかき混ぜるような形に分離して、体内をミキサーにかけている。
「ゴメン。私、何も出来ない」
息絶えたマミヤの亡骸から目線を外しディスプレイを見るとマミヤの解析結果が映像として映し出される。
「これ・・・私?」
逆再生のようになっている画像はマミヤの生まれてくる瞬間を映し出す。そこには母胎としてマヤが横たわっている。更に時が遡りマヤが知るダークムーンが自分を喰らうシーンになる。さすがにマヤは表情を歪ませ腹部を押さえる。更に画像は遡りダークムーンは見覚えのある研究所のカプセルの中に消える。
やや暫くして白衣を着たジャンヌが現れる。その横には自分と年齢が変わらない母。母は全裸で首に紐を掛けられている。その紐をジャンヌが握っている。
「な・・・に?これって・・・いったい?」
マミヤの全てを吸収した黒い球体はマヤに話しかける。
「知りたいか?ならば体験させてあげよう」
その言葉と同時に球体はマヤを拘束する。
「な、何をするの?」
「そう暴れるな。すぐ終わる」
マヤの陰部に先程の銀色の棒が深々と刺さりアームが暴れるマヤを固定する。
「い、いやー。は、はう!」
銀色の棒からは球体の持つ記憶と接続するために多くの短針がマヤの体内に打ち込まれる。その途端マヤの体に電気が走り意識を失った。
意識を取り戻したマヤは手術台の上に固定されていた。そのすぐ横で白衣を着たジャンヌが立っている。
「これで終わる。そもそも、私達科学者がどうこうできる問題じゃないのよ。自然保護も食糧問題も人間が食物連鎖から出てしまった事に原因があるのよ」
そう言うとジャンヌは透明な液を入れた大型タンクを側に置き幾つかのチューブを繋げる。マヤは意識がある物のしゃべることも動くことも出来ない。ただ意識があるだけの存在。
「貴方は間違っている。例え私の力を手に入れようとも、今の問題は解決しないわ」
自分の心と裏腹に体が話す。そう、マヤは単に意識があるだけで通り過ぎた過去を見ているに過ぎない。話したのはマヤの母だった。
「間違っている?人がこの地上に産まれて今までいろいろな争いがあったわ。けど、どれもこれも人間のエゴじゃない。その犠牲を常に受けてきたのは人間を産んだ自然。知恵を付け、武力を持った人間はあらゆる生命体の頂点に立ち今度はその生命体を利用し食らいつくそうとしている。増えすぎた人間を自然を壊さずに減らすのはこれしかないの」
「純粋なカニバリズムを作るのね」
「人が人を食えばいいのよ。どんな偽善を並べたってこの世は所詮弱肉強食。弱い物は糧になれば良い」
「やっぱり貴方は間違っている!」
「さぁ、お喋りはお終い。始めるわよ」
「私は死ぬの?」
「簡単に死ねない体を作るのよ。生き残った人達のためにね」
そう言うと麻酔薬を注入されマヤの母の意識はなくなる。マヤはその感覚全てをその意識に叩きつけられていた。程なくマヤの背中に二つの管が差し込まれ一つは鮮血が流れ出し一つは透明な液体が体の中へ入れられる。ものの数分で流れ出した血液は赤から透明に変わり管が外される。
「これで貴方も新人類ね」
ジャンヌはそう言うとマヤの母の腹部を鳩尾から陰部にかけて一気に切り裂いた。通常なら赤い血が出るのだが透明な液が流れ出る。血液の変化だけで中の臓器には何の変化もない。ジャンヌは小腸をより分け女性の器官全てを取り出した。続いて大腸小腸、目に見える物全てを取りだし胴体を全くの空洞にした。
空になった腹部を縫い合わせ陰部に透明な液体の入っているタンクから繋がる太い管を陰部に深々と差し込み液体を流し込む。スリムになったマヤの母は腹部を液体によって膨らまされ風船のようになる。液体を止められ暫くすると風船腹だった腹部が徐々に元に戻り始め手術前の体型に戻る。意識のあるマヤは何となく感じていた。入れられた液体が臓器となって復活していることを。
「成功ね。これで・・・お終い」
ジャンヌが汗を拭い白衣を取ると同時に爆発音が聞こえ建物を揺るがす。程なく男達の声。その中にマヤには聞き覚えのある声がある。父だ。ジャンヌは母を手術台から降ろし、操作盤の操作をして裸になった。
「これで誰がやったのかも分からなくなる」
ジャンヌは手術台に横たわりベットの横についているスイッチを押した。ベット周辺にあらかじめ接続されていた機械類がジャンヌの周りに集結する。大小の二つの管がジャンヌの膣と肛門に挿入され透明な液体が送られる。
「う・・・う・・・」
拘束具を付けていないジャンヌは自らの意志で抵抗する体を押さえつける。大きく膨らんだ腹部への透明な液体の注入が終わる頃には抵抗も意識もなくなっていた。そして、最後にジャンヌの額に機械が埋め込まれた。と、同時に男達がなだれ込んでくる。銃を片手に所かまわず撃ちまくり、男達はマヤの母を抱いて帰っていった。マヤの意識は母から離れ幽霊のように穴だらけにされたジャンヌを見ていた。
「ガーン!ガガーン!!」
体に響く音と共に画像は消え、マヤは現実に引き戻される。自分の前には仁王立ちのジャンヌが鉄パイプで自分もろとも球体を突き刺していた。
「ジャ・・・ンヌ!?」
球体から挿入されている棒と突き刺された鉄パイプが体内で擦る度にマヤは苦痛の声をあげる。
「思い出したわ。貴方は知ってしまった。私の過去を。黒い月もろとも消滅しなさい!」
ジャンヌはマヤの体を蹴り鉄パイプを引き抜いて更にマヤと球体を突き刺す。
「フッフッフ。もう止められない。お前の望んだ通り人間は独自で食物連鎖を作り上げた。私を壊そうとも何も変わらない。あとはお前だけ・・・ガーガー・・・」
球体はそう言うと自ら蛇のような電気に周囲を囲まれマヤを巻き込んで爆発した。
爆風に巻き込まれたジャンヌは暫く経ってから気がつく。
「オラ!歩け!」
二人の男に担がれ民衆の前に連れられていく。小高くなった台にはマヤが白いマントを羽織って立っている。
「ずいぶん眠ったわね」
張り付けられたジャンヌにマヤは言う。
「どういうつもり?」
マヤはその問いかけに自らのマントを地面に脱ぎ捨てる。裸体の中央に臓器が蠢くのが見える。
「貴方のお陰でずいぶん知らされたわ。自然と人のバランスを取るために黒い月を作って人の中に眠る残虐性や凶暴性を目覚めさせ、人が人を食うことで人の人口を減らし、自然の衰退を止めた。それはそれで良かったかも知れない。けど見なさい!この体を!貴方のせいで私は・・・」
息が荒くなりマヤは腹部を押さえて地面に倒れ込む。そこへ若い男がマヤを抱きかかえジャンヌに言う。
「お前のせいでこの娘はなぁ、飢餓に苦しんだ俺達を自らの体を喰わして助けたんだ。本当はそんなことをしなくても良かったんだ。でもお前がこんな物を作ったお陰で・・・」
又別な男が言う。
「お前の作った黒い月のお陰で戦争が起こって食料を産む自然を壊し、俺達の正常な精神さえも壊した!」
怒号にも似た男の叫び声に周りにいる民衆が一斉にジャンヌに罵声を浴びせる。
「この者は自らを私と同じ体に改造しています。どう処分しますか?」
男に支えられながらマヤはゆっくりと立ち上がりながら言う。薄い皮一枚で内臓が飛び出てくるのを押さえているために片手で腹部を押さえているのだが、今にも地面に向かって流れ込みそうで危うい感じがする。暫く民衆の中であれこれと話す声が聞こえていたが考えがまとまったのか一人の女が台の上に立ち言う。
「我々の当面の食料になって貰いましょう。マヤさんは私達のために自らの体を食料にしてくれました。その役目をこの女にしましょう。そして、残虐に何度も殺しましょう。どうせ死なないんです。みなさんのストレス発散のペットにしましょう!」
台をぐるりと囲む民衆の歓声がジャンヌの体に刺さる。
「じゃあね、ジャンヌ。私は休養するわ。せいぜいみなさんにご奉仕してね」
マヤは男に付き添われながら民衆の中へと消えていった。
マヤが去ってから一時間もすると目の前にジャンヌの肉を焼くための火が沢山おこされた。ジャンヌの横には人が百人以上はいるほどのタンクが用意されている。それがなんなのかジャンヌは知っていた。人を溶かした液体。タンクの中には混乱の際になくなった多くの人の亡骸が液体となってタンクの中に入っている。更にそのタンクはジャンヌの背後に数え切れないほど積んである。
張り付けられたジャンヌの体を男達が食料にするための準備をするためにタンクから伸びる人の腕ほどある管を肛門にねじり込む。
「うぅ・・・あう!かぁぁぁぁ」
ジャンヌは体をねじりながら抵抗するが体を固定されていて男二人の力で入れられているのですんなりと入ってしまう。
「さて、観念しろよ!」
解体役の男がジャンヌの腹にナイフを向ける。
「いや!辞めて!お願い!」
「マヤの話だと死なないって言っていたぞ!それにマヤは自分で自分の腹を割いて俺達に命をくれたんだ。本来ならお前がそうするべきだろ?」
そう言うと男はケーキでも切るようにすーっとナイフを鳩尾から陰部まで立てに腹を割いた。透明な液体が切り傷からじわりと流れ、腸が地面に向かって落ちる。
「ぐはぁーうえぇー」
苦しそうに悶えるジャンヌを尻目に男は流れ落ちた腸をナイフで細かく切りジャンヌの体内から取り出す。続いて膀胱、肝臓、胃、ジャンヌの体内からあらゆる臓器が無くなるまで男は臓器を取り出した。
「もう取れる物が無いや、さて蓋を閉めるか」
男はそう言うと意識を失ったジャンヌの腹を縫い合わせタンクの液体を体内に送り込む。徐々に腹は膨らんでいき、縫い目から透明な液体が流れるのを確認すると男は液体を送り込むのを辞めた。
「これでお終いっと。俺も飯にするか」
風船腹になったジャンヌを置いて男は台を降りて肉に群がる民衆の中へと入って行った。
「良いのか?これを付けたら今までの記憶も何もなくなってただのペットになるぞ」
男の手には中央に綺麗な飾りの付いた髪飾りがある。マヤは首を縦に振り
「良いの。ダークムーン。貴方も私もジャンヌに作られた存在。私の母も・・・。もうこの体で生きていくのは耐えられない。けど、簡単には死ねないし・・・なら、今までの記憶を消してペットになる方が良いわ」
「しかし、偶然だよな。ジャンヌが黒い月を壊したお陰で吸収された俺が復活するなんて」
「こんな私の体から産まれるからよ。貴方にとってはそれで良いのでしょうけど」
遠い目をするマヤの髪をダークムーンは優しく撫でる。
「さて、最後に聞く。本当に良いんだな?」
「母のように一生腹を切って結界になるのは嫌。この体のままずーっと生きていくのも嫌。だから・・・」
「分かった。じゃぁ始めよう」
マヤとダークムーンは全裸になり、髪飾りを付ける。額に飾りを押しつけるとマヤの体は金縛りを受けたように動かなくなる。
「お・・ねがい・・・早く!」
マヤはダークムーンに催促する。完全な記憶の消去はダークムーンの特殊能力によって行われるのだ。ダークムーンはマヤの秘部を丹念に触り滑り具合が良くなった所で自分の物を入れる。
「はぁ・・・うぅ・・・」
色っぽく喘ぐマヤに合わせるようにダークムーンは腰を動かし、徐々に自分の物を太く長くしていく。
「うぅ・・・ぐぁぁぁぁぁ」
反り返る喘ぎ声と苦痛の声が聞こえる頃にはダークの物はマヤの体内奥深くに挿入され、膣壁を破って腹部中央まで侵入していた。
「もう・・・駄目・・・早く行かせて!」
マヤの催促に更にダークムーンの腰は早くなり上下に汗をほとばしりながら揺れる乳房をまさぐる指が自分の物の先端があるところに置く。
「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーー」
マヤはひときわ大きく叫び声をあげ全身を電気でもはしったように痙攣させる。ダークムーンの手はその時マヤの心臓を握っていた。
「じゃあ行くよ!さよなら・・・マヤ」
マヤの心臓を思いっきり引っ張り上げて体外に出す。
「あ・・・り・・・が・・とう」
マヤは取り出された心臓が止まると同時に目を瞑った。ダークは暫くマヤをそのまま抱いた後に冷たくなっていくマヤの体の中に取り出した心臓を入れて切り裂いた胸を簡単に縫合する。そして、太い管をマヤの肛門深くに挿入して透明な液体を入れた。
「さようなら、マヤ。そして初めまして、マヤ・・・」
幾日か経った後、ダークムーンは首輪を付けた若い女を連れて食料にされ続けるジャンヌの所へ行った。
「気分はどうだ?」
ダークムーンの問いかけにジャンヌは唾をかける。
「早く殺しなさいよ!いつまでこんなことさせる気?」
「いつまでもさ。お前という存在がある限り、人が人を刺したくなったらお前を刺せばいいし、食いたくなったら食えばいい。お前はそうなるために自分の体をそう言う風にしたんだろ?お陰で俺はこの世の人間の中で一番強い力と従順な女を手に入れたがな」
ジャンヌはダークムーンの横に立つマヤに気づく。
「どうやってペットにしたの?私も記憶を消して!お願い!もうこんなのは嫌!」
「無理だな。俺にしかできないし、もっとも憎むべきお前に安易な死を与えられない。お前は生きながら罪を償えば良い。俺もマヤもお前に運命を弄ばれたんだ。これから先はそれぞれの望んだ道を行く」
それだけ言うとダークムーンはペットとなったマヤを連れて民衆の中へと消えていった。
「さて、今日は串焼きにでもするか?棒持ってこい!」
料理役の男がジャンヌを見ながらニヤニヤしている。程なく棒を受け取ると男は張り付けられているジャンヌを仰向けに倒し、両足を大きく広げて陰部に油を丹念に塗る。
「い・・や・・・うぅ・・・あっはぁぁぁ」
膣の中まで丹念に塗っている間に頂点に達したジャンヌの表情を見て男は言う。
「堪能したか?これからが本番だ!」
棒を片手にジャンヌの下腹部を押さえてゆっくりと挿入する。
「あ・・・あぁぁぁ、ぐ・・・ぐっ・・・」
子宮の奥深くまで棒が到達するのを確認すると棒を持ち直して回転させながら右脇腹に進行方向を変えて更に挿入する。棒を押し返そうとする力が少なくなってすっと入る感覚を感じるとすぐさま棒を真っ直ぐに戻す。ジャンヌは自分の腹の中をかき混ぜられているようで何度も吐きながら呻き声を上げる。
「ぐぉぉ・・・おえぇ・・・うぅぅ・・・」
毎日毎日喰われるためにあらゆる方法で料理されるジャンヌは棒が横隔膜を破る頃にはすっかり大人しくなって苦痛の中で物思いに耽っていた。私は何時死ぬんだろう?このまま地獄のような責めを味わうのだろうか?いっそあの時こんな体に改造しないで死んでいれば良かった・・・・。
「御主人様。お腹空きました?」
マヤのあどけない質問にダークムーンは微笑むだけ。マヤは言う。
「御主人様!もう歩き疲れました。今日はここで休みましょう?」
「そうだな・・・」
ダークムーンは側にある岩に腰を下ろしマヤを抱きしめた。
朱梅様 |
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