「・・はぁ、もうこんな時間か。」
この男の名は鳴海 拓也(なるみ たくや)21歳 職業は大学生をやっている。
特に変わった性癖は無く、少し世話焼きの優しい一般人といった感じだ。
そして今日も大学の課題で徹夜していて、時計は深夜1時を回っていた。
「ちょっとコンビニで夜食でも買いに行くかな。」
季節は夏の初め6月後半、拓也はそのままの姿で財布を握り締め外へ趣いた。
「さてと、何食おうかなぁ」
アパートを出てから数分後、拓也は急に尿意を催した!
「っと、やばwそういや、とっさに外でたからトイレ行くの忘れたな・・・ったく、面倒だけど公園のトイレ借りっか。」
そう思い立ち、近くの公園にある公衆トイレに向かった。
その時、遠目ではあるが女子トイレに向かって入っていく人影が見えた。
「ん?あれ?こんな時間に利用する人いるのかなぁ まぁいいか。」
と、あまり気にせずに拓也は男子トイレに駆け込んだ。
「・・・ふぅ。」
静寂の中、拓也は用を足した。そして、ふと考えた。
そう、あの人影だ。
普通に考えて、こんな時間に公衆トイレにいるなんて見るからにおかしい。俺もおかしい事になるが、深夜に女性一人で出歩くなんて危険すぎる。
「うむ・・・ちょっと話しかけてみるかな。」
拓也は公衆トイレの前で待つことにした。
「うーん、でも突然話しかけたら不審者扱いされるのかなぁ・・それは困る・・」
等と自分に自問自答していると隣の女子トイレから何かがぶつかるような物音がした。
「ん!?なんだ?」
公衆トイレの壁が薄いのか、隣から微かな声が漏れる。
「・・クッ・・・イ・・・・・・・シ・・」
だが、ハッキリ聞き取ることができなかった。
「何してるんだろ?あれ、もしかして今話しかけるチャンスなのか?」
何を思ったか、そんな事を考えた。そして遂に。
「(よしっ)・・・あ、あ、ああの!!」
心の中で決心した筈なのに声が裏返ってしまった。
「・・・・・・・ンッ・・・」
しかし、声に反応を見せるかのようにうめき声のようなものが止まり、また何かが当たるような音がし再度静寂が訪れた。
「・・・あ、あの、ごめん いきなり話しかけて。自分が入る前に見かけたから何かおかしいと思って話しかけたんだけど・・・。迷惑ならごめん。」
「・・・・・・・・・」
しかし返事は帰ってこない。
その数秒後扉が開く音がし、女子トイレを出て行く足音が聞こえた。
「・・だよな、なんか悪いことしてしまったかな。」
と想い、悪気を感じながらトイレを後にし、公園のベンチに腰掛けた
「・・・あの人、何してたんだろう。もっと話したかったんだけどな・・」
トイレから出たあと、周りを見渡してみてもどこにも人影など見当たらず、そのままトボトボとベンチに腰掛け、色々な思考を巡らせていた。
「うーん、なんか不完全燃焼だけど、まぁいいか・・気を取り直して、飯っ・」
ザザッ
「!?」
拓也が言葉を言いかけた瞬間、背後から足音と共に人の気配が!
ベンチの後ろは作を隔て雑木林となっているはず。だとしたら完全に待ち伏せをされていたとしか思えなかった。
「・・っ、だ、誰だっ?」
とりあえず拓也はソイツに呼びかけた。
ソイツが何者かかは見当はついた。だが、もしもの時を考え警戒した口調で話す。
「・・・・・・・・・・・あ、あのっ・・・・」
数秒の静寂と共に聞こえるは、初々しい程の少女の声
とりあえず拓也は安心し、次の言葉を待った。
「・・・あの・・ぇっと・・・」
拓也はまだ後ろを向いたままじっと待っている
「・・・うぅ、・・・あの、さっきの、あの、」
少女は一つずつ言葉を繋げるように話を始めた。第一声を発したことにより、緊張感が少し解けたのだろう。
「・・あの、トイレで、・・・声を・・・」
「そ、そうだけど・・・」
「・・んっ・・そ、そう・・・・・」
初めて会話という会話ができた嬉しさもあり、勢いでなぜこんな場所にこの時間にいるのかを聞いてみることにした。
「あ、あのさ、いくつか聞いていいかな?」
「・・あ、は、はい。・・答えられるなら・・・」
「えーっと、じゃあ、なんでこんな時間にこんなところいるの?」
その質問をした途端、また静寂が訪れた。
それを察した拓也は
「あっ、ごめん。言えない理由ならいいんだ。女性がこんな時間に一人歩きっておかしいって思ったからさ。君も、俺みたいにコンビニに行く途中だったのかもしれないしな。」
「・・・・・ごめんなさい。」
少女はか弱く謝った。そしてその少女が俺の目の前に移動してきた。
「・・・っ!?」
いきなりの出来事に、拓也は動くことも言葉を発することも出来なかった。
「・・ずっと、後ろ向いたまま話すのも、なんか変だから、ねっ」
少女は緊張した面持ちで無邪気な笑顔を覗かせながらそう言いかけてきた。
「・・・(か、かわいい)・・」
少女のあまりの可愛らしい風貌に拓也は驚きを隠せなかった。
身長は150cmくらい細身で月明かりに照らされた肌は色白で光沢感を感じさせる程スベスベしていた。服装は鎖骨を強調させたキャミソール姿。
身長が低いのも相まってか、小学生とも思えてしまう程の幼さだった。
別にロリコンでは無かった拓也でも、気持ちを揺さぶってしまう程だった。
「あ、あの?」
少女が心配そうに顔を覗く。
その時、少女の首に何かで絞めたような痣が一瞬見えた。
少女はその目線に気づいたのか、とっさに距離をとった。
「ねぇ?それって・・・」
「ごめん、なさい。私・・・おかしい人なんです・・・」
「・・おかしい?何が?」
「・・んと、えと・・私ね・・首絞めが、好きなんです。」
「首絞め、が好き?」
「は、はい。凄く、好きなんです。いつも誰かに絞められてる妄想しながら、やってるんです。」
拓也は多少驚きを見せたが、少女の可愛さ、更に細い首筋に手をかける想像をついしてしまい、それにより、自分が興奮してしまう感覚を覚えてしまった。
そして・・・
「じゃあ、さ・・・今絞めていい?」
と無意識に言葉が出てしまった
「えっ!?」
少女はいきなりの言葉に少し困惑したが、何かを決意したかのように
「・・う、うん。・・いいよ。首、絞めて?」
「い、いいの?」
「うん・・・」
「じゃあ、絞める、よ。」
拓也は恐る恐る少女の首に手をかける。
「・・・んっ・・・くっ・・」
首に手をかけた途端、少女が反応を見せた。
少女の首はとても柔らかく、そして暖かく、この手を永遠と離したくないような感覚に襲われていた。そして両手で絞め上げる。
「・・っ・・・んっ・・・」
視線を首から顔にうつして見ると、少女はとても可愛らしい表情をしていた。
目はどこか遠くを見るような虚ろな目、口元はわずかに開けて可愛らしい声を漏らしていた。
拓也は少し力を込めてみることにした。
グググ・・・
「・・・グッ・・・ンック・・・・」
少女の表情が僅かに変化を見せた。
さっきよりは少しだけ苦しそうな表情を浮かべ、首を絞めている拓也の腕に手をかけた。
その表情に拓也は見とれてしまい、その後数分間絞め続けていた。
「・・・・・・・」
少女は最初すら反応を見せたが、その後は絞められるがままになっていた。
拓也は欲望の赴くまま、このありえない現実に体が停止しているかのように。
グググ・・・
尚も絞め続ける拓也。このまま絞め殺してしまう程に。
「・・・ッガ・・・・・・・」
少女が溜めていた息を漏らすような声を出すのと同時に、体から力が抜け、腕を掴んでいた手を力なく離した。
「・・・っ!?」
拓也はようやく自分がどのような状況かわかった。
すぐさま首から手を離し、ベンチに横たわらせた。
「・・ごっ、ごめん・・」
とっさに謝ったが、少女は必死に息を整えていた。
「・・・大丈夫?」
いいと言われてやってしまったという言い訳を考えていたが、流石にやりすぎた感を感じていた。
「・・んっ・・だ、大丈夫、です。」
息が整ったのか、少女が話し始めた。
「えっと、自己紹介がまだだったですよね。・・わ、私、美希って言います14歳です・・」
話によると、この少女の名は 朝倉 美希 14歳 学校は行ってるが不登校気味。
家庭環境が複雑で、今はとある施設で集団生活をしているらしい。
拓也の方も基本的な自己紹介を終えた。
「そっか。けっこう大変なんだな。でも、なんでこんなところにいるんだ?」
「・・・えと、私、・・あの環境が嫌で、抜け出して来たんです。」
「(家出か?)・・ほう。」
しかし、美希は思っても見ないことを発言した。
「わ、私、抜け出して、行くとこないから、ここで・・・」
美希は多少決意した表情を見せ・・
「・・・死のうとしてました。」
「・・え?」
「でもでも、拓也さんに声かけてもらって、ビックリしちゃって、出来なかったんです。」
「そ、そう・・・」
突然の発言に困惑を隠せなかったが、この先の疑問点に気づいた。
「・・えっと、さっき行くとこないって言ってたけど・・・」
「は、はい・・・」
「俺と一緒でよければ・・・一緒に住まないか?」
自分で何を言ったかは覚えていない。しかしこんな可愛い子と一緒に住めたらなんと幸せだろうか、更にまたあの首を絞めることが出来るのかと思うと、この発言をしない訳にはいかなかった。
美希は少し困った表情を見せたが、途端に笑顔になり
「は、はい! 私で良かったら、お、お願いします!」
この返答に対し、拓也も笑顔になり、飯のことなど忘れ、手を引きアパートに戻った。
「ちょっと散らかってるけど、ここが俺の家。入ってきて。」
「は、はい・・お邪魔します・・・」
「今片付けるから適当に座っててくれ。」
「す、すみません。有難うございます。」
「あ、今風呂沸かすから部屋片付くまで入ってきなよ。色々大変だったみたいだし、ゆっくり休んでおきな。そういや、着替えとかある?」
拓也は美希が持ち歩いていたそれなりの大きさのカバンに目をやる。
「あ、はい。とりあえずは何着か持ってきました。」
「そか。なら安心だ。」
そして美希は風呂場に向かった。
部屋には拓也一人。
「ふぅ・・・なんやかんやでこんな事になってしまったが・・・」
ここで拓也は掃除をしながら冷静に考えた。
色々と問題が山積み過ぎて、現実逃避したくなる心を抑えながら、自分なりに現状を理解しようとした。
「14歳の少女・・・とある施設を抜け出して・・・ここにたどり着いたって言ってたな・・・捜索とかされるよな。絶対。・・もし見つかったら、俺どうなるのか・・保護したって言い分、通るかな・・・うーん・・」
拓也はこの先のことを色々な角度で考察した。
「今の時点で警察に通報したほうがいいのか・・・?・・後々から見つかってしまったら、誘拐扱いされそうだし・・」
しかし、重大なことに気づく。あの首の絞め痕だ。
最悪、殺人未遂容疑で逮捕される恐れがある。14歳の少女が弁解したところで、警察は聞く耳を立てないであろうということは誰でも予想はつく。
「・・・なら・・すぐ逮捕されるなら・・・このままずっと・・・」
結局は現実逃避に向かってしまった。
やはり、理性というものは制御しきれないんだと、自分で納得してしまっている節があった。
「・・・うむ、考えても打開案が浮かばない・・とりあえず美希にも意見聞いてみるかな。」
と、掃除もひと段落し、ベットに腰掛けた。
それからまもなく、美希が風呂から出てきた。
「お先に、ありがとうございました」
バスタオル1枚を身に纏った美希が笑顔で言った
「・・・・お、おう・・・(可愛すぎる・・)」
予想だにしていない姿に拓也は動揺したが、至って平静を装い言葉を返した。
本心、このまま襲ってしまいたいという感情さえ芽生えていたが、必死にこらえていた。
「ご、ごめんなさい・・あの、ドライヤーを持っていくの忘れてしまって・・・」
と言い、そそくさと目的のものを手にし、この場を後にした。
その後拓也は・・・
「・・・はぁ・・今日の今日で襲うのは流石にまずいだろう・・いや、何を考えているんだ俺は・・・なんかもう訳がわからねぇよ・・・」
と、自分と戦っていた。
そして数分後、再び髪を乾かし、着替えた美希が戻ってきた。
「さ、さっきはすみません・・・」
「いや、大丈夫、だよ。俺こそ、なんかごめんな。」
すると突然、美希が近くに寄ってきた。
「えっ!?な、なに?」
そして拓也の手を掴み、自分の首元へと誘導し・・・
「また・・・私の首、絞めてください。」
と言い、首を突き出してきた。
「・・・えっ、あのっ・・し、絞めていいって・・・」
と、拓也がしどろもどろしていると
「拓也さんのあの時の顔・・・凄く良かったです。興奮、しました。」
「えっ・・あの時って・・」
「・・・公園で、絞めてくれた時です・・・。あの時、私感じました。拓也さんに絞殺されたら、どれだけ幸せなんだろうって。だから・・今、私の首をまた、絞めて欲しいんです。ずっと・・・」
「そ、そうか・・・実は言うと、俺も興奮したんだよね・・・じゃ、じゃあ・・美希が良ければ・・絞めるね・・・」
と少し動揺しながら言い、優しく美希の首に手をかけ、ゆっくり絞め始めた。
美希は風呂上りだからなのか、暖かく、公園で絞めた時より手にフィットし、自然と手のひらに力が込められる感じがした。
グググ・・・
「・・・んっ・・・いい、です・・・もっと・・」
その声に応えるかのように、更に首を絞め上げる。
「美希・・・可愛いよ。」
拓也は、今日の出来事を思い返し、今ある現実を受け入れることにした。
結果的には、自分の身は危ない。ならば、今だけは欲望のままに、美希を自分のモノにすると。
拓也は首を掴んだまま美希をベットに押し倒した。
この時、拓也は自分が自分で無くなる感覚を感じた気がした。
「美希。さっき、絞殺されてもいいって言ったよね?」
「・・・は、・・はい・・」
「それは・・殺してもいい・・って事、だよね?」
「・・そ、そう・・・です・・」
「そか。わかった。じゃあ、今日から・・・美希は俺のモノだ。・・いいね?」
決意を決めてしまった拓也は、別人に生まれ変わってしまったかのようになってしまった。
「・・・んっく・・・はい・・いい、です。」
「ふふ、いい子だ。」
グググ・・・
調子づいた拓也は首を絞めたまま美希の唇にキスをした。
「・・・ん"っ!・・・・ンッグッ・・・ゥ・・・」
「ンッ・・美希っ・・・気持ちいいか?苦しめてあげるね?」
「ん"っ・・・も"っど・・・」
「本当にドМなんだな、美希。」
そう言うと美希の身につけている衣服を脱がした。
「・・・っ、いやっ・・恥ずかしいょ・・見ないでっ!・・・ガッ!?」
「いいから大人しくね?」
途端に美希の首を絞め上げる。
「お前の体は俺のもの・・でしょ?」
「・・ガッ・・ンッ・・・ハ、イ・・・」
「・・うん、分かればいい。」
そして拓也は片手で首を絞め、もう一方で美希のアソコに手をやり動かし始めた。
「・・んっ///・・ひゃぁっ!!・・・・んっく・・・・・ぁっ・・・あひぃっ・・・」
「美希・・すげぇ興奮するよ・・・殺したいくらいに。」
「んっ・・・んっく・・しゅ・・しゅ、ごぉい・・・きも、ぢいい・・・」
「ん?気持ちいいか。嬉しい限りだな。んじゃ、俺も気持ちよくなるとするか!」
といい、拓也も全裸になり、そのイチモツを美希の中にねじ込んだ!
グイッ・・・
しかし、案外素直に入り込んでしまい、拓也は驚いた。
ちらっと美希の顔をの伺うと、なんだが申し訳なさそうな顔をしていた。
拓也はそれがなんだか気になり一旦手を離し、聞いてみることにした。
「・・ハァハァ・・・ゲホッ・・ゲホッ・・・ふぅ・・・ご、ごめんなさい・・・」
美希は多少息を整えて第一声こう言った。そして・・
「・・わ、わたし・・処女じゃないんです・・・前に、色々家庭環境が複雑って・・言いましたよね?」
「・・ああ、言ってたな。俺もそうじゃないかとは薄々気づいていたんだが・・」
「は、はい・・・・わ、わたし・・・初体験が記憶に無いんです・・・」
「・・!?・・どういう事なんだ?」
「・・わ、わたしにも良くわからないんですが・・物心つく前に実の父に犯されていたみたいで・・」
「・・・えっ!?」
「そのあとも、色々あって、施設に預けられて・・・そこでも・・・犯されて・・・」
拓也は全てを悟ったかのように
「・・なるほど。分かったよ。」
「だから・・・ごめんなさい・・・」
「いや、謝ることはないよ。とても辛い思いをしてきたんだね・・・」
「・・・は、はい・・・」
「・・・美希?一応聞くけどさ・・・・今、辛い?」
その問い掛けに美希は・・・
「・・・・・い、いえ・・・し、幸せです・・・」
「・・・本当に?・・もし、今までみたいに辛いと思っているなら、辞めるよ?」
「・・やめないで・・・下さい・・・このままが、一番・・いいです・・」
この言葉に拓也は
「ふふ、いい子すぎて悪すぎるわw でも、そう言って貰えて嬉しいよ。ありがとう。これからずっと一緒だよ?いい?」
「・・はい!・・・お願いします・・・」
「ありがとう。・・・じゃあ、また絞めるね?」
グググ・・・
そして、首絞めセックスが始まった・・・
「・・・んっく・・」
拓也はゆっくりと腰を動かしながら、苦しむ美希を眺めていた。
最初は軽くゆっくり。時々強く激しく。
美希の体をまるで人形のように扱っていた。
「美希・・・気持ちいい?俺は凄く気持ちいいよ・・」
「・・・ンッ・・きもち、いいです・・・」
首絞めセックス自体、拓也は未体験なのもあってか、理性はもう吹っ飛んでいた。
「・・うっ・・美希!また行くぞ・・っ・・!」
と言うと、腰の動きとともに、首を絞める力を強めた。
グググ・・・ パンッ パンッ パンッ パンッ!
「・・・ッ!・・アガッ・・・・ァァ・・・・・・カハッ・・・」
美希の視界は一瞬で暗転し白目に。口元からは舌を覗かせ、拓也の気持ちを昂ぶらせるには充分すぎる光景だった。
更に、首を絞めることにより、一層マンコの締まりも良くなり、多大なる快感が襲った。
「・・ハァハァ・・美希・・・凄い、よ・・・。処女じゃないにしても・・こんな気持ちいい、なんてね。」
「・・・ア"・・・ァ・・・・・・ガッ・・・・」
「・・ふふ、いい表情・・だよ。・・ハァハァ・・・まだ、耐えて、ね」
拓也は美希の耳元で囁きながら言った。
目には涙を浮かべ、口元には涎がつたい、力なく抵抗する腕が更に弱々しくなってきた。
しかしそんなことはお構いなしに、尚もその行為を続けた。
「美希っ・・・ああっ・・・最高だっ・・・」
パンッ パンッ パンッ パンッ! パンッ パンッ パンッ パンッ!
「・・ァ"・・・・ァ"・・・・ァ"・・・・」
美希が今どんな状態なのかということすらも、思考が回らなくなっていた。
自分でも、今の自分を止められない・・・そんな感じだった。
グググッ・・・
首を絞める手にもさらに力が入る。
頚動脈を完全に絞め、血管が破裂しそうなほど浮き上がっていた。
勿論、顔は既に真っ赤に鬱血していて、白目だった目が、徐々に赤く染まってきた。
「ぐっ・・・!美希・・・ハァハァッ!・・・もっと・・・もっと・・・んぐっ・・」
「・・・・・ァ"・・」
時間が経つにつれ美希の反応も薄くなり、抵抗も無くなった。
「・・美希?・・・っ!」
美希のその状態に気づき、絞めたい感情を抑え首から手を離した。
「・・ングッ・・・・カハッ・・・・・・・・スー・・ハー・・・スー・・」
美希は静かに呼吸を始めた。顔の鬱血は徐々に引いていった。
拓也はまた自分の行為を恐れた。
「だ、大丈夫?」
「・・はぁ・・はぁ・・・んっ・・」
「ご、ごめん・・・また酷いことさせちゃった、かな・・・」
「・・・うぅ・・しんじゃう、ところでした、よ・・」
と言ったあと
「・・ん、でも・・殺されたいって、言いましたよ、ね? 拓也さんが、それでも・・いいのなら、ころしても
いいです。・・・それが、私の望みですから、ね」
と、弱々しく笑顔で答えた。
「・・・そ、そっか・・」
可愛い顔して純粋な笑顔でこんなに恐ろしいことが言えるなんて、今までどんな目にあってきたかを容易く想像させた。
「前にも言いましたけど・・・私、今日死ぬ予定だったので・・・」
そう、あまりの展開に頭が回っていなかったのもあるが、確かに美希はあの時死ぬ予定だと言っていた。
「だから、全然大丈夫です。・・・寧ろ、早く私を殺してください。」
なんでこんなことが簡単に言えるのだろうか。
「なんでこんな事がいえるの?」
自然と思っている言葉が出た。自分でも焦った。しかし、大事なことだと思った。
「・・・なんで・・ですか?」
拓也の問いに少し困った表情を見せた。しかし
「私はいらない子なんです。親にも施設のみんなにも学校の人たちも全て私の事なんて何も分かってくれない。死よりも残酷で怖いところにずっといるなら、もう終わりにしたい・・・。頼れる人も親友も何もいない。もう、何もないから・・・」
「なんだ。そんなことか・・・。なぁ?じゃあなんで俺に話しかけたんだ?」
「えっ・・・」
「だって考えても見ろ。今から死ぬ人間が見ず知らずの人にこんな事話すかよ。」
「ち、ちがいます!わ、私には絞殺願望があるんです!一人で死ぬより、殺された方が・・・だ、だからっ」
「・・・寂しかったんだろ?一人で死ぬのは寂しいよな。そこで運良く俺に出会う。まぁ、俺が話しかけなかったらそのまま死んでたかもしれないよな。しかし、俺が声をかけてしまった。それが美希には嬉しかったんじゃないか?」
「・・・・」
「んで、嬉しくてもやっぱり結構勇気いるよな、見ず知らずの人と話すのってさ。俺も第一声裏返ったしな。まぁそこで恥ずかしくなったのか逃げたよなw」
「っち、ちがいます!逃げたんじゃないです。」
「じゃあ、なんだって言うんだよ。」
「死ぬ場所を変えようとしたんです・・・だ、だって、ここで死のうとしても、すぐ見つかって死ねないかもしれないって・・・」
「なるほど、だから雑木林から出てきたのか。・・ん?でも、死んでないよな?」
「・・・はい・・」
「声かけられたのが、そんな嬉しかったのか?」
「・・・うぅ・・・ちょっと、です。・・でも声をかけてもらったのに、何も言わないで終わってしまうというのも、悪い気がしたので・・・でも、こんなことになるなんて思ってもいませんでしたし・・・・」
「だよな・・・俺もまさかの展開だ。でも、これだけは言えるよ。」
「・・なんです?」
「お前は俺のモノになった。お前の帰る場所はココ。俺はお前の親であり親友でもあり家族でも先生でも全てになる。お前がそれでも本当に死にたいというのであれば、すぐ殺してやる。でも、これからは今までのような独りぼっちの世界ではない。ずっと俺がいる。居続ける。だから、安心して欲しい。すぐには難しいかも知れない。だから・・・」
「・・ううぅ・・・」
美希は涙を浮かべていた。無理もない、こんな事言われたことがないのだろう
「・・ご、ごめんな、なんか良く分からないこと言って。でもさ、わかって欲しかったから。」
「・・・あり、がとうございます・・・拓也さん・・私、拓也さんのためなら、なんでもしますっ!」
「ん?今、なんでもするって・・・」
しかし時計をちらっと見ると深夜4時を回っていた・・・
「・・・・寝れなかった・・・」
「ご、ごめんなさいっ!わたしのせいで・・・」
「いや、いいんだ、仕方ない・・とりあえず少し寝たいから六時になったら起こして欲しい・・今、俺のためな
らなんでもするって言ったばかりだしな!そう、今日の仕事それで頼む!(?ω?)スヤァ…」
といい、深い眠りについた・・・
それから約二時間後、美希は言われた通りに拓也を起こし、そのまま忙しなく時間が過ぎた。
「っし、んじゃ行ってくるわ。しっかり留守番しとけよ」
「は、はい・・・」
「誰も来ないと思うが、誰かきても居留守で乗り切ってくれ。外には出るんじゃないぞ?」
「わかりました。」
そう言い残し、拓也は大学へと向かった。
部屋に一人残された美希。
それから、数時間前のあの行為、更にあの言葉を思い出し胸をふくらませていた。
「・・・ずっと、ずっとこの生活が続くといいな・・・」
と言ったが美希といえど、拓也と同じく今のこの状態に不安を隠せないでいた。
「・・あ、そういえば。」
美希はふと気づいたように、鞄から携帯電話を取り出した。
すると、何件かメールを受信していた。
「・・・施設の人達からだ・・・」
いくつかあるメールの中から、それを見た瞬間、美希は何かを思い出したかのように携帯を閉じた。
「・・・(ごめん、私だけ・・・逃げて・・)」
しかし、これで確信できた。逃げれた、と。
「みんな・・・ごめん。」
だが、ソレを意味する事がとても残酷な結果があっての事と知り、深く気落ちした。
あの時は自分だけが逃げることを考えていた。アイツらに殺されるなら、自ら自殺しようと考えていたからだ。
しかし偶然が重なり、今こうして幸せに心を震わせている。
美希にはまだ他の人のことを考えている余裕なんか無かった。
今はそんな事を考えても、どうしようもない。
「・・私は・・・今を、生きよう・・・」
美希は現実から目を背けるかのように。
「・・・ふあぁぁ・・」
美希の口から気の抜けた声が漏れた。
あれから一睡もしていないが為に漏れたあくびだ。
「・・うぅん・・・少し眠ろうかな・・」
そう言うと、ベッドに横になり、スヤスヤと寝始めた。
一方、大学では・・・
「ふああぁぁぁ・・・」
「おいおい、俺と会って第一声が盛大なあくびとか、勘弁してくれよ拓也さんよぉ~」
「わ、わりぃw ちょっと安心したっつうか、ほっとしたっつうか・・・」
「どうしたんだよw なんかおかしいぞ」
「・・・ちょっと色々あってな。でも気にすんな、俺がおかしいのはいつもの事だからな!」
「それ自分で言うか・・でも、なんか色々あるって事なら、手の負えない事になったらいつでも頼ってくれよな?」
「・・・・ったく、しょうがねぇな、その時が来たら頼むわ・・」
こいつの名は榊原 隼人(さかきばら はやと)小学生からのマブダチ。
カンが鋭く頭もキレる。かといって成績優秀なわけでもない。どちらかというと、馬鹿だ。・・・しかしとても頼りになる男だ。
いくら経ってもコイツには隠し事は出来ない。しかしコイツは俺が弱音を吐かない限り、無理に詮索しようとしない。しかし、俺が弱音を吐いた途端、強引なくらいに現状を聞き出し、すぐに助け舟を出してくれたり、問題を一緒に考えてくれたりする。
・・・でも今回は、事が事なので、なるべく隼人の前では冷静を装いたいと思った。
「おう!今までの経験から行くと、9割がた手伝うハメになるがな!うはははは」
「・・・わりぃなw はいはい、俺が根性なしですよ・・・ったく」
こうして一日が始まり、帰りを迎えた。
「んじゃ、また来週な!」
「おう、今日はサンキュな」
拓也は昨日の事もあり授業中はほぼ爆睡状態だった。
しかし隼人がノートを取っておいてくれたのだ。
「ふっ・・お安い御用だ! 俺がノートを取って、拓也が宿題をやる!素晴らしい連携プレーだぜ!」
「はは、やっぱお前サイコーだわ。んじゃな!」
そして拓也は家路についた。
ガチャ・・・
「ふぅ・・ただいまー」
「・・・・」
「あれ?聞こえなかったのかな?・・・おーい、美希?」
それでも返事は聞こえない
「・・・そういや、あれから寝てなかったから寝てんのかもな」
と思い、部屋を覗いてみたところ、案の定眠っていた。
「・・・スー・・・スー・・・」
拓也は近くで美希の寝顔を覗いた。
「・・なんて無防備な寝顔なんだ・・・昨日の今日なんだし、もうちょい警戒心ってのを持たないと危ないぞこの子・・・」
等と独り言を言いながらも、自らも少なからず興奮する気持ちもあった。
あの時美希に言った事が脳裏によぎった。
「・っ・・美希は・・俺のモノ・・か。」
美希もその事に同意し、更にはなんでもすると言った。
このまま好きなようにしていい気持ちと、このまま行ったら大変な事になりそうな気がする気持ちとが、整理がつかず葛藤していた。
しかし拓也の手は無意識に美希の首に滑ってゆく。
あの時の快感、支配感・・・あの興奮はなによりも中毒性があるものだった。
この部屋には二人しかいない。だから大丈夫、と、無意識に動いた自分に言い聞かせるかのようにソレを自意識に変えていった。
「・・お寝坊さんにはお仕置きだよ。美希。」
グググ・・・
「・・・スー・・ス・・・ンッ・・・」
グググ・・・
「・・・ンッ・・・クッ・・・」
「ふふ。美希?」
優しく問いかける
「・・・んっく・・・たくや、さん?」
美希は目を閉じたまま口を開き小さく答えた。
「・・正解。眠ってたみたいだから、起こそうと思ってね」
「・・あっ・・・・ご、ごめんなさ、い・・・」
「謝らなくていいよ。でも、もうちょっと絞めるね?」
グイッ・・!
親指を顎下の窪みに思い切り突き立てた。
「あっ・・アガッ・・カッ・・ハ・・・・・」
「頚動脈を絞める時とは別だからね。また違う反応で凄くいいよ美希・・頑張って呼吸して楽しませてくれよ。」
「・・ァァ・・・・・カー・・・ハー・・・・」
急に呼吸器官を遮断されたが、口を目一杯開け、喉を広げて空気を取り入れようとしていた。
「・・・カー・・・ハー・・・ングッ・・」
美希は無抵抗のまま絞められるがまま。
これ以上無い支配感。
また犯したい・・・という欲望が脳裏を過ぎった。
が、拓也は美希の首から手を離した。
「・・カハッ・・・ハー・・・スー・・・ハァ・・・ハァ・・」
美希はいつものように静かに息を整える。
それを見て拓也は冷静を装い、一言。
「・・さて、ちょっと手荒だった気もするが、起きたか?」
「・・・ハァ・・ハァ・・・う、うん・・おきまし、た・・・」
「どうだった?首絞め目覚まし?」
「・・ん、ちょっと、びっくりしたけど・・・よかった、です。」
「そか。・・んじゃ、起こすとき首絞めるよ?」
「・・は、はい。いっぱい絞めてください・・」
「ふふっ・・・わかった。」
美希の従順さを再度認識した。
その後、美希の可愛さに幾度となく欲望を掻き立てられたが、思うたびにヤっていては人間として崩壊していく
のは目に見えたのでなんとか耐えた。
そして就寝。
ベッドは一つしか無いので、美希に受け渡し、自分は悪い気を起こさないよう、ドアを隔てた廊下に布団を敷いて寝た。
明日は土曜で大学は休み。とりあえず美希の話をもう一度詳しく聞いてみようと考えていた。
・・・翌日・・・
「はぁ・・・」
拓也は寝起き早々、今一度今の状態を確認した。
「・・・うーむ・・・考えて解決できるようなことじゃないよな・・・」
廊下で考え込んでいると背後から声がした。
「た、たくやさん!おはようございますっ」
元気のいい美希の声が狭い廊下に響く
「お、おう。おはよう。」
心の中で少し長い夢であって欲しかった・・という想いがあったが、瞬く間に消滅した。
そして振り向く。
美希もさっき起きたばかりなのだろうか、振り向いた瞬間軽いあくびをしたように思えた。
そして、その顔を見られた途端、急に頬を赤らめとっさに後ろを向いた。
「ははっ、疲れてるならまだゆっくりしててもいいんだぞ?」
その言葉に
「べ、別に疲れてないです・・・ただ、朝はあんまり得意じゃないだけです・・・」
「そっかそっかw とりあえず、今日は休みだからずっと一緒にいられるよ」
その言葉を聞いた途端、再度振り向き無邪気な笑顔を見せた。
「おいおい、そんな喜ばれる程でもないと思うんだけど・・まぁ、聞きたいこと沢山あるし聞くね?」
「・・えっと・・答えられる範囲なら・・・」
美希は少し小声になった。でも、聞かないとダメな気がした。
これからどうなるのかも分からない。自分で何かできる事があればやらないといけないと思ったから。
「じゃあ、質問。答えられないとか、分からない事とかあったら言ってね。でも、生活していて勘付いてる事とかは教えて欲しい。あと、質問によって傷ついちゃうかもしれないけど、そこら辺はご愛嬌ということで・・・とりあえず、美希の事全部知っておきたいから・・・ね」
「ぁ・・はい。わかりました。」
拓也の最後の言葉に一瞬ドキッとしたように、美希の声は気合が現れているようだった。
「とりあえず、もう一度確認するね。名前は朝倉 美希 年齢14歳 学校は不登校。家庭環境が複雑で、今はとある施設で集団生活をしている・・」
「・・はい」
「それで、なんとか施設を抜けだして、行く宛も何もなかったから死のうとしているところを運良く偶然話しかけた俺に助けられた・・・か。」
「・・・そう、です。」
「うん。じゃあ、その事を踏まえてもっと詳しく聞くよ。」
「・・お願いします。」
「じゃ、初めは美希の詳しい家庭環境と施設に入った年齢教えてくれる?」
「・・・っ・」
最初の質問で早くも美希の顔色が悪くなる。
それを素早く察知した拓也は
「・・あ、わ、悪い。答えたくなかったり、分からなければいいんだ。物心付く前から居たかもしれないもんな。・・・ぁ・・・」
瞬時に昨日美希の言っていた言葉が脳にフラッシュバックする。
「・・・」
拓也は言葉に詰まり口ごもった。
最初にする質問じゃ無かった・・・と嘆くような表情
「・・・美希・・ごめ、」
「いいんです。今は幸せなので・・ちょっと思い出しちゃいましたが、言わないと余計心配させてしまうんですもんね?」
謝ろうとした言葉を遮るように美希は言葉を発した
「・・・私は大丈夫です。・・拓也さんは何も心配しなくていいんです。これ以上・・・誰も、誰にも心配させたくないから・・・」
「・・美希・・・」
その間、なんとも言えない空気がここら一辺を包んだ。
しかしこのままでは何も進まないので、気合を込め話を進めることにした。
「・・・おし!んじゃ、俺は聞くことに専念する。じゃあ、分かる範囲でいいから施設に入った年齢とか理由、教えてくれ。」
「・・・はい。」
また少し目線を下に向けたが、直ぐに顔を上げて話した。
「・・・とりあえず話で聞いた事をまず話しますね。・・・私、6歳の頃に実の父親に犯されたみたいです。でも、私には記憶がなくて、よく分からないんですけど・・・それからは何もなくて、その一回きりだったみたいなんです。 そして、ここからは覚えてるんですが・・・」
再度何かを思い出したかのように顔を強張らせる。
「・・・8歳の時、私の母が父親に扼殺されました。」
「・・・!」
「何が原因だったかはよく覚えていません。母がまだ仕事で帰っていない時に急に暴れだして、部屋に居た私の首を絞めてきました。・・・その時は何がなんだか分からなくて・・・でも、なんだか体の感覚だけ残ってたみたいで、急に恐ろしくなってきて・・・そして、恐ろしい笑みとともに、聞き取れない罵声。そしてそのまま犯されながら首を絞められていました。」
美希は悔しさと悲しさを噛みしめるように、少しでも拓也に伝わるように必死で話していた。
拓也もそれを邪魔しないように、言いたいことも沢山あったが、噛み締めた。
「何分・・・何時間経ったか分かりません。・・・もう私は抜け殻状態でした。抵抗なんて最初だけです。もう、このまま死んでしまいたかった。・・・それで、ここからは意識が朦朧だったので曖昧なんですが、それから母の悲鳴が聞こえて、その声と共に私は開放されました。・・・朦朧とした意識の中で、隣の部屋で父と母が揉み合いになっている音や声が響いていました。・・・でも、それはほんの一瞬。急に静かになったんです。・・・私はとっさに母のことが心配になり、何故だか動けるようになりました。・・・そして、私が隣の部屋で見た光景は・・・母が父の背中に包丁を突き立てているところでした。・・・でも、浅かった。でも・・母はそれ以上何も出来なかった。・・・それから父に押し倒されるかのようにそのまま後ろに倒れ、尻餅をついて、そのまま父の大きな手に首を絞め上げられ、声も出せず、何も抵抗出来ずに・・・」
なにがそうさせたのか・・なんでこんな事になってしまったのか・・・
分からないが、そうなってしまったことには変わりがない・・・
「・・・・くっ・・・」
こんな事、聞いて良かったのだろうか・・そう思った。でも、打ち明けてくれて嬉しかったという気持ちもあった。
「・・・そして、近所の人が通報していたらしく、警察が来て、私は保護されて・・・施設に入れられた・・って感じ、です。」
ひと通り話し終え、再度俯く。
「・・・うん・・・よく言ってくれたよ。有難う。」
その言葉に美希も安心したかのようにゆっくりと顔を上げた。
「一番最初なのに重い質問してごめん・・・とりあえず次からの質問は気軽な感じにするから安心して欲しい」
「・・いえ、別に本当のこと話してるだけなので大丈夫です。よろしくお願いします。」
「んじゃ・・・次は、施設のこと教えてくれないかな?抜け出したくなるような施設だったって事だもんね?」
「・・・はい。」
「とりあえず・・・場所と規模・・施設の大きさ教えてもらえるかな?あとは集団生活ってことだから人数も。」
「場所・・・ですか?・・・うーん・・・何も無い所・・ですかね・・」
「何もない?」
「んっと・・林みたいで、木がたくさんありました。でも、ちゃんとした道路も少し歩けばあるので、そこから・・・」
「・・なるほど。」
「はい。大きさはよく分からないです・・・でも、沢山ドアが有りました。グループ毎に部屋別で過ごしてて、私の部屋は5人いました。」
それから少し考えるようにし
「食事はみんなで食べていたので、人数は分かりませんが大体50人くらいだったです。」
「・・・ほう・・と言うことは思ったより結構大きそうだな。」
そして暫く、拓也はあることに気づく。
"何故美希だけここにいる"のか・・・
皆バラバラの場所に行ったのかもしれない。だが、美希は今まで他の人の事を気にする素振りがない。
それが他人だとしても、幼い時から一緒に居た人達・・・
「・・・(考え過ぎか・・・)」
「・・・拓也さん?」
考えこんでいる顔を察して美希が話しかける
「あ、あぁ悪い。・・・少し整理してたんだ。結構事情が濃かったから・・・ちょっと休憩しよう」
と、台所へ向かった。
「・・・(ふぅ・・結構色々問題ありそうだな・・・)」
とりあえず水を飲み、先ほど言われたことをもう一度考えてみる。
「・・・うぐ・・・俺じゃ、解決とか無理そうだな・・・」
拓也の中では既に諦めに似た何かが生まれていた。
「・・・でも・・・」
しかし、あの時心に決めた意思が拓也を突き動かした
「俺が・・美希を・・・」
表の心はもちろん、それに相対するように裏の心も突き動かし
「俺が美希を守る・・・(美希は誰にも渡さない)」
美希の言った。そして懇願した首を絞めるという行為
あの行為の何とも言えない支配感にもう一度浸りたい・・・そして、このままずっと・・・
美希の過去なんてどうでもいい。 美希が望んでいるなら。。
絞殺してしまいたい。
そんな感情も、今はまだ小さくても無いとはいえなかった。
「・・・はぁ・・っ 何を考えてんだ俺は・・・」
と、お茶の準備をし美希のいる場所に戻った
「おぅ、ちょっと休憩だ。なんか色々暗い話聞いてごめんな」
「・・いえ、言わないと先に進まないですし、言えてスッキリしました」
「そ、そうか・・なら安心なんだが・・・でも・・・」
拓也の言動、顔を察したのか、それとも自らにも分かっていたのか
「・・・ごめんなさい・・どうしょうもないですよね・・私・・・」
「えっ・・いや、そんな」
「いいんです。私、もう全部忘れて拓也さんとずっと過ごしたいんです!」
「えっ」
言葉と同時に美希は拓也の胸に飛び込んだ
「おっと!」
その衝撃に尻もちをつき、押し倒された状態になった
「・・・たくやさんっ」 ムギュッ
その表情は、一瞬で見て取れた。過去の恐怖からくる涙なのか、これからの生活に対する喜びの涙なのか
・・・分からなかった。でも
「・・ふっ」
自然と拓也に笑みが零れた
美希もまだまだ子供。俺がなんとかしないと美希は一人ぼっち。
何もかも失った美希には、今となってはもう自分しか頼れる物が居ない。
難しいことなんか考えなくてよかった。
今は、ただ美希と・・・
「美希?」
「・・うぅ?」
泣き腫らした目で上目遣いで拓也を見る。
「えっと。。あのな。」
・・・これから何が起こるか分からない。裏の気持ちに押しつぶされるかもしれない。
でも、表のこの気持も自分の本心。
「これからも、ずっと・・・」
美希は拓也の目をじっと見ている。
「・・・一緒だ。だから安心しろ」
何度目だろう。でも、この瞬間のこの言葉には、今までに無いような思いがある。
何も知らないで発言していた言葉より重みも違っていたと思う。
様々な思いが交錯して、自分でもよく分からない状態。でも、本心には変わりのない言葉。
美希が”絞殺されること”を望んでいたとしても、そんなことはしたくない。でも、一緒にいる限りしてしまうのではないかという恐怖。
今までは極々普通の一般人だった拓也。でも、今までとは全く違う欲望、快感を知った。
その気持ちよさという本能。自分が自分で無くなる事に対する恐怖。
でも・・ここでこの子を一人にする訳にはいかないという善意。
美希が可愛そうだから・・・いや、違う。
他の何かが拓也を動かしていた。
それがいい事でも、悪いことでも・・・
「・・・美希。大好きだ。」ムギュッ
拓也は泣いて声も出せない状態の美希を更に強く抱きしめた。
そして、美希は拓也の言葉で安心したかのように思い切り泣きじゃくった。
そんな美希に、より一層守りたい気持ちが増していった。
それから暫く・・・
一頻り泣き終えた後、漸く美希がちゃんとした声を発した。
「・・うぅ・・・た、たくやさん」
「・・ん?なんだ?」
「今ね。。凄い嬉しくて、凄いドキドキするの。」
「ははっ、そっか。それは良かったよ」
「でね・・・早速頼みがあるんです」
「おう、なんでも言ってくれ」
「うん・・・あのね。首絞めて欲しいです。」
「・・・」
「あ、あの、今、凄い嬉しくてドキドキしてて、拓也さんに絞められた時思い出したらもっとドキドキしちゃって・・・お願いします!絞めて下さい!」
若干息を荒げるように、漸くこの言葉を言えたような表情を見せて懇願した。
拓也からしても、予想はしていた展開だった。そして、ここで拒否するといけない気がし、すっと美希の首に手を伸ばした。
「・・・美希が望むなら・・沢山楽しもうね。」
ググッ
「・・・っ・・・は、はいっ・・・」
拓也、美希は欲望の赴くままその行為を始めた。
「・・・っ・・く・・もっ、と・・」
グググ・・・
いつものように仰向けの美希に跨り、首を掴み絞め上げる
「・・んっ・・・もっと・・・ぉ、お願いし、ますぅ・・・」
可愛らしい喘ぎと共に、囁くよう首絞めを自ら懇願する姿。
拓也は心の内から溢れ出てくる欲求を必死に抑えながら絞める。
「・・もっ、と・・・お願い、します・・・」
美希の過去を目の当たりにしたせいか、首を絞める手に力が入らないような気がした。
「・・・っ・・」
・・・美希もその事に気づいたのか、拓也の体を両手で抱き寄せ口元に小さくキスをした。
「んっ」
そして小さく
「・・わたしは・・っ、大丈夫、です・・」
そして間もなく
「・・・悪い。考えるだけ野暮だったね。」
「・・んっ」
グググ・・・
拓也の手の平にいつも以上の力が込められた。
「んぐっ・・・ぁ、ぁぁ・・・・」
途端に絞め上げられ、吐息とともに声が漏れる。
しかしその表情はいつものように笑っていた。
お互いに笑い、首を絞め、首を絞められる。
こんな光景、他の人なんかに見せることなんてできない。
どう考えても異常だ。
頭の中でそんな事もふと思った。が、今はそんなことどうでもいい。
美希が幸せなら、もう何も無くてもいい。
美希さえずっと居てくれれば、何も要らない。
そう・・・美希さえ・・・
ずっと・・・ずっと・・・
首を絞めて苦しみながら気持ちよさそうに喘いでいる美希。
自分に殺されるのがいいと言ってくれた美希。
今まで何も無く、平凡に生活していた拓也の頭の中で様々な思考が巡る。
そして同時に、産まれてから思春期に至り、これまでの記憶も。
生活には何も不自由の無い家庭に産まれ、小学生になり、隼人と出会う。
幼少期の拓也は、あまり自己主張の出来る性格ではなかった。
今でもよく分からないけど、あいつは何かにつけてしつこかった記憶がある。
子供の頃の話にはよくある話だと思うが、そこから考え方が変わっていった気がする。
懐かしい記憶だ。
そしてそのまま中学生になる。
いつものように隼人と数人の友達と馬鹿やってたっけな。
今想像しても昨日の事のように思い出せた。
そして初恋。
相手に伝える勇気なんか最初は持ち合わせていなかった。
でも、隼人の失恋話を聞いているうちに、そんな事で悩んでることが小さく思えたっけ・・・
色々アドバイスもくれた。結局為にならなかったけど・・
本気で好きになった人にあっさりフラれる。
あの時は本気で凹んだ。
そして、隼人が冗談交じりで言ったあの言葉・・・
あの時の会話が頭の中から思い出される・・・
「おいおい、そんな凹むなって!」
「・・・うるさい・・」
「まったく・・シャイだなお前・・」
「・・逆に、隼人がおかしいんだよ・・てか、本当に好きなのかよ・・・」
「心外だな。俺は真面目に好きだし一途なんだ。まぁ大概は信じてもらえずこのザマなんだが・・・」
「・・そりゃ、切り替えが尋常じゃない程早いもんな・・・怪しまれて当然だろ・・・」
「いやいや、だが、俺は俺を一度振った女とは一切関わり持ってないんだぞ!・・・そのせいで大半の女子と話せなくなったけど(小声)」
「なんだよそれ(笑)」
「んーと、なんつーかさ、俺あんまり後腐れがあるの嫌なんだよな。」
「うん。今の状況見れば想像はつくよ」
「で、まぁ、俺の気持ちを切り替える方法なんだけどさ・・・」
当時の拓也は隼人の次の言葉にすごい期待していた。
それが、今の気持ちの状態を変えることが出来るのであれば・・・と。
そしてそれが、しょうもない事だったとしても、それだけで気分が楽になる。そんな奴なんだ。アイツは。
・・・!
「・・・ぁ・・・ぁ"・・・」ビクンビクン
記憶の中に意識を集中していた最中、拓也の両手、そして全身に大きな震えを感じた。
ビクビクッ
その衝撃と共に意識は現実の世界に戻される。
一瞬、何が起きたか分からなかった。
「(そういえば・・美希の首を絞めてて・・・)」
咄嗟に美希の首に目をやる。
グギギギ
その首には、美希の首を捻り潰すが如く絞め上げている自分の両手があった。
そして、その手には美希の涎であろう液体が顎から滴り落ちながら手にかかっていた。
それから目を僅かに上に向けると、そこには美希が、微笑んでいた。
顔を真っ赤に晴らし、痙攣しながら、口からは溢れんばかりの涎が滴り落ち、目が合うと僅かに頷いたような仕草を見せ、そのまま目を閉じた。
「・・はっ!」
現実に引き戻され、その光景を見て手を離した時間はほんの一瞬だった。
でも、自分がどれだけの時間考え込んでいるまま首を絞めていたのか。それが思い出せなかった。
その後、美希の脈や心臓のが正常に動いているのを確認し、ベットに寝かせた。
そして、あの記憶を再度呼び戻した。
どうしてももう一度思い出さなくてはいけない気がした。
・・・・・
「で、まぁ、俺の気持ちを切り替える方法なんだけどさ・・・」
「それが分かったら苦労しないよ・・・」
「個人差はあると思うんだけど、殺すんだよ」
[殺す]
「へ?」
「あぁ、妄想の中でな?」
「妄想の中で殺す?」
「そうそう、妄想の中で、これでもかっていうくらい酷い事して殺すんだよ。そうすることによって、現実世界でそのことがフラッシュバックして今まで好きだった気持ちが冷めるっつうか、なんつーか、気まずい感じになるじゃん?」
「・・・」
「いや、なんていうかさ、まぁ俺が思いつく方法だから、拓也にやれってことは言えないけど・・・」
その言葉を聞いた時、何かが芽生えた気がした。
自分が本気で好きになった人が、自分を呆気なく振る。
隼人のこの話を聞く前は自分が不甲斐ないから振られたのだとばかり思っていた。
でも、[殺す]という言葉の意味合いを思い出した。
そこで当時出てきた言葉は[憎しみ]憎いから殺す。好きになれば好きになる程、何かにかこつけては嫉妬や妬みの種になり、最悪の場合憎しみに変わる。
自分勝手な思考だと思われるかもしれないが、誰しもそうなる可能性は秘めている。
今までの価値観をガラリと変えてくれるような隼人の言葉。
早速試してみようと決めた。
「・・・ありがとう。・・とりあえず、やってみるよ。」
「そか。まぁ、一度やってみて、それでもダメならもっと考えてやるから言えよな?」
「・・わかった。」
そして家に着く。
いつもどおり飯を食って風呂に入って勉強をしてベットに入る。
そして・・・隼人の言葉を実行してみた。
殺害方法は丁度なにかの漫画で首を絞めるシーンがあるのを見たのを思い出し、絞殺にすることにした。
人を殺す妄想・・・拓也は漫画、アニメ、ドラマの殺害シーンはある程度見ていた。
なのでとりあえず大まかに妄想を開始した。
・・・
・・・
妄想だと、凄く良いように色々できる・・・
なんでも許される世界。
そして、自分のさじ加減でいつでも殺せる。
焦らすのもいい。すぐに殺してしまうのは勿体無い。
何度も何度も暴れる女の首を絞めては生き返らせ、絞めては生き返られ・・・
そしてそのまま眠りに就いた。
翌日。
通学路の途中で隼人と合流。
昨日の話を多少濁しながら伝えると
「そっかそっか(笑) とりあえず今日どうなるか楽しみだな!」
と、茶化すように笑っていた。
内心、自分でもどうなるかが楽しみでもあった。
そして教室に入る。
辺りを見渡してみるが、教室には居ないようだった。
一応その女の子とは同じクラスなので嫌でも顔を合わせることになる。
そしてHR開始まで数分となった頃、続々と生徒たちが教室に集まってきた。
その中に、見つけた。
そして一瞬目が合う。相手はハッとしたかのように瞬時に目を逸らす。
そして拓也は・・・
・・・放課後・・・
「なぁ?今日はどうだった?」
「・・・どうって言われてもなぁ・・・」
返答に困った。
この前隼人が言っていた言葉にフラッシュバックという単語があった。
そして今日の朝。その子と目が会った瞬間
拓也の頭の中には昨日の妄想の中でのその子の顔が再生されていた。
死にたくないと懇願し、顔を腫れ上がらせ、涙を流し首を絞められ絶命していくその子の姿が。
そして、これ以上関わってしまったら本気で殺してしまいそうな気持ちに駆られてしまいそうな心境・・・
「・・・とりあえず、気分的にはどうだ?まだあいつの事好きか?」
「・・いや、なんか・・・もう気にしたくないって気持ちになったよ・・」
苦笑いを浮かべながら口をついた。
この気持ちは紛れもなく本心だった。
隼人が想像する現実とは異なるかも知れないが、それでもいいと思った。
「そっか。ならよかったわ!んじゃ、失恋祝いに今からカラオケでも行くか!」
「失恋祝いって・・・まぁいいや、仕方ないなぁ・・」
それから、俺は恋愛をしなくなった。
自分が自分では無くなるような感情が怖かった。
普通に、楽しく馬鹿やったり笑い合っていたかった。ただ、それだけを思っていた。
そしてここで記憶は途絶えた。
トラウマのような出来事を改めて思い出すと結構辛い気持ちになる。
人を好きになるというのは怖いモノだなと、改めて実感させられた気分だ。
でも、あの頃は片思い・・・。
けれど・・・今は・・・・・
「・・・はぁ・・・」
長い間考え込んで気が滅入ってしまったようだ
「・・・今日は、寝るか・・・」
今日は美希の事、そして自分の事も考えさせられてしまった。
「おやすみ。」
既にベッドで寝ている美希にそう告げ、昨日と同じく廊下で就寝した。
翌日。
拓也はいつもより早く目を覚ましたが、そのままの体制で考え込んだ。
とある出来事を起爆剤に、自分が自分では無くなってしまいそうな予感。
表裏一体の思考が頭の中を目まぐるしく駆け巡る。
考えないよう心に思っていたところで、自然と考えてしまう。
考えた所で、答えなんか見つかるはずもない。
考えたところで導き出されるのは、自分への疑心。そして、自分に関わる全ての人間に対する暗鬼。
ただそれだけの感情が増すのみ。
妄想と現実。
今の拓也にはこの境目が分からなくなってきた。
まだ幼い少女が突然現れ、自分を慕って何でもしてくれる。
まさに夢のような出来事。
だからこそまだ本気で信じられていないのかもしれない。
でも、これが妄想の世界なら、どうだろう。
[妄想]なら[殺し]ても大丈夫。
何度も・・何度も[殺]せる。何度も[殺]ってきた。
・・・
「・・・」
無意識に、しかし自然とそのような思考が浮かんだ。
途端に自分が可笑しくなる。
「・・何考えてんだ、俺は・・・」
自分の神経を疑った。
しかし、紛れもなく自分が思ったこと。
そして、昨日の記憶。
笑い話だと思っていたあの記憶が引っかかった。
「・・・あんな冗談を間に受けてしまったからか・・はぁ。」
軽くため息をつき、起き上がる。
ドアを開け美希の寝顔を覗く。
「スー・・・スー・・・」
まだ寝ていたみたいなのでとりあえず今日は寝かせてあげようと思い、ふと隼人に電話をした。
特に話すこともなかったが、他の人と話して気分を紛らわせたかった。
ツー、ツー
ピッ
「・・・もしもーし。どうしたぁ」
言っては悪いが寝起きのような間抜けな声が聞こえた
「・・悪い、ちょっといいか?」
「・・お、おぉ。いいけどなんだよw」
急に隼人の声色が変わる。いつも通りの展開だ。
「えっと、特にこれといってはないんだけど、さ」
「でっ?で?」
「変な事聞くけど、今って現実・・・だよな?」
この言葉を言った瞬間、自分でも可笑しさを感じた。
「はw?何言ってんのお前wぷはっ」
電話越しに聞こえる声も途端に笑い出す。
「だっ、だよな!ごめんな、変な事言って。」
「全く、勘弁してくれよwお前が壊れたかと思ったじゃねぇかwイカれてるのは俺だけで充分だっての!」
そして2~3秒の沈黙。
「・・・でさ。」
先ほどまでの明るい口調から一変。低く真剣な口調で・・・
「もし俺が、さっきの会話の時笑わないで単調に夢の世界だとか、妄想の世界だ、とか言ったら・・・何するつもりだった?」
「・・・っ!?」
急な問いかけに言葉が詰まる。
「・・・何するつもりだったんだ?」
再度同じ言葉を発し、回答を待つ。
「・・・べ・・別に、何も・・・」
動揺しているのがバレバレだった。
自分でも分かってはいたが、本当の事なんて話せない。
隼人はいい奴だ。だからこそ、こんな事に巻き込むわけには行かなかった。
「・・はぁ。大丈夫かよお前・・金曜。何があった?」
しかし拓也の思考とは逆に隼人はもっと詰め寄る。
「・・・なんもない」
「何もないなら、言葉詰まらないよ?」
「っ!なんでもない!」
「何もないなら、寝不足にはならない。」
「・・なんも」
「なんもないなら、今電話してない。」
「・・・なん・・か、あったとしても・・・」
「・・んぅ・・・まだ一人で大丈夫なのか?」
少し困ったような声を漏らし、優しく呟いた。
「・・・」
なんて答えようか。
今までも何度もこんな事があった。
俺は優柔不断な割に頑固な所がある。
だからいつも、弱気になった時無意識に隼人に助けを求めてしまう。
でも、声を聞いて諭されると、強がってしまう。
「・・・」
言葉が出てこない。
こんな短期間でそこまで追い込まれていたのかと思う程に。
そして。
「・・わかった。」
「・・ぇ?」
何が分かったのだろう?何も発していないのに・・・
「今から行くわ。朝飯食ってないからお前の家にあるもの適当に食いに行く!」
ガチャ・・・ツーツーツー
そして一方的に切られる。
「・・・っ!?」
突然の言葉に気が動転しそうになる。
今から、ここに、隼人が来る!?
この状況。どう説明すればいいのか。
そして、どう思われるのか・・・
「・・くっ・・流石隼人だ・・」
そんな言葉が自然と漏れた。
その瞬間、少し気が落ち着いた気がした。
来てしまうのはしょうがない。
とりあえず美希を起こし、昨日の事など一切触れず、手早く今の状況を伝えた
すると
「・・・えっ!?本当ですか?」
「おぅ・・元はといえば電話した俺の失態なんだけど・・」
「えっと、じゃあ、そのお友達の家からここまでどれくらいです?」
「・・・徒歩10分くらい・・・」
絶望的だった・・・
あの勢い、そしてあの速度でなら既にもうアパートの前にいても可笑しくない。
「とりあえず、美希は布団で寝ててくれ。あとは俺がなんとかフォロー」
ピンポーン・・・
「・・する・・!?」
「もしもーし!俺でーす!」
拓也の悪い予感はハズレを知らないかのような無情な声が響いた・・その間、およそ3分弱。
「と、とりあえず寝たふりしててくれ(小声)」
「は、はい。わかりました(小声)」
不幸中の幸いか、リビングと寝室は別々に設けてあり、パッと見では気付かれにくいのでそう伝えた。
ピンポーン・・・
ガチャ・・
「おう!来たぞ(ニコッ」
全力で走ってきたのか、額には汗を滲ませ、息を整えている姿があった。
「速すぎだわ・・」
「・・お前が意味深な電話なんかしてくるから心配して来てやったんだぞ?とりあえずいつもの麦茶くれ!」
と、まるで自分の家かのように上がり、冷蔵庫を開けて飲み干した。
「ぷはっ。冷えた麦茶は最高だわなぁ・・・」
その間も拓也は気が気ではなかった。
今の隼人はただのお調子者の姿。
しかし、先ほどの電話口の時のようになれば、嘘が付けなくなる。いや、嘘を見抜かれてしまう、と言ったほうが正しいだろう。
「とりあえず、話する前になんか食わして貰うわ。突然来たお詫びに俺が作ってやるからゆっくりテレビでも見てな!」
と、動揺している拓也の肩をポンッと叩き、冷蔵庫を漁る。
「わ、わかった・・・」
言われるがまま、座椅子に座り、テレビを付ける。
ピッ
【・・・今日の天気は、全国的に晴天になりそうです。】
ピッ
【西暦2015年12月25日、地球に隕石衝突。そして最後を迎えるでしょう】
ピッ
【続いてのニュースです。ツチノコの塩焼き大ブーム!】
ピッ
そして、何気なく変えたチャンネルに目を向けた時、何か胸騒ぎを感じた。
【■速報!集団自殺か!?10代男女複数人の首吊り死体が見つかる!】
「!?」
【今朝、5時頃、○○山山中で筍狩りをしていた男性が狩り終え帰る間際、足を滑らせ落下。幸い、軽いかすり傷程度で済んだのですが、少し歩いたら遠目で人影があり、帰りのルートを訪ねようと近づいた結果、男女数名が木にロープをかけ首を吊っているのが発見されました。尚、首を吊っている人以外に、数名、少女の絞殺死体も横たわっていた模様なので殺人の線も捜査している。とのことです。】
「・・・(まさか・・そんな事・・)」
【今、手元にある情報ですと・・・その中で女性は4人そして男性2人とあります。念の為、○○山付近に住んでいる人は十分注意して下さい。・・・再度速報が入り次第お伝え致します。では、続いてのニュースです・・・】
ピッ
「・・・」
胸騒ぎはした。でも、よくある話でもある。
裏サイトの類の事件かも知れない。絞殺死体があったのだって、死ぬときになって怖くなり、逃げようとしてその中にいた奴らが絞殺。
そしてそいつらも首を吊ったのだろう。
とりあえず関係のない話だろうと思い、考えないようにした。
テレビの電源を切り、特にやることもないのでぼーっと過ごした。
それから間もなく、いい匂いが漂ってくる
「・・俺の冷蔵庫なんかあったっけ?」
と、ぼんやり思っていると
「うっし!出来たぞ!」
料理を皿に盛り、テーブルに置く
「どうだ!俺特性のふわトロオムライスだ!・・ってか、お前の冷蔵庫ガラガラすぎだ。とりあえず卵と牛乳あったからできたが・・」
「お、いつものように美味そうだな」
「・・ったく、お前いつもコンビニ弁当だから、たまには作ってやんないと心配だわw」
「お前は俺の母ちゃんかよ・・w」
そして一口
「はむっ・・!こっ・・これはっ!! 口の中でトロトロ卵のクリーミー克つ独特の甘みが舌の上を転げ回り、更にはただのシンプルなケチャップご飯なのに、なぜか絶妙にマッチしている!・・・っ!こ、これは塩コショウ!コレこそが卵とご飯を繋ぐキーアイテムっ!」
「やめろwゆっくり食えってw」
「いやぁ、これはやっておかないと失礼な気がして・・・」
「いやいや、何言われるか恥ずかしいんだよw」
等、いつも通りの会話。
しかしまだ本題には入っていない。
この楽しい時間を崩したくない思いと、親友に嘘をつきたくない気持ちが交差する。
そしてそんな時間も長くは続かなかった。
オムライスを食べ終え、食器を台所に片付けに行く時。
拓也はあるものを見てドキッとした。
それは・・・3つ目のオムライスだった。
丁寧にラップまでしてあった。
「・・っ!」
拓也は動揺を抑えきれなくなっていた。
そして、気が気ではない状態で元の位置に戻る。
「・・・悪い。余計なお世話って思ったけど・・ちゃんとしたもの、食わせてやれよ」
「・・・」
「えっと・・靴、あったろ?」
「!!」
あの自然な流れ。ドアを開けてから勝手に上がるまでの数秒で隼人は玄関にある小さな靴を確認していた。
「んでさ、何かあったんだなって分かった。とりあえず、深い話は別として、俺でも出来ること・・したいんだよ。」
「・・・ぁ・・ぁ」
何故か拓也の目に涙が溢れた。
「・・おいおい・・泣くなよw」
「・・悪い。でも、ありがとう・・」
「今の俺があるのだって、拓也、お前のお陰なんだ。そんな水臭いこと言わないで頼れるだけ頼ってくれ!・・・なんか毎回言ってる気がするけどなこの台詞・・・」
「・・わかった・・・でも・・もう少し整理付いたら・・」
「はいはい、んじゃ、よろしくな。」
そして、部屋全体に響く声で。
「お前も、こいつの事頼んだぞ!冷静で真面目ぶってるけど、すげぇ心が弱い奴なんだわ!優柔不断だし、考えたら考え込んで寝込む程の野郎だ。とりあえずお互い迷惑かけんじゃねぇぞ!」
そう告げ
「じゃ、俺帰るわw」
と、立ち上がった瞬間。美希がいる拓也の寝室のドアが開いた。
「!?」
拓也、隼人ともに頭にビックリマークが出る
そしてそこには一人の少女。
「・・・美希・・」
ポツリと拓也が呟く
「・・・あ、あの・・あのっ」
そして美希が緊張した面持ちで隼人を見上げる。
「・・・えっと・・」
予想外の展開に隼人は言葉も出せない。
「・・っ!拓也さんのこと・・宜しくお願いしますっ!」ペコリ
美希はそう叫び、頭をペコリと下げた。
その姿を見た途端、2人は急にホッコリし、今まで漂っていた緊張感を一蹴した。
「・・ははっ、なんだ拓也!こんな可愛い娘と一緒に暮らしてんのかよw」
「・・・ま、まぁな・・」
隼人は少女に近づいた。
「なるほどねぇ・・・」
「お、おい、あんまり近づかないで・・」
「分かってる。玄関の通り道だからな。」
と、そのまま止まることなく玄関で靴を履く。
そしてそのまま語りかける、
「美希ちゃんだっけ?とりあえず拓也の事は任せろ。こいつ、全然頼りにならないからなw」
「・・ぐっ・・」
「んで、拓也!取り返しの付かなくなる前迄には・・俺を頼れ。んじゃ、とりあえずまた学校でな!」
そう言うと玄関を出た。
そして隼人は帰り道、あの家に行って良かったと思った。
何も知らないよりは少しでも現状を知りたくなるもの。
そして、真実までとは行かなかったが、何かがあり拓也は少女と過ごすことになり、その少女が何か問題を抱えているということも・・・
「・・・大事にならなければいいんだが・・・」
廊下で通り過ぎる際、ちらっと顔を確認した間際、首に痣のようなものが見えたことを思い出した。
「・・・頼むぜ・・拓也。」
整理がついたら話してくれるといった、その言葉を信じ祈ることしかできなかった。
・・・
「あの人・・凄くあったかかったです・・」
「・・・だろうな・・熱い奴なんだよアイツは。だからこそ、嘘なんか付けない。」
「じゃあ、もう話したらいいんじゃないです?」
「・・・でも・・」
「・・親友・・なんですよね?」
「・・分かってる。ちょっと気持ちの整理がついてないだけだ。あいつにもそう言ったし、近いうちに正直に話すよ。」
「・・ご、ごめんなさい。わたし、こんなこと言える立場じゃないのに・・」
「はは、いいよ別にwあいつも言ってたろ?心弱いし優柔不断からそういう後押しは助かるよ」
そして一息ついた2人は隼人の置き土産であるオムライスを二人で食べた。
美希にも好評だったみたいだ。
一息つき、目の前にいる美希を見据える。
それに気づいた美希も拓也を見る。
首に昨日絞めた痕が見える。
欲望が蘇る。
でも・・・
徐々に自分が今まででは決して考えられない、何処か遠くへ向かっていく気がした。
それは隼人が今日来てくれ、助言してくれたからこそ再度認識出来た感じだ。
だが・・
今は居ない。今は、美希と二人きり。
心臓の鼓動が速まるのを感じる。そして股間も疼く。
美希は首絞めを心待ちにしているかもしれない。
絞めたい。絞め続けたい・・・お互いの欲望のために。
更に鼓動は高ぶる。
何が正解で、何が間違いなのか。
そもそも正解と間違いの違いすら分からない。
価値観の違いもあれば概念の違いさえ存在する世界。
そう考えると、拓也と美希の価値観及び概念は一致しているといってもおかしくはなかった。
拓也の首を絞めたいという衝動。そして、美希の絞殺されたいという願望。
反発する要素など何一つない。引き寄せ合わせるに相応しい概念の一致。
美希がMなら拓也がSという磁石のような関係。・・・
ゆっくりと・・・そして優しく絞め上げる。
そして可愛い声、表情を楽しみ更なる快楽へ誘う欲求。
・・・今までの事を想像し、これからの事も想像する。
グググ・・・
体は勝手に動き、美希の首を絞める。
「・・・ぁぅ・・・っ・・」
いつもながら、無抵抗な美希が喘ぐ。
「・・美希っ・・」
我慢なんかしていられないような欲望。
二人きりの状況が故の行為。
そして、心の奥底に眠っていた欲望の開花。
「・・したい(殺したい)」
無意識に頭の中でふと出たフレーズが少しだけ言葉に漏れた。
「・・っ!」
自分自身、そのおかしさには気づいている。でも、どうにもできない。
「・・美希は・・・俺のモノ・・・」
「・・・は・・ぁぃ・・・たく、や、さん・・・」
苦しむ美希が答える。
恐ろしい程に興奮を覚える。耐えられない。
もっと!もっと、楽しみたい。
そう思ってしまった。
「・・ねぇ?次は違う感じで苦しめてあげるね?」
そう言うと手を離し何かを探し始めた。
「・・ぇっ・・ぁっ・・は、い・・」
そして取り出したのは細長いタイプのベルト。
手際よく美希の首に回し、外れないように固定。
次にベッドのプラスチック製の手すりに美希が座った場合、お尻が床から5~10センチ程浮いた状態になるように設置。
「・・今からやること・・・分かるよね?」
おもむろに美希のズボン、そしてパンツを降ろす。
「えっ・・・ガッ・・んっ、く・・」
そして有無を言わせず無理やり腰を落とさせる。
ベルトは容赦なく首にくい込み、殆どが首に埋まっている。
顔は下を向き表情は見えないが、両手は首付近をひっきりなしに触り、足をバタつかせだいぶ混乱しているようだった。
「・・あ、あ!ぁ、あがっ・・あががっ・・かっ・・・ぁぁ」
気道は完全に絞められている。
だが、必死に声を出そうと、かすれた声が僅かに響く。
今までには見せなかった顔。
これまではただの首絞め。死ぬ恐怖は無かったわけでは無いだろうが、絞めているのは美希の大好きな拓也であるため、その恐怖も軽減していたのだろう。
だが、今回はソレがない。ただただ、ベルトに絞め殺されるのみ。
しかし美希は初対面の時こう言っていた。
「今日死ぬ予定だったんです」と。
そう言ってはいたが、トイレで失敗し、雑木林でも決行に至れなかった・・・
その時点で十中八九真実には気づいていたのかもしれない。
・・誰でもそういう時期があるように・・・
「あ・・っ・・・がっ・・・ぁぁ」
秒単位毎に美希の反応が弱まる。
そして首にベルトが食い込んでいくに連れ、顔が上がってくる。
既に失神しているのか、その顔の目には生気がなかった。
涙、鼻水、涎でぐちゃぐちゃだった。
「・・・はは・・っ」
何故だか、この光景を見て悪い気はしなかった。
そして、そんな自分を笑うような笑みがこぼれた。
「・・・まだ・・だよ。」
心臓、脈、呼吸を確認し、首吊り状態の床とお尻の隙間に枕を置き、一時的にその状態から開放した。
そして我慢出来ずに気絶している美希のアソコに自分のモノをねじ込む。
「・・んっ・・くぅ・・」
出来れば失神する直前の締まりを味わいたかったが、また起きて失神させればいいとこの時思った。
気絶している美希を眺めながら腰を振る。
こうしているだけでも、なかなかいいものだ。
より一層、支配欲に満たされる。
小さいアソコから、ヌプヌプとエロい音が響く。
このままずっと、繋がっていたい。そう思える程に。
腰を動かす振動のせいか、時折首が絞まり僅かな反応を見せ、その度に膣が締め付けられそれが凄い癖になる。
意識を失ってから約30分。まだ目を覚ます気配はない。
「・・・起こすか。」
そう思い立つと、床の枕を引き抜いた!
ガクンッ! グギギギ・・・
「・・カァ!・・・ぁ"・・・ぁぁぁぁぁぁ!!」
途端に目が覚めたかのような悲痛な叫び。
そして。
「・・ぐっ!っおおぉぉ・・!」
思いも寄らない程の膣の締めつけ。
さらなる快感を求め再度出し入れを開始する。
美希は今の状況を把握するかのように必死に目を開き手探りで両手を動かしていた。
一応、首吊り状態になったのはホンの一瞬で、拓也は美希の腰を抱えるように掴み、セックスをしているのであの時よりは余裕は残されていた。
「・・ぁ・・っく・・・がぁぁ・・(拓也さんのが・・入ってる・・)」
それに気付くのにはそう時間はかからなかった。
そして、入っているのと入っていないのではまた、美希の中では全く別ものだった。
このままなら死んでしまってもいいと。そう思った。
そして、再度静かに意識を失った。
ピピピピ ピピピピ ピピピピ
「!?」
ここで無情にも拓也の携帯に着信が入る
「・・ちっ、ったく、誰だよ」
着信画面を見る。
[隼人]件名:あの子の首の絞め痕、もしかしてお前?w
「なっ!!」
体全体から瞬時に脂汗が吹き出る。
「なんで・・知ってるんだ・・まさかっ・・今も!?」
そう思ってしまった拓也は美希の首のベルトを外し、そのままベットに寝かせた。
「・・・なんだよ・・・俺・・」
あの瞬間の自分の焦り。
現実に引き戻させたような実感。
あのまま夢の中のような現実に潜脳されていたら、紛れもなく美希を殺していた。
今、そう思った。
しかし、なぜ隼人がソレを知っているのか。
いや、まだ件名しか見てないけど・・・
本文には何が書いてあるのか・・
怖い。怖いけど・・見ないといけない。
俺が正気でいられる、唯一の相手・・親友だから。
そして恐る恐る携帯を開き、本文を表示する。
[悪い悪いwお前がそんな事するとは7割型思えんがなw残り3割の可能性に賭けてみたんだけど・・・まさか!お前・・ww なんてなw うーん、まぁ、とりあえず気になったんだわ。パッとみ、見た目でワケありっての気付いたし。美希ちゃんの家庭で何かあって、お前が保護してるって感じだろ?多分俺の推測に間違いは無いと思うけどな!今まで正解率9割だしw なんていうかさ、さっきはあんな事言われて整理付くまで待つとか言ったけど、なんかゾワゾワするんだわ・・霊感ってやつか?で、来週のテストの話になるんだが・・・]
と、実際見てみるといつもの推理を提示する文章に日常会話のおまけ付きメールだった。
しかし、中々的を射ている。多少違う部分もあるが、辻褄としてはおかしい部分も無かった。
とりあえず説明するときはこの文章のまま説明しよう。そう思った。
メールの事もあり、それから暫く美希の首を絞めるという行為をしないように心がけた。
隼人とは一応学校で顔を合わせているが、例の件については何も触れてこなかった。
まぁ、自分から言い出すのを待っているのだろう。
そして家に帰ると美希が待っている。
顔を見て、目が自然と首へ向かう。
[絞めたい]その欲望は以前と変わらない。
でも、踏み外したくない何かが拓也の心を押し留めさせていた。
一方、美希の方はなんだか寂しそうな表情をしていたようだ。
それを見るたび、我慢する日々が続く。
「・・・とりあえず、テストが終わるまでは・・・」
美希にうつつを抜かして留年でもしてしまったらいけないと思い、そう心に決めた。
それから数日。
美希の方から首を絞めて欲しいと懇願された。
「・・あのっ・・なんで、絞めてくれないんですか?絞めて、欲しいです・・」
「・・・っ・・ごめん。とりあえず今はまだ・・」
その言葉に唇を噛み締めながら言う。
そしてすかさず
「・・試験期間だから、終わったら沢山やろう。」
そう告げると、少しだけ笑顔になった気がした。
「・・ごめんなさい。そうですよね・・終わったら、絞めてください。」
「・・あぁ。」
そして更に数日後、テスト週間に入る。
無論、勉強はあまり手に付かなかった。
肉体的にも精神的にも、あまり思わしくない状況だった。
だが、拓也の状態を察し、隼人がいつも以上にサポートしていた事もあり、なんとか赤点は免れた。
そして意外にもいつもは赤点ギリギリの隼人がかなり優秀な成績を残した。
帰り道、途中まで話。
「・・・ふぅ、とりあえず、試練(試験)終了っと。まさか俺が拓也の上を行く時が来るとはな。」
「・・はは、そうだな。やれば出来るってことかな?」
「そうは言ってもよ、お前のこの成績なら頑張らなくても俺の方がちょっとだけ上だぞ?」
「・・そうかもしれないな・・」
試験が終わっても力の無い声が出る。
「なぁ?本当に大丈夫かよ?」
「・・・うーん、どうだろ?」
「マジでどうにもならない事・・なのか?」
隼人が訪問してから8日を過ぎようとしていた。
そして多少フェイクを混ぜて今までの経緯を話すことにした。
「・・・まぁ、な。そろそろ話すよ。あんま心配かけたくないし。」
「・・お、おぅ。とりあえず聞かせてくれ。」
そして話す。
隼人が想像していた通り美希は両親から虐待を受けており、その日も暴行を受けていた。
母の再婚相手の男は美希の首を絞めながら犯し、母親はカメラ片手に笑いながら見ているだけ。
そして美希は必死に抵抗し、それに伴い首を絞める力が強まり一時的に気を失う。
その後美希が目を覚ました頃にはその二人は別室で撮影したビデオを見ているような音が聞こえた。
その隙に逃げ出し、深夜であった為か偶然にも誰にも見つからず公園の公衆トイレ付近まで近づく事が出来た。
そして偶然が重なり、自分が通りかかり、今、このような状況になっているんだと。そう伝えた。
「まぁ、最後が端折り過ぎなんだけどさ・・」
「・・その時点で警察行ったら、絶対捕まるな・・」
「そう。下履いてないし首の絞め痕見たらもう戻れない気がして・・・かと言って今行っても同じだろうし。」
「・・そうだな・・」
「・・まぁ、こんな感じなんだ。どうしょうもないだろ?」
力なく笑う。
「そうだな。確かにどうしょうもない・・な。」
「だから、その事についてとか、これからどうなるのかとか・・考えないといけないこと沢山あって・・」
「・・・そりゃ、気が滅入っても可笑しく無い、な。」
「もっと早く言えば楽になったかもしれないけど、本当に突拍子も無い出来事だから信じて貰えないかもって・・」
「・・確かに現実離れはしてるねw」
「うん。自分でもまだ夢であって欲しいと思ってる。でも、現実なんだよね・・」
「・・・そっか・・」
とりあえずの経緯を聞き、多少安心した顔を見せる。
しかし思った以上に話が重い事を知らされる。
「・・とりあえず、サンキュな。友達であれ、確かにこんな話し言いづらいよな。」
「・・そう、だね」
「話を聞けば俺にも何か手伝える事とかあると思ったんだが、結構厳しそうだな。」
「・・だよね。」
「とりあえず、今は俺は味方だとしか言えないかもしれない・・すまん」
初めて感じる自分の不甲斐なさに謝る。
「謝んなって。話を聞いて、味方だって言ってくれただけで気持ちは楽になったよ。」
「・・それならいいんだが。」
「あ、あと、オムライス好評だったぞ。また作りに来てくれよな!」
「そ、そうか?そのくらいならいつでも作ってやるよ!」
そんなこんなで家に帰宅。
美希は寝室に寝転がっていた。
「美希、ただいま。」
そう声を掛けると目を開ける
「おかえりなさいです。」
いつものようにそう答える。
荷物を置き、美希の寝ているベッドに腰を降ろす。
「・・・拓也、さん?」
美希が拓也の顔を覗き込むような視線を向ける。
その言葉と視線に拓也も目を向ける。
ドクン。
心臓が高鳴る音。
今まで我慢してきたモノが爆発してしまいそうな。
「・・美希・・」
その一言に美希の体もビクッと小さな動きを見せる。
恐らく拓也と同じ気持ちなのだろう。
欲望が全身を支配する感覚。
美希の目を見て、この子もソレを望んでいるのだろうと確信する。
服装は初めて会った時のキャミソール姿。
綺麗な肌とくっきりとした鎖骨。そして絞め痕が未だに残っているが細く可愛らしい首。
「・・・待たせて、ごめんね。」
我慢出来なかった。
前回の首絞めセックスから約2週間。
あれから色々ありオナニーさえしていない。
・・・溜まりに溜まりきった欲望を。今、ここで。
「・・お願い・・します。」
美希も望んでいる。
首を絞めながら、犯し、犯される。
互いに久々の快楽に胸を膨らませる。
ゆっくりと服を脱がせ、痛々しい絞め痕が残る首を撫でる。
徐々に互いの息が荒くなる。
互いの感情も高ぶる。
「・・・入れるね。」
いつものように美希のアソコは既に濡れており、すんなりと拓也のモノを受け入れた。
「・・んっ。」
「・・はぁ・・いつもながら、まとわりついてくるね。」
そして早速首を絞める。
「・・っん・・ぁ・・」
いつものような反応。
しかし久々の感覚。
そして膣の締めつけが強くなる。
「・・あぁ・・いいよ。」
ヌルッ‥ヌルッ
腰を動かし美希を感じる。
その動きに美希も合わせるように腰を動かす。
「・・んっ・・ぁ・・いい、ですっ」
最初は感覚を取り戻すかのようにゆっくりと動いていたが、数十秒経過後は音がでるまで激しく動いた。
パンッ パンッ パンッ
「・・・あ、ぁぁ・・・もっと・・もっとぉ・・」
動きが激しくなるに連れもっと絞めるよう拓也の手首を掴み催促する。
その行動に対し、拓也は素直に答える。
「・・っあ・・ん、もっとぉ・・・」
少し力を入れると一度気持ちよさそうに顔を歪めるが、すぐに更なる首絞めを要求してくる。
しかし早くも拓也は限界を迎えようとしていた。
2週間振りは流石にキツかった。
「ぐっ・・・」
早すぎる・・
自分でもそう思った。
とりあえずは動きと絞める力を弱め、収まるのを待つ。
それに対し美希は腰の動きを早め、拓也の手首を掴み自分の首に強く押し当てる。
「・・んっ!もっと・・・んっ、ん、んっ」
今までの我慢を解き放つかのように狂い乱れている気がした。
その行為に圧倒される。
「・・ぐぁ・・っ、で、でる・・っ!」
その瞬間、一瞬だけだしどうせ出すなら思い切り絞めよう。
そんな思考が回った。
そして丁度近くにあったドライヤーのコードを美希の首に巻きつけ、渾身の力で引き絞ると同時に腰の動きを早めた。
ギューッ
パンッ パンッ パンッ
「・・・ぇっ・・がっ・・・ぁ・・」
手からコードに変わる時、戸惑いを見せたが、すぐに快楽の表情へと変わる。
そして喰い込むコードを指でなぞりながらこの瞬間を待っていたかのような表情を見せる。
コードが完全に首に埋まる。
その細い首が更に細くなる。
絞めている首から上がみるみるうちに赤黒く変色していく。
「・・うっ、ぐっ!んっ!」
その光景に、何故か拓也の射精本能が停止するような感覚に襲われる。
パンッ パンッ パンッ パンッ パンッ パンッ
しかし、勢いに任せ尚も腰を振り、手にも力を込める。
「ぐっ・・・あ、あれっ・・・んっ・・」
気持ちよくない訳ではない。
正直気持ちよすぎる程の感覚だ。
時間が経つにつれ、美希の中の締まりも更に強くなる。
そして、それと反比例するかのように美希の動きが弱まる。
「・・・ぁ・・・ぐぁ・・・」
美希のその表情と変化に拓也は悦びを覚えている事に気づいた。
今までに無い思考。
いや、あったのかもしれない。でも、どこかでセーブしていたのだろう。
欲望に飲まれていくかのように、首を絞めるコード、そして腰の動きは強く、激しくなる。
自分で異変に気づいたところで、もう止めることなど出来ない。
快感の以上の快感を感じたい。
心はそう思っていなくとも、身体はソレを求めている。
体が言うことを聞かない。
拓也の視線は美希の顔に釘付けになる。
既に顔全体が赤黒い。
涙を流し焦点の合ってない目。
口からは舌を突き出し、涎が滴っている。
だけど、なんだか笑っているような気がした。
「・・っ・・」
これ以上続けたら・・・!
「・・ぐぁっ!?」
ビュルッ ビュルルルル
「んっぐ・・ぁ・・あぁ・・」
ビュクン、ビュクン
その言葉の先を想像した途端、一気に体の力が抜け、それと同時に美希の中に射精した。
そして体も動くようになり、急いでコードを取り外し状態を確認。
焦点の定まっていない目を見開き失神しているが、幸いにも息はしている。
ゆっくりと瞼を閉じされる。
そして首にはコードの形の食い込みがハッキリと残っていた。
「・・・なん、なんだよ、今の・・」
自分でも良く分からない感覚。
自分の恐ろしい部分を開花させてしまったかのような。
「・・・でも・・」
その後の言葉を発言しようとしたが、今の状態では言葉には出すことが出来なかった。
その言葉を発言してしまえば、一度きりの快楽だけの為に美希を本当に殺してしまいそうな気がしたから。
「・・・なんでだよ・・」
日に日に自分が壊れていく。
日に日に欲望に飲まれていく。
いつ自分が自分で無くなるのか。もしかして既に少し前の自分とは異なる存在になってしまっているのか。
それすらも分からない。
美希と出会ってからまだ1ヶ月も経っていない短期間の中で、何もかも変わってしまった。
「・・・」
自分に対する恐怖が増す。
だけど、自分ではどうしようもない感情。
自分の理性なんて当てにならない。
そう思った。
- 2018/07/12(木) 16:07:00|
- 絞首刑
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(市中引き回しのこと)
その日、初秋の王都の天は雲一筋すら無く、抜けるような青空であった。
絵に描いたような爽やかな秋の昼下がりに、およそ似つかわしくない一団が王都の大通りを歩いている。一団は中央に三人の若い女、それを取り囲むようにして十名余の屈強な男たちという構成だった。
似つかわしくない、というのは、三人の女たちの姿であった。彼女らはこの真昼間の往来にあって、革製のレオタードを着ており、太ももや二の腕が剥きだしの露出度の高い格好であった。
しかも、両手を背中に回した状態で手錠をかけられ、腰には腰縄を巻かれて拘束されていた。腰縄は後ろの女の腰縄に、いわゆる数珠繋ぎにつながれており、最後の縄尻は取り囲んだ男の一人が手にしていた。
女たちの身体は、ゴミのようなもので汚れていた。また、ところどころに小さな傷があって、血がうっすらと滲んでいる。
女らの周りを取り囲んでいる男ら(役人)の一人が、怒鳴りつける。
「さっさと歩け!女賊どもがッ!」
帝都の民の多くは、その格好で女たちが盗賊であることを察した。このような肌も露わな装束を着るのは、盗賊・暗殺者・密偵といった裏稼業の女しかいない。
そして、一目見れば分かることだが、彼女らは囚われの身である。かつては夜の街を颯爽と駆け抜けたであろう女盗賊達だが、今では官憲の手に墜ちて拘束され、役人と警備兵らによって引き回されているのだ。
王国刑法では、引き回しは公開処刑の付随刑である。更に言えば、35歳以下の女囚の処刑はベルトラン処刑場にて執行すると決められている。
つまり彼女らは、処刑される為に『かの高名なる』ベルトランへと向っている最中なのだった。
年の頃は20代前後であろう女たちは、皆なかなかの美人であった。三人三様特徴はそれぞれであるが、似たような雰囲気を漂わせているのは、三人が姉妹だからである。
彼女らは、姉妹の母親を頭領として小規模な盗賊団を形成し、盗み働きをおこなっていた。
「あれが『黒猫一家』か。頭目の母親ともども、とうとう捕まっちまったか」
「娘らの方は、ウワサ通りの若い女だったな!こりゃまた、眼福が期待できそうだな」
女囚の引き回しがあると聞いた住民が、道の端を埋め尽くしていた。囚人、特に女囚の引き回しや公開処刑があると聞くと、仕事を休んででも見物するというのは、この街に形成された独特の文化であった。
民衆らは、罵倒と嘲笑、そして小石や生卵、腐った野菜などを投げつけることで、女囚たちの屈辱をいや増す。女たちが汚れているのは、その為だ。
ただ、『処刑文化』とでも言おうモノが熟成しているこの街では、激しい投石でむやみに女囚を傷つけない、などという不文律も守られていた。
「ほらほら!さっさと歩けって言ってるだろうが、この惨めな雌犬どもがッ!」
「きゃあぁッ!?」
役人のうちの一人が、手にした鞭で先頭を行く女の尻を打ち据え、先頭の小柄な女は身体をビクンッ、と跳ねさせ悲鳴をあげた。
「なっ、何するのよ!?私の妹に酷いことしたら許さないわよッ!」
一番後ろを行く、三人の中では最年長と見られる女が声を荒げた。
やや鋭い目付きをしたその女は、三人の長姉エメリナである。引き廻しの最中でも顔を前にあげて、野次馬を睨みつけながら歩いていた彼女は、末妹のマリーカが無残に鞭打たれているのを見かねて、役人に抗議の声をあげたのだが……
「酷いこと?許さない?……フハハハッ!」
マリーカを打ち据えた役人は、頬を歪めて愉快そうに笑う。
「ちょっと尻をぶったくらいで、『酷いこと』なんて笑わせてくれる。お前ら今から、鞭打ちなんぞ比べものにならん目に遭うんだぞ?」
「くッ……」
「それに、俺のことを『許さない』とか言っているようだが、そんな惨めな姿で、どう許さないんだ?哀れな女盗賊よ」
歯噛みして睨みつけてくる長姉の視線を無視して、道の端を埋める群衆に向き直ると大声で言う。
「さあさあ、忠良なる王都の民草よ、ご覧あれ!これな女どもが、王都の夜を騒がせた女盗賊団だ!母親を頭目として、夜な夜な王都の……」
役人のこの口上は、これで今日三回目だ。引き回しの最中、時折このようにして三姉妹の略歴や罪状、そしてこれから待つ運命を得意げに民衆に教える。
「……しかし、この世に悪の栄えたる例(ためし)無し!ついに正義の代行者たる王都警備隊の手に堕ち、本日これより、哀れ公開絞首刑となる!」
野次馬たちは、その口上を受けて歓声と拍手をあげ、女囚らに罵りと嘲弄の声を投げつける。
「おうおう。王都の夜を騒がせていた例の女賊集団も、とうとうお縄となったか。惨めに緊縛されてベルトラン送りたぁ、良いザマだ」
「結構、荒稼ぎしてたって言うけど、いよいよ年貢の納め時か……それにしても、若い女の引き回しは、いつ見ても良いモンだ!」
「しかし、三人ともかなりの上玉で年も若い。やっぱり牢では、下級役人どもにたっぷりとヤラれたんだろうなあ」
「そりゃ、そうさ。捕まった女賊なんて、肉便器以下のか価値しかねえだろ。あ、あとは吊るされて惨めに踊るダンサー程度の価値はあるかぁ、ガハハッ」
「おいコラァ、雌犬どもよ!ベルトランで吊るされるんだってなあ?今どんな気持ちだ?言ってみろよ!」
「そんな若い身空で、こんなに惨めに晒し者の引き回しにされちゃってよぉ。さぞや恥ずかしいだろう?ハハハッ!」
その言葉は、必要以上に苛烈で無慈悲、かつ扇情的だ。
厳格な身分社会の下層にあって、重税と強権的政策に苦しむ民衆は、常にその鬱屈した感情のはけ口を求めている。そういう時に為政者から与えられたエサが、この女囚たちなのである。
民衆は、『社会秩序』とか『因果応報』とか『法の正義』とかいった錦の御旗を手にして、絶対的に優位な立場となって罪深い女たちを貶める権利を与えられるのだ。
たまったものではないのは、民衆に与えられたエサである女囚たちである。
「くッ……畜生ッ!」
「姉さん。言い返しても、悔しがるところを見せても、連中を悦ばせるだけよ」
気の強いエメリナは、民衆に言い返そうとするが、次女のリアンナに止められる。
彼女が言ったように、エサである女たちは、ただ耐えるしかない。ヘタに言い返せば、それは民衆の嗜虐心を煽って罵声が激しくなるだけなのだ。
ご同業の女囚の引き回しを数多く見てきたエメリナも、それは承知していた。
「……」「……」
女囚らは怒りと屈辱に震えながらも、口を閉じて、投げつけられる罵声と小石・ゴミに無言で耐えながら歩く。
いかに罪を犯したとは言え、若い女に必要以上に恥辱と痛苦を与える酷い仕打ち。結局これは、犯罪者への懲罰を口実にした、民衆への好色かつ嗜虐的なサービスなのであった……。
このようにして、一行は街の主要な通りを歩き回り、3人の女をさんざ見世物にしてからようやく刑場へと向かうのだった。
(処刑前の嬲りのこと)
一行がベルトランに到着したとき、彼女らを待ちわびていた群衆は2千人。ベルトランの満員札止めである。
銀貨二枚という、庶民にとっては決して安くない入場料を払ってでも、女盗賊たちの公開処刑を観たいという連中であふれかえっていた。
また、処刑場裏手の囚人用出入り口の付近には、中に入場できずにあぶれた連中が、せめて女囚の姿だけでも見ようと、まるで『入り待ち』のように一行を待ち構えていた。
「おおッ!?来た来た。噂の盗賊姉妹のご到着だぜ。三人とも美人だな」
「ああ、悪くなねえ女どもだな……ちぇッ、入場券を買いそびれたのが悔やまれるぜ」
「畜生!!雌犬ども。吊るされた手前らの惨めなダンス、見たかったぜ!」
若い女の処刑見物という、当時最高級の娯楽にあぶれた鬱屈を当の女囚たちにぶつけるとことで、少しでも溜飲を下げようとする『入り待ち』の連中。
ここでも小石やら生卵やらをぶつけられ、汚され辱められる三人は小さく呻くような悲鳴をあげるだけ。
「くッ……」「うぅぁぁッ……」
そして、罵り声と小石と卵の舞う中を、歩かされて施設内に入らされるのだった。
ベルトラン処刑場内に入ると、一行はまず、建物の中の控室のような場所に通され、戒めを解かれた。そして、屈強な警備兵数名の手によって、盗賊衣装を脱がされる。
「ひっ……ま、また犯される!?嫌ッ!やめてッ!」
「ああぁ?!ち、畜生……何すンのよッ?!このゲスどもッ!」
投獄中ずっと、機会がある毎に下級役人らにレイプされてきた虜囚らは、今回も当然のごとく凌辱されると思い、必死で抵抗する。
「処刑前に、その汚れた身体をきれいにしてやろうってだけだ。無駄な抵抗すると、本当に輪姦するぞ?」
暴れる彼女らに、役人の長(処刑執行官)が苦笑しつつ言う。
濡れた手拭いを持った身分の低そうな女が六人、一人の女囚につき二人がかりで、その身体を拭いてやる。
汚れがかなり落ちたところで、侍女らのうち三人が、手拭を剃刀と剃毛用クリームとに持ち替えて、それぞれの女囚の前にしゃがみ込む。
「な、何を……」
その意図を察したリアンナが、首を左右に振って身体を仰け反らせるが、警備兵に押さえつけられる。
「大人しくしてないと、大事なところを怪我するぜ」
「なぜ、こんなことをする必要があるのよッ?!」
「ふふふ、罪を犯した女を徹底的に辱めて、一片残らず尊厳を剥ぎ取って見せしめにしてやるのが、俺の仕事だからな」
その言葉は、あながち嘘ではない。王国の法により、処刑執行官は処刑される女囚の処遇の全権を与えられている。その権限は『女囚を辱め貶めて、その惨めな姿を民衆に見せ付けることで社会秩序を維持する』という目的の為に行使されるのだ。
無論それは建前であり、実際のところは、何かと不満の多い民衆へ提供する娯楽としての処刑を、より無残に、淫靡に、センセーショナルにする為の行為なのだが。
侍女たちは手馴れた様子で剃毛クリームを塗り、冷たい剃刀を女囚の肌に当てる。
「ひぃッ……」
その冷たさの為かそれとも羞恥の為か、誰かがあげた悲鳴を無視して、三人の恥丘に当てられた剃刀が音を立てて滑り始める。
ジョリッ、ショリリッ……ジョッ、ジョッ、ショッ……ジョリッ
「う、うくッ……」
年若いマリーカなどは、目尻に涙を浮かべて蹂躙されていく自分の茂みを見詰めている。
気丈なエメリナですら、無残な禿山となった自らの恥丘を見て、情けない声をあげた。
「ああッ……こ、こんな」
何もかも奪われた三人の哀れな女囚は、その秘部を隠していた陰毛という最後の所有物までも奪いとられてしまったのである。
そして三人は、再び手錠に腰縄を掛けられた。全裸で、ツルツルに剃り上げられた恥丘すらも曝け出すその姿は、情けなくもあり淫猥でもあり、滑稽でもあった。
「用意できたようだな。では、処刑場に移動だ」
執行官の言葉に、リアンナが食い下がる。
「ちょっと待って下さい。このままの姿で?まさか素っ裸で歩いて行け、と」
「あ?……まあ、良かろう。お上にも慈悲はあるさ」
苦笑した執行官は、侍女に命じて、三人の腰に簡素な布を巻きつけてやる。その様子を見ながら、彼は皮肉っぽく笑う。
「『女の処刑は素っ裸で』ってのがベルトランの規定*なんで、どうせあとで剥ぎ取るんだが、な」
*この当時のベルトランでは、処刑時は全裸が原則であった。
三人は、全裸の身体に腰に布切れを一枚巻きつけられただけの、乳房すらも曝け出した屈辱的な姿で、屋外の処刑場に引き出された。
女賊たちの姿が見えた途端、残酷で無慈悲な期待を抱きつつ彼女らを待ち侘びていた見物人から、歓声が弾ける。
「いよッ!待ってたぜ、雌猫ども。吊るされてブザマに踊る準備は出来てるかぁ!?」
「すでオッパイ丸出しとは、サービス良すぎだろ。露出癖でもあるのか……それにしても、三人とも良いカラダだ」
「女盗賊なんて、普段の格好からして露出狂みたいなモノですわよ……あの一番若そうなのは、まだまだ肉付きが薄くないかしら?」
「いやいや、あのくらいがちょうど良いンすよ……ああ、むしゃぶりついて、さんざんにレイプしてやりてえなぁ!」
「だよな。どうせ吊るされてユルユルになっちまう尻孔と女陰なんだしよ、その前にオレらに下賜してくれンもんかね?」
「今回も業者に払い下げるみたいだから、屍肉の孔でよければタダでファックできるハズだぜ」
屈辱的な歓声に迎えられて、恥辱と不安と怒りに震える三人。
彼女らは(ここの女囚すべてそうだが)、尊厳ある人間とは見なされない。人間未満の犬猫、畜生としての扱い……そもそも『生物』としても見られていないかもしれない。民衆の日々鬱積する不満のはけ口、吐き出されるされる好色な嗜虐の受け口である便器のようなものだ。
否、見物客の誰かが言ったように、彼女らは死後、処刑された女囚の死体を加工する専門業者に払い下げられ、街角に置かれて数多の民衆にその死肉の孔を犯される。『便器のようなもの』などではなく、本当に『肉便器』となる運命なのだ。
「くそッ……ゲスども、めぇッ」
「ね、姉さん……私、私……」
民衆の悪意と好奇に満ちた歓声を受けて、さしもの女盗賊も、その辺の若い街娘のように震えている。
公開処刑場は、屋外にあり、直径が200mくらいの円形をしていた。その真ん中に処刑台が設置されており、その周りに簡単な柵が設けられて、見物人と処刑台を隔てていた。処刑台は木製で、一辺が6mくらいの正方形、高さは2mとやや高めであるが、これは後方の見物人からも良く見えるようにとの配慮である。
三人はその処刑台の上に登らされた。三人の眼前には、三本の縄輪がブラ下がっている。彼女らの首を括りその命を奪う為の、絞首索であった。
「ひぅッ……」
三人の中でも一番若いマリーカが、縄輪を見て顔を蒼ざめさせ、裏返った声を漏らす。
リアンナは声こそ上げないものの、眉を八の字に歪めて目をソレから反らせ、エメリナは縄輪から目を反らさず、まるでそれが仇敵であるかのようにキッと睨みつけた。
「ベルトランにお集まりの善良なる王国の民らよ、しかと見よ!これなる女どもが、盗賊エメリナ、同じくリアンナ、マリーカである。本日これより、ベルトランにて絞首刑となる!」
執行官が、集まった観衆に向かい高らかに宣言すると、彼らはそれに応えて大歓声をあげた。
「ほおおぉっ!!待ってましたぁ!!悪辣な女罪人に正義の鉄槌を!!恥知らずな牝豚どもを屠殺しろっ!」
「雌猫シーフの醜態、期待してるぜ!!テメエら、しっかりと足を挙げて、踊り狂うんだぜ!」
「ビッチども!すましてねえで、何か言ってみろよ!!まあ、何を言っても、そんなオッパイ丸出しのカッコじゃ、お笑い種にしかならんが」
無数の群衆が、口々に悪意と嗜虐を込めた言葉を、処刑台上の三人に向けて放つ。それは矢のように、女たちの心を撃ち、彼女らの恥辱・恐怖をいや増すのである。
執行官が合図すると、処刑の準備が始まった。警備兵が女囚らの周りを取り囲んで、手錠を外すと、麻縄で後ろ手に縛りなおす。麻縄は手を背中で固定して、さらに乳房の上と下とを通って、女たちの肉体に巻きついていく。
「く、むっ……」「はぁっ……くぅ」
胸部を圧迫されて、思わず声を漏らしてしまった女囚たち。剥き出しの上半身に縄掛けされ、乳房が上下から絞り出されるように緊縛され、歪にそして卑猥に形を変えている。
女囚を縛った警備兵らが、背後にまわってその腰布に手をかけた時、何をされるか悟った彼女たちは小さく抵抗の声をあげる。
「あッ……」「う……い、嫌ッ」
が、そんなモノは無視して、バッと布切れが剥ぎ取られて恥丘が曝け出されると、女囚らは羞恥に身体を硬くし、観客は歓声を弾けさせた。
「おおぉッ!!とうとう素っ裸か。『元』女盗賊が、今や惨めなモンだ……ン?全員、陰毛がみえねえな。剃りあげられちまったか」
「おい!牝豚ども!素っ裸にされ、アソコの毛までツルツルに剃り上げられちまって、イヤらしく緊縛されて晒し者にされたご気分はいがかかな~!?」
女たちの裸に狂喜し興奮する観客から、野次と拍手が鳴り止まない。
彼らは、単に女の裸が見られるからこんなに興奮しているのではない。酒場のストリップ嬢が全裸になっても、ここまで興奮しないだろう。
『颯爽と夜の街を荒らし回っていた女賊が捕まってベルトランに引き出され、惨めにその全て曝け出される』というその事実が、その落差が、彼らのサディスティクな性欲を刺激するのだ。
三姉妹のその首に、手際よく縄の輪が通されて、処刑の準備はほぼ完了をみた。あとは台から突き落とすだけで、縄輪が絞まって、女囚を絞め殺す。
突き落とされた時の落差が大きいと、衝撃で頚椎が折れて即死してしまうこともあるのだが、執行官らはそんな『ヘマ』をやらかすほど素人ではない。
「心配しなくとも、頚椎が折れて即死しないように、縄の長さは慎重に調節してある。窒息の苦悶をたっぷり味わいながら死にな」
そう言いつつも、執行官はすぐに処刑を開始しようとはしなかった。
「さて、それじゃあ……最後の仕上げだな。」
実はまだ、処刑の準備は残っていたのだ。まだこの程度では、女囚への辱めが足りない、と言うのである。絞め殺す直前の若い女を全裸にして、乳首も剃毛した恥丘も、何もかもを丸出しにして晒し者にしていてもなお、更なる屈辱を与えようというのか?
「手前らを、恥知らずな盗人女の最期に相応しい格好にしてやらないと、なあ?」
「今でも十分だろっ!これ以上、どう相応しい格好にするって言うのサ!?」
「も、もう……良いじゃないですか。私たちは嫌というほど、辱めを受けています!」
執行官の言葉に、たまらず抗議の声をあげる長姉エメリナと次女リアンナ。
だが彼は、その声を無視して、手に筆を持った三人の部下を、それぞれの女囚の前に立たせた。
「よし、手筈通り、書いていきな」
命令を受けた三人の部下は、いきなり手にした筆を女囚の剥き出しの肌に走らせる。
「い、いやっ?!何するの!」
「ちょ、ちょっとっ……何を書いてッ?」
抵抗したり逃げたりしないように、女囚一人につき二人の警備兵で押さえつけている。あっと言う間に、女たちの柔肌には、彼女らを辱める文字や図形が刻まれた。
例えば、リアンナの腹には『どうか私を吊るして!』
エメリナの下腹に『ご自由にお使い下さい』
マリーカの腹には『私の首吊りダンスを見て下さい!』
三人全員の身体のどこかに男性便所のマーク。
全員の右の太ももに『正』のマークが書かれていたが、これは遥か東国の文字で、レイプされた回数を示す記号である*
身体中に屈辱的な落書きをされた三人。
ただでさえ屈辱的な姿に、輪をかけて惨めにされた彼女らに、観衆の視線が突き刺さる。
すでに、ここまでくれば公開処刑と呼べるようなシロモノではない。罪を犯した女を辱め、おとしめ、嬲り抜いて徹底的に生き恥をかかせ、その上で縊り殺して死に恥まで晒させる、嗜虐のショーであった。
*この記述には若干の誤解がある
(マリーカの最期)
「さあて、どうしようかな?三人いっぺんに吊るすか、それとも一人一人か?」
迷う素振りをしつつ、処刑直前の女囚の様を観客に晒して見世物にしている執行官。あるいは彼の心情としては、自身が作成した三個の快心の芸術作品を、ギャラリーに提示しているようなものだったかも知れない。
信じられないほど濃密な悪意と嗜虐の中心で、三人の女は三者三様に処刑の刻を待つ。
末妹でまだ十代のマリーカは、真っ青になった顔に今にも泣きださんばかりの表情を浮かべ、足を極端に内股にして、膝はガクガクと震わせて立っているのもやっとだ。
次女のリアンナは、妹ほどではないにせよ、不安と恥辱に顔を曇らせ、その裸身を小刻みに震わせていた。
長姉のエメリナは、自分に嗜虐と好色な視線を投げつけてくる連中を、逆に睨み返していた。
「まずは……年の順だな。妹から逝ってもらうか」
そう言って執行官は、マリーカのすぐ後ろに立ち、その両肩を掴む。
「ひッ?!」
肩を押され台から落とされたとき、彼女の終わりが始まる。その絶望感と恐怖に、青くした顔に汗をビッシリ浮かばせて、ガチガチと大きく震えるマリーカ。
執行官はその剥き出しの細い肩を両掌で掴み、そこから直に伝わる彼女の震えを感じ、愉しんでいるかのようだった。
「待ちな……私から吊るしなよッ!年の順からって言うなら、私からだろッ!?」
恐怖に震えているマリーカの様子を横で見ていた長姉のエメリナが、たまりかねたように言う。
「やめとけよ。吊るされた二人の姉の醜態をさんざ見せられてから自分の番って、そっちの方が惨いだろう?最初に逝ける方が、まだ幸せってもんさ」
皮肉っぽい嘲笑とともに吐き出された執行官の悪意と揶揄に、言い返せずに歯噛みをするしかないエメリナ。代りに妹の方に向き直って、叫ぶように彼女の名を呼んだ。
「マリーカ!ああ、マリーカぁッ!」
リアンナも涙声で、妹の名を呼ぶ。
「マリーカぁ!ひ、ひどいわ。こんなのって……マリーカ」
それに応じるかのように、マリーカも二人の姉の名を呼び、助けを求めた。
「リアンナ姉さん!!私、死にたくないッ!!私まだ死にたくないよおッ!!エメリナ姉さん、助けてッ!怖いッ!!ひぁああぁッ!やぁッ、ヤダヤダヤダああぁッ!!」
「マリーカ!怖くなんかないわ。私達もすぐに逝くから!」
「マリーカ、ごめんなさい。何もできないリアンナ姉さんを許して……」
互いに悲痛な声でに呼び合う姉妹。
「おっ、さんざもったいぶってたが、いよいよ吊るすか!一番若えのからヤルみたいだな」
「さっさと吊るせよ!こっちは待ちきれずにさっきからビンビンで、もうイっちまいそうなんだぜ?!」
「うぅおおおおぉぉッ!!吊るせ!!早く吊るせぇッ!!ビッチ盗賊の首吊りダンス、早く見せてくれよおおぅッ!」
三姉妹は、互いに1mくらいの近い距離で立たされているのに、呼び合う声が大歓声に掻き消されそうになる。それほどまでに凄まじい悪意と嗜虐の大歓声と熱狂が、刑場を包んでいる。
見物客の男の中には、興奮のあまりズボンを下ろして、屹立した陰茎を握り締めて、マリーカが吊るされるのを今か今かと待ちわびている者もいる。吊るされた彼女がもがくのにあわせて、ソレを扱いて溜まった欲望を吐き出そうという意図なのだろう。
「こ、こんなぁ……こんな酷い、酷いよぉッ……嫌だ、あああ……」
「それじゃ、そろそろ逝こうか?覚悟キメな……おらよッ!と」
観衆の嗜虐的な期待を一身に受け、怯えてすすり泣いていたマリーカの肩を、執行官が勢い良く押して、台から突き落とす。
「ひいいぃぃッ……はぎぃええぇッ!?」
落下していくその身体を、首に巻きついた縄が絞られて、空中で留める。濁った悲鳴を喉の奥から絞り出し、両足が失った足場を求めるかのように、虚空を激しく彷徨った。
「ああぁッ!?マリーカぁッッ!!」「い、いやああッ!!」
エメリナとリアンナが悲鳴をあげる。だがそれは……
-ウゥオオオオオオオッッ!!!!!-
観客らの上げる爆風の如き大歓声が、彼女らの声を掻き消した。
「よっしゃああああぁっ!!待ってましたっ!!盗賊娘の惨めなダンスショーの始まりだ!!」
「牝シーフ、素っ裸で吊るされてどんな気分だ?!……ほら、もっと足挙げろや!!」
「もっと激しく踊れ!!ほら、イヤらしくケツ振って俺らを楽しませろ!!」
絞られた絞首索が彼女に更なる苦悶を与え、その動きが激しくなっていく。
くしくも観客の期待に応えたかのように、足を高く上げ、腰をくねらすかのような動きで激しくもがく。まだ少女らしさの残る、愛らしいその顔は大きく歪み、口を大きく開けて眼を見開き、その苦悶の強さを如実に訴えていた。
「んんぬんぎぎぎぃぃッ……だっ、だずげぇ……がぁげぇッ!……ぐる、じっ……んげごぼぉッ!」
空中を舞いもがきながら、その苦悶に満ちた最期の哀れな有り様を、大勢の見物客に晒す。
二人の姉たちに比べれば未発達ながらも、そこそこの大きさの乳房を振り乱し、剥き出しの白い尻肉を揺らす。盗賊稼業で鍛えたスラリとした脚を激しくバタつかせると、陰毛を剃りあげられて無防備になった恥丘から女の最も大事な部分が見え隠れしている。
「おごぉぉッ……だず、でぇぇッ……だじげ、ぇぇれッ……んがぉッ……おぇがびぃッ……だず、げげぐッ!」
濁った声で哀願を漏らしつつ、助けを求めるように視線をさ迷わせ、二人の姉たちを探す。その顔は苦悶と恐怖を刻みつけ、大きく歪んでいた。
「マリーカッ!!マリーカッ!!」「ああっ!マリーカぁアアアッ!!」
姉たちの悲痛な叫びは、歓声と罵声と嘲笑にかき消され、ほとんど聞き取れない。
「はははッ!期待通りに足挙げて、マンコ丸出しにして踊ってくれてやがるぜ……しかし見ろ、ひでえ面になってきて、惨めなモンだ。勃ったチンポもヘタっちまいそうだよ」
「いやいや!ああいうブザマヅラじゃねえと、俺は興奮しないんだ。もっと惨めなアヘ顔晒してくれよ!マリーカちゃんのみっともないアヘ顔思い出して、後で何度も何度もオナニーしてやるからサ!」
「こんな下品な殿方のマスカキのネタにされながら死ぬなんて、本当に女シーフって、ゴミみたいな存在よね……あらあら、いやですわ。あんなに腰振りたくっちゃって、はしたなくて浅ましいこと!」
「そんな若い身空で素っ裸で吊るされて腰振って、俺らのオナペットにされながら死んで逝く気分はどうだ!?さぞや恥ずかしくて、辛くて、情けないだろう?」
若い女の恥辱と絶望と苦悶の様を見て喜ぶサディスト達に、その最期を見詰められているマリーカ。その死には、尊厳とか安らかさなどというものは、一切許されない。
だが、ある意味で幸福なことに、彼女の意識はこの時点ではほとんど消失しかかっており、自らの悲惨な状況を感じることはできなくなっていた。
「あぁ……ぁおぁぉぅぅ……ぃぇぁっ……」
大きく開かれた目は焦点を失い、おそらくその眼は何も映してはいないであろう。同じく大きく開いた口からは、わずかな呻き声と一緒に、泡と化した唾液を大量に噴き出している。激しかった苦悶の足掻きが、段々と弱弱しくなってきた。彼女の『終りの刻』が近づいているのだろう……そう思われた時
びくんッ!びくびくびくんッッ!!
突然、再び激しく肉体が痙攣しだす。その死に逝く肉体が、最後に残ったエネルギーを全て吐き出してしまおうとしているかのような激しい肉体運動だったが、それも徐々に弱弱しくなっていく。
ブシャアアアァ~ッ!
音を立てて、股間から黄色い液体が迸らせる。括約筋がその役割を果たせなくなり、尿道が緩んで小便を漏らしたのだ。空中で身体をもがかせながらの失禁は、その液体を辺り中に撒き散らすこととなった。
「おおおォッ?!ついにションベン漏らし始めたか……っにしても、派手に撒き散らしやがって!汚え女だ」
「いいぞいいぞ、マリーカちゃん!分かってンだろう?次はクソだぞ。期待してっから、さっさとヒリ出せよ!」
その期待に応えたワケでもあるまいが、ほどなく脱糞の醜態も見せるマリーカ。肉門が決壊し、ブリブリッと音を立てて、白い尻から黒ずんだ糞便を吐き出す。
「ひっでえな、オイ。可愛い顔して、黒々としたデカいのを漏らしやがって!この恥知らずの雌犬が!」
「おお、ひどいひどい……こんな大勢の目の前で糞尿撒き散らすなんて、本当にビッチシーフの死に様って、最悪ですわ!」
観衆の罵声も、その耳に届いてはいなかった。糞塊を吐き出したマリーカの肉体は、急速に動きが鈍くなってくる。
「……」
もはやその口からはうめき声も出ず、ただ白い泡を吹き出しているだけ。あどけなさを残した可愛げのあった顔も、完全に白目を剥き、舌を長く突き出した惨めなアヘ顔となり、完全に脱力した肉体はブラブラと宙に虚しく舞っている。
マリーカの生命活動と比例するように、その興奮を鎮静化させていく観衆。
彼らの前に執行官が進み出て、吊るされたマリーカの傍らに立つと、大袈裟な素振りでその首筋に手を当てて脈を計ると*、大声で宣言する。
「女盗賊マリーカは死んだ!正義は執行されたのだ!」
宣言を聞いて再び群集の興奮が高まり、拍手と歓声が沸き起こった。
「おおおッ、この世の悪がまた一つ滅んだ!お見事な処刑でしたぞ、執行官殿!!」
「王国万歳!!ベルトランに栄光を!」
歓声と拍手が沸き起こり、執行官とベルトランと国家を称賛する声があがるのは、いつものこと。
普通ならここで女囚の処刑は完了、となるのだが、この処刑においてはそうはならなかった。
「それでは、お集まりの良民諸君に、この女が確実に処刑されたという証人になって頂こう!」
そう言うと、執行官は部下に命じてロープを巻き上げて、吊り落とされたマリーカを自分と同じくらいの高さにまで引き上げた。そしてその身体を掴んで観衆に対し背を向かせると、恋人を抱擁するかのように彼女の身体に両手を巻きつけ、尻の辺りに指先を置いた。
おおおおッ!
と、執行官の意図を察した一部の見物客(年季の入ったベルトラニストたち)が歓声をあげる。
「お集まりの忠良なる王国民の諸君!女賊マリーカの処刑完了の証、とくと御覧あれ!」
そう言うと、マリーカの尻肉を両手で掴んでぐいッと割り開く。
尻肉の奥に大事に隠されてきた、最も恥ずべき孔が……だらしなく括約筋が弛み切り、ポッカリと大穴を開けたマリーカのアヌスが、衆目に曝け出された。
「おおおおぉッ!!肛門が開き切っている!間違いなく死んでいるな!」
「正義は執行されたぞ!俺たちが証人だ!!」
この芝居がかったやりとりは無論、女囚の処刑を彩る為の演出の一つにすぎなかった。
縊死体は全身の孔という孔が開く。よって、女囚が完全に死亡したという証拠に、その肛門を曝け出して観衆らに検分させる……*2
そんな建前の元に、女囚の排泄器官すらも晒しモノにして徹底的に辱めて、見物客を愉しませようということなのだ。
「やぁッ!!やめろッ!!そんなこと……そんな酷いこと、やめろッ!ゲスがああぁッ!!」
「ああぁッ!なんてことをッ……やめてあげてッ!!い、妹の身体をいたぶって、辱めないでッ!」
姉二人の哀願など、聞く耳持つ者など一人もいない。
彼女らの妹に、興奮と劣情に満ちた、下品で激しい罵倒を投げつけ続ける。
「ヒュー!ヒューッ!!とうとうケツの孔まで広げられて、俺らにしっかり晒されちまったな!?マリーカちゃんよォ、恥ずかしいか!?悔しいかぁ!?」
「うっわぁッ……アヌス広げすぎですわよ、あのビッチ。拳くらいなら入りそうなくらいの大穴が開いてますわ……ほんっとッ、女シーフなんて最低ですわね!」
「恥ずかしい孔まで曝け出して見世物にされて、テメエは本当に恥ずかしい存在に成り下がっちまったなあ?!あとは俺らが死肉便器として、大事に使ってやるよ!」
*この時点では蘇生する可能性も十分にあるし、ただの儀式(パフォーマンス)である
*2同上、ただのパフォーマンスというかサービス
(次女の醜態)
「うっ、ううぅあああぁぁっ」
「畜生ッ……よくも、よくもッ」
舌を垂らして白目を剥き、全身の孔という孔を弛緩させて様々な汁を垂れ流して虚空に揺れるマリーカ。その無残な成れの果てを、衆目に余すところ無く晒している。
無残な妹の縊死体を前に、二人の姉は怒りと悲しみ、無力感と屈辱に肩を震わせて、嗚咽する。
だが、二人にもすぐに妹と同じ辱めが待っているのだ。
「さて、お次は……年の順で、リアンナ。お前の番だな」
言いながら執行官は、リアンナの後ろの立ってその肩を両手でしっかりと握り締めた。
「ひゥッ?!」
極限の恐怖の為か、呼吸筋も含めて全身の筋肉が収縮し、しゃくり上げるような声をあげる。
「リアンナッ!?……もう、やめてッ!!これ以上私の妹たちにひどいことを……」
「だ、大丈夫よ、姉さん。心配……し、しないでッ」
震えながらもリアンナは気丈に姉を制すると、蒼ざめた顔を執行官に向けて、どもりながらも糾弾の言葉を投げつけた。
「あッ、アナタたちは、ゲスな卑劣漢よッ……と、捕えた女を弄んで、愉しむような連中の思い通りになんて……私は、ならないッ。命乞いなんて、しないからッ」
「ほう、そうかね?俺にはそんな風には見えねえんだが……今にも土下座でもしそうな顔してるぜ?リアンナ」
執行官が冷笑まじりに揶揄するのも無理はない。歯をカチカチと鳴らし、膝をガクガクと笑わせているリアンナのその言葉は、誰が見たところで虚勢以外の何物でもなかった。
野次馬たちも、そんなリアンナの様を見て、嗜虐心を高め、野次を激しくする。
「あいつ、妹よりもビビってんじゃねえの?小便チビっちまいそうな面してやがるぜ」
「それどころか、糞まで漏らしちまいそうだ……おいッ!リアンナ、まだ漏らすなよ!肛門しっかり締めとけや!」
「どうせ漏らすにしろ、台の上でより吊るされて空中で撒き散らした方が、派手で惨めさが際立ちますわよね」
「んじゃ、始めるかね」
罵声の中でも淡々と、しかしその内面にたっぷりの嗜虐心を隠しつつ、執行官は絞首刑を執行せんとリアンナの後ろに立ち、その肩を掴む。
「ひぃぅッ!?」
触れられた瞬間、ビクッと大きく身体を震わせる。
あとはマリーカの時と同じように、肩を押してリアンナを突き落とすだけで、彼女の無残な窒息処刑ショーが開幕する。
「はぁッ……はぁッッ……はふぁッ!……はッ、はッッ……ははひぃッ!」
無残で羞恥に満ちた死を前にして、全身を熱病患者のように震わせて、息を荒げさせる。
助けを求めるように視線を彷徨わせると、哀れに吊り下げられている妹の死体が視界に入った。
-ドクンッ!-
心臓が跳ねんばかりに脈打ち、息が更に苦しくなり、全身から汗が大量に吹き出る。
「ひぃッ!?……うあぁぁッ」
その無残過ぎる死体は、リアンナの心の中の『恐慌のスイッチ』をオンにした。執行官たちへ怒りや妹への憐憫と言った感情で押さえ込んできた恐怖が、一気に爆発する。
「いやあああぁぁッッ!!やだぁぁッ……い、嫌です!お願い、やめてッ!後生だから吊るさないでぇッ!!」
突然、大声を張り上げて命乞いを始め、身体をよじって暴れだすリアンナ。
妹の無残すぎる最期は、彼女からプライドや誇りを奪い去るに十分であった。
「あぁ……あぁっ、あんなブザマな姿になりたくない!あんな……あんなにお尻の孔ユルユルに開いて……あんなみっともないアヘ顔晒して死ぬのはやだああああぁぁッ!!」
いや、プライドだけではない。それ以上に彼女が大事にしていた、家族愛とか妹に対する思いやりといったモノも、消失させてしまった。
その死体を凝視しながら、そうとは意図せずにマリーカを侮辱する言葉を吐き続けて、命乞いを繰り返した。
「お願いですッ!!マリーカみたいになるのは嫌ぁあッッ!!殺さないでえぇッ!!あんな汚くて惨めな死に方、したくありませんんッ!!マリーカみたいに踊りながらウンチ撒き散らすだなんて恥ずかし過ぎる最期、絶対やだああぁッッ!!」
縊死という現実を見せ付けられぬまま死ねたマリーカよりも、リアンナの恐怖は大きかった。
妹の無残で屈辱的な死に様を眼前で見せ付けられて、その直後に自分もそのような目に会わされるというのだ。若い女がその恐怖と恥辱を爆発させても、無理はないかも知れない。
だが見物客たちは、リアンナが恐怖と恥辱に狂乱する様子を見逃さず、あざ笑い罵倒する。
「見苦しいぞ、リアンナ!テメエも妹と同じように、惨めに踊ってイキ面晒して、ケツの孔広げて死んで見せろや!!しっかり見ててやるぜ!」
「もちろん、マリーカよりもデッカい糞をひり出してくれるんだろうなあ?!妹ばっかりに死に恥をかかせるんじゃねえぞ!」
「俺はお前の処刑を、一番愉しみにしてンだよ!そのムチムチの身体をイヤらしくクネらせて、卑猥に踊り死んで見せろよ?」
執行官も、女囚の命乞いなど無視してさっさと突き落せば良いものを、あえて留めてその醜態を衆目に晒し続ける。
「見物の良民たちも、ああ言っているぜ?諦めて、そのキレイな顔を泡と鼻水塗れの汚れアヘ面にして、踊り狂いながら逝ってくれや」
「あああぁぁッ!?そ、そんなの嫌ぁッ!!ヤダヤダッ!死にたくッ、死にたくないですッ!!どうかお慈悲をッ!!お許しをぉッ!!私ッ、本当は……ホントは盗賊なんてやりたくなかったのッ!!」
涙を流して大声で命乞いを叫びながら、身体を捻って首から縄輪を抜いて逃げようとするが、兵士らに組み付かれてそれも許されない。
「いやだッ!!死にたくないッ!!死ぬのは嫌ぁッ!!アヘ顔になって、汚くなって、何もかも垂れ流しで死ぬなんてッ。ああぁ……ああ、せめて斬首に……首を刎ねてッ!」
「観念するんだな。テメエみたいな女シーフが斬首刑なんて、天地がひっくり返ってもありえねえよ*」
*当時の王国刑法によれば、斬首刑は貴族と一部の上級市民のみ(ただし男子に限る)に許された刑である
「ま、待ちなよッ……そのコは斬首にしてあげてッ!」
二人の間に、長姉エメリナの力強い声が割って入った。
「リアンナは……そのコは、本心じゃあ盗賊なんてやりたくはなかったの。それは本当よ!私と母さんに付き合って、イヤイヤ手伝ってただけで……」
「そんなそっちの事情なんて知ったことじゃねえ。それに言っただろう?賎しい女シーフを斬首にするなんて、仮に俺が許しても、王国の法が許さねえよ」
「じゃあ、ロープを長くして、楽に逝けるようにして……そ、その代わり、私をッ、私は……う、牛裂きか火炙りで、処刑して……そ、その条件なら……」
ロープを長くすれば、落下時の衝撃が増大し、頚椎が折れて即死する確立が上がる。囚人に苦痛と恥辱を与えぬこの方法は、執行官が温情として採用することが『ごく稀に』あるが、そのレアケースのほとんどは囚人家族の高額な袖の下あってのことだ。
金など用意できぬエメリナは、別の取引として自らが酷刑の極みとも言うべき牛裂きか火炙りになる、と言い出したのだ。
「ふむ、面白い提案だが、今さら処刑法を変更する時間は無いな。しかもそれが手間のかかる牛裂き火炙りっていうんじゃ、どだい無理な話だ」
「ね、姉さん……ばッ、バカなこっ、ことを……いぃッ、言わない、で……ひッ、火炙りに……なッ、なる、なんてッ」
ガタガタと震えるリアンナが、口の筋肉が麻痺したかのように激しく吃りながらも、姉を制止する。
いくら自らが恥辱と苦悶に満ちた最期を免れる為とは言え、姉を苦痛に満ちた酷刑に送り込む、などということができようハズもない。
「ごッ、ごめん、なさい。この期に及んで……取り乱してッ、しまって……あのコ……マリーカに、笑われて……しッ、まうわね」
恐怖と恥辱に、顔を真っ青にして全身を震わせつつも、姉に無理に笑顔をつくって見せると、執行官に向き直る。
「か、覚悟を、決めましたッ……どうぞ……つッ、吊るして、下さ……ぃッ」
「そうだな。お前の惨めな命乞いをいつまでも聞いていたいところだが、そうもいかん」
執行官が、リアンナの両肩に置いている手に力を込めると、自らの『終り』を悟って悲痛な叫び声をあげる。
「あああぁぁッ!?……はっ、早くッ!!早くしてッ!!早くっ、吊るしてッ!」
自分の死刑執行を必死で急かしているのは、さっさと始めてもらわないと、再び恐怖に捉われ、見苦しく暴れて命乞いを再開しそうだったからである。
「そんなに欲しがるンじゃねえよ。ホラ、お望み通り、イカせてやる……ぜッ!」
執行官はその顔に酷薄な笑みを浮かべて、リアンナの身体を台から突き落とす……!
「いぃひゃぁぁッ……」
悲鳴をあげながら落ちていくリアンナの身体。だがすぐに、首に巻きついた縄がその落下と声とを阻止する。
「ふぎぇごぉッ!?」
落下を急に止められた身体が反動で大きく跳ね、絞られた喉が悲鳴の代りに濁った声を吐き出す。
苦しさと恐怖で目をいっぱいに見開き、顔をしかめて、空中でもがき始めるリアンナ。
その長身で肉付きの良い身体は、スレンダーな妹に比べると、吊られた時の『見栄え』が各段に良かった。
「凄えな!妹と違って、デカいオッパイがブルンブルンに揺れまくってやがるぜ……酒場の踊り娘のヌードダンスの何倍も卑猥だ!」
「なんて浅ましい姿なんでしょう。ホントにあの女盗賊、最低のビッチですわ。ホント、恥ずッかしいったらありゃしないわ!」
「ビッチシーフ!もっとはしたなく足を高く上げろ!お前の妹よりもイヤらしく踊ってみせろ!」
当然、観客らの罵声もより熱が入ろうというものだ。空中で無残に踊るリアンナを笑い者にし、その醜態に罵声をぶつけて、他人の尊厳を踏み躙る歪んだ快感に溜め込んだ鬱屈を晴らす。
「ぶぃぅッ……苦じぃぃッッ……ぶぎぐぅええええッッ!!助げぇでッッ……はぎぇぉッ!」
そんな連中の期待通りの無残な反応を-本人にその意志は無くとも-見せていくリアンナの肉体。
苦しさから口を大きく「O」の字に広げ、目を大きく見開いた、やや滑稽とも言える顔になってしまう。さらに口と鼻からは涎と鼻水が流れ始めて、無残さを際立たせる。
元々が端整な顔立ちの美人だっただけに、その落差の大きさが、一層に惨めさ醸し出していた。
無残なのは、顔ばかりではない。
縛られていない足は、自分の意志とは無関係に激しく跳ね上がり、剥き出しにされた股間の秘所まで見せている。狂おしく捻じりくねらせる上半身とあいまって、淫猥で情熱的なダンスを踊っているかのようだった。
「ぐぅべッ!……ぎゅぐぶぶぶぶうぅぅッ……がひぅッ」
喉の奥から苦悶に満ちた獣のような声が絞り出されて、大量の白濁の泡とともに吐き出され、鼻からは垂れ流される鼻水の量も増えて、口周りから顎にかけてを汚している。
全身の白い肌に苦悶の脂汗が浮び、日光を反射してテカテカと艶かしく光り、裸身を彩る。
覆う布も失く曝け出された大ぶりの乳房が、身体を激しくクネらせる度に、右に左にと大きく揺れる。タップリとした質量を誇りながらも、なめらかなラインを保っている尻肉も、乳房に負けじと激しく振りたくられ、まさに『ヌードダンサー』の如きだった。
「だぁッ゛……じ、げぇッ……だず、げッ……ぇぉごッ……ぐる、じッ……」
泡と鼻水にまみれてドロドロになった口で、この期に及んでまだ命乞いをするものの、その言葉は濁っている上に弱弱しく、大歓声に掻き消される。
「マリーカはあっさり逝っちまいやがったけど、姉の方は結構粘るなァ。まだまだ元気に足掻いてやがらァ」
「アウトローのクセに、縛り首にビビって命乞いするような見苦しい女だからなァ。生にしがみついてンのさ」
「まあその分、俺らに長い時間、娯楽を提供してくれるってワケだ……ホラ、見てみなよ。あのイヤらしくて無様な踊り!」
観衆の誰かが呟いた通り、吊るされてから5分は経っているのに、彼女の『ラストダンス』は、なおいっそう激しさを増していく。なまじ体力に優れていたリアンナは、妹よりも長い苦悶の時間を味わうハメになっていた。
「くッ……」
女囚の最期の醜態に狂乱狂喜し、誰もが異様な熱気に当てられた興奮のルツボの中で、唯一苦渋の表情を浮かべているエメリナ。顔を顰め、悲壮感と屈辱と怒りに頬を赤く染めているが、それでも顔を背けたりせず、妹の無残な最期の刻を見守っている。
彼女もそんな無残な光景など見たくなかろうが、三姉妹の長姉としての義務感から、その無残な死に様を見詰めているのであろうか。
「ふへへッ……エメリナよ。もうすぐお前の番だな」
「妹の死に様見せつけられながら、素っ裸で自分の処刑待ちするってのは、どんな気分だよ?」
リアンナへの野次で満たされている場内だが、そんな中でもエメリナへの野次も忘れない者がいるのは、流石にベルトラニストというべきか。
しかしエメリナは、そんな連中の言葉など無視して、キッと胸を張って直立不動の姿勢でいた。
そして、その視線の先には、踊り狂うリアンナの無残な姿が……
「ひぎぶぐぅぅッ……」
眼球がグルリと裏返り、完全に白目を剥く。口から吹き零れる泡の量が異常なほど増え、鼻からは粘度が濃いドロリとした緑色の鼻水が大量の垂れ流しになってくる。
その身体も、今までのような激しく暴れるような動きから、小刻みに震えるような痙攣へと変ってきた。
「おッ……こりゃそろそろだな」
処刑見物に目の肥えた連中は、その様態の変化を見ただけですぐに察知する……女囚の最期が近いことを。
「
あの様子じゃあ、もうすぐ逝っちまうね。もうちょっとアイツの最期の醜態を見ていたかったな」
「まっ、あのメスは長くもった方だよ……おおいッ!リアンナ、まだ聞こえてるかァ?テメエもうすぐ死ぬンだぜ!妹に会えるなあ」
女の死を予感し、この素晴らしいショーの終演が近いことを悟った観衆も、野次や罵声を激しくする。
下品な野次を浴びつつ死に逝く哀れな女囚に、このとき意識はあったのだろうか。
小刻みに肉体を震わせる痙攣で、そのムッチリとした肉がブルブルと震える様子は、淫靡であった。先ほどまでの、全身を激しくくねらせる動きと対照的に、乳房や尻肉を細かくブルブルと揺らしている。大量に噴き出した涎や鼻水も、小刻みな振動でアチコチに撒き散らされている。
「…ぅぅ、えッ……げぇ、ぁッ……」
最早、大きな声は出せず、苦しげな呻きを喉の奥から漏らすリアンナ。
歪んだ欲望の視線と罵声を裸身に浴びつつ、苦悶の中で息絶えねばならないという想像を絶するその恥辱は、ついに頂点を迎えた。
じょおおぉッ……
突如、ツルツルに剃りあげられた股間のスリットから、水しぶきを迸らせる。縊死に至る過程の一つ、失禁が始まったのだ。
ジョババババアアッッ!!ブジョジョジョボボボオオッッ!!
激しい水音を立てて、小便がまき散らされる。クルクルと回転しながらの失禁で、そこらじゅうにリアンナの排泄液がふりまかれ、哄笑と悲鳴と失笑が沸き起こった。
彼女の恥辱の頂点は、見物客らの喜悦と興奮の頂点である。
「ふはははッ!!とうとうションベン漏らし始めたか!こりゃ、ホントにもうすぐ死ぬなあ」
「しっかりと糞もヒリ出せよ!マリーカ以上のデカいのを、みんな期待してんだからなッ!」
「……カ、ッ……ハッ、ァッ……」
無残に白目を剥き舌を長く突き出した絞首アヘ顔を晒し、小刻みに肉を震わしながら空中で回転しながら、生命の灯を消しつつあるリアンナ。
だが、妹と同じく、その死に静謐さや安らぎなど一切許されない。そして、哀れな女囚の最大の恥辱の瞬間が訪れた。
ブバッ!ブホッ……ブビィッ!!
品の無い破裂音が、女の尻の間から響く。脱糞を思わせるような音だったが、それは放屁だった。
惨めな小刻み痙攣をしつつ、腸内のガスを音を立てて放つリアンナ。そして、ガスとともに、ついに彼女のもっとも恥ずかしいブツが、緩んだ肛門から顔を出す。
ムリムリムリュッ……
黒々とした、やや硬めの糞便が吐き出されてくる。
ムチムチとした白く美しい尻肉の間から、それとは対照的な黒い汚物がニュウッと伸びていき、ボトリと地面に落ちる。
「おおッ!!ついにクソ漏らし始めたぜ、アイツ!!黒々としたモノをヒリ出しやがって。恥知らずの牝シーフが!」
「リアンナ!!お前、こんな大勢の前で糞漏らして恥ずかしくないのかよ!?オラ!もっとしっかりケツの穴締めやがれ!!」
「ホンッット、嫌ですわねぇ!あのクソビッチ。あんなに肛門ユルユルにしてッ、恥じらいもなくアヘ顔晒して」
「それにしても、見事な一本便だな。40cmはあるんじゃないか?」
女囚の処刑というイベントの中でも最大の見せ場に、場内は一番の喧噪に包まれる。
ぶぶッ!ぶぶびびぃっ!!ぶりゅむりゅりゅうっ!!
その歓声と野次と嘲笑の嵐を一身に浴び、リアンナはもはや呻き声すら出さずに、小刻みなリズムで踊りながら肛門を緩ませて、堰を切ったように大便を吐き出し続けるのだった。
黒猫一家の処刑・後編その3
処刑直前
三姉妹の公開絞首刑もいよいよ最後の一人、長姉のエメリナの番となった。
「いよいよ、お前一人を残すのみとなったな……いったい、どんな死に様を見せてくれるかな?」
酷薄な笑みを浮かべながら、執行官が最後に独り残った女盗賊の後ろに立つが、長姉であるエメリナは、二人の妹たちよりも気丈で冷静な態度を保っていた。
「そんなに面白いモンじゃないわよ……さあ、早く吊るしてッ」
二人の妹の惨死に目尻には涙を浮かべ、顔色を蒼ざめさせてはいるが、執行官を横目で睨み、毅然として言い放つ。
そんな女囚の態度に、見物人達は不満と侮蔑の罵声で応えた。
「おいおい、もっと泣き喚いてくれないとツマンねーぞ!」
「妹二人は、しっかり踊って糞まで漏らして死んでみせたんだ。長女のお前は、妹以上の醜態晒して見せろ!」
「お前のみっともない命乞い、期待してるぜ……その虚勢も、いつまでもつかな?」
その声の通り、見物客たちは、女囚が惨めに命乞いするのを期待している。幾度と無く処刑されていく女囚を見てきた彼らだが、この土壇場で取り乱さない若い女など、極めて稀だった。気丈な態度を崩さないエメリナも、どうせすぐに恐怖と屈辱に負けて、取り乱して惨めに助命を請うだろう……。
だが、彼ら期待にエメリナは応えてやらなかった。その罵声を平然と聞き流しながら、傲然と剥き出しの胸を張る。
「ふんッ……時間の無駄よ。こちとら吊るされるの覚悟の上で、盗賊稼業やってたんだし、今さら助かろうなんて思っちゃいないわ」
その時、後ろから、執行官が吊るされた二つの死体を指差して、言った。
「強がるのもそのヘンにしておけ。見ろよ、あの二人の無様な姿。惨めなアヘ面も、弛み切ったケツの穴すらも衆目に晒して、吊るされてやがる。笑えるなァ?」
「あのコ達を侮辱しないでちょうだい……命まで奪われて、もう十分に罰は受けたでしょう?どうして、死に様まで辱められなきゃならないのよ」
「死体すら辱められるまで覚悟の上での、盗賊稼業だろ?今にお前も、あんなみっともねえ姿になるんだぜ?今はそんな凛としてる顔も、みっともねえアヘ面になり、尿道も肛門アヌスもユルユルだ。さぞ惨めだろうな?」
執拗に恥辱を煽る言葉をかけ、エメリナの気丈な態度を崩さんとするのだが、彼女が取り乱すことはなかった。
「ええ、きっと私もあんな風になるんでしょうね。この稼業を始めた時から覚悟していたことよ。私の最期を、存分に嘲笑うといいわ」
「マリーカとリアンナの汚らしい最期の醜態を見て、これから自分がそうなると分ってなお、その態度か、恐れ入るよ。アイツらは覚悟とやらもなく、泣き喚いて惨めに命乞いしてたじゃねえか?」
「あのコたちには、可哀想なことをした……まだ若い子達が処刑を前に怖がっても、しょうがないわ」
百人以上の女囚を恥辱の極みの中に処刑してきた執行官も、エメリナの態度の前に、肩をすくめて苦笑するしかなかった。
この女は『極めて稀』なケースの方だったらしい……こういうヤツに命乞いさせようとしても、確かに時間の無駄に終るだけだ。
「お前サンだって十分若いけど、大した態度じゃねえか?……それじゃ吊るすけど、せいぜいその態度を、最期まで保っててくれよな」
さっさと執行することにした執行官は、女囚をいつでも突き落とせるよう態勢を作った。
「……ッ!」
その瞬間、エメリナは息を呑む。動悸が一気に速まり、膝がガクガクと大きく振るえ、全身から汗が吹き出る。蒼ざめていた顔から一層血の気が引き、死者のそれのように蒼白になった。
「おっ!いよいよ吊るすか……だが、ちとタイミングが早いんじゃねえのか?泣き喚くまで待つのが、常道ってモンだが」
「そうそう、オラら、吊るされる雌犬のブザマで情けねえ命乞いを期待してるんだが」
「いや、あの女賊、たぶん命乞いなんてしねえぜ。大したモンなだ……こうなったら、せいぜい『ラストダンス』で楽しませてもらおうや」
青白くなった顔に汗をにじませて膝を小刻みに震わせてはいるが、命乞いの言葉や恐怖を訴えるようなことは言わず、どころか執行官と野次馬達を糾弾し始める。
「アンタたちッ!素っ裸にして、更には縛り上げた女を嬲って喜ぶなんて、ゲスもいいとこねッ!」
若い女にして、この死に臨んでの気丈な態度も、嗜虐に酔う野次馬にはなんの感銘も与えなかったらしかった。いや、どころかその気丈さに逆に嗜虐心を煽られ、一層罵声が激しくなる。
「ぎゃははッ!そんなゲスどもに、マッパに剥かれて死に恥晒すのは悔しかろう?お前の今の心中の無念を想うだけで、俺は3発はヌケるぜ!」
「畜生ッ!!チクショウぅぅッッ!!呪われろ!クソッ垂れのクズどもめッ!」
「ははッ、クソッ垂れはお前の方だろうが。俺たちクズ野次馬が見ている目の前で、『カンカン』をたっぷり踊って見せた挙句、クソ垂れ流せや」
「誰が……誰がそんなみっともない姿を見せるもんかッ!しっかり見てろ、クズども!!ブザマに踊り狂ったり、垂れ流しになんて、ならないぃッ!」
「ぎゃはははッ!!妹達は『ブザマに踊り狂って』『垂れ流し』で逝っちまったじゃねえかよ。お前も恥ずかしい妹たちに負けンなよ!」
「それでは、重罪犯エメリナの処刑を執行する!」
「ちくしょうぅッ!!さっさと吊るせよッ!テメエらが期待している醜態なんて、絶対に晒さ……ごひゅッ!」
強がりも半ばに突き落とされるエメリナ。重力に引かれ、縄の遊びまで自由落下し……
ギギュッ!
縄輪が首に食い込み、エメリナから呼吸の自由を奪う。
「ぐはぉッ!!ぢ、ぢぐ……じょぉぉッッ……がほぅぉぉッ……んげぉふッ!」
「はじまったぜ!!オラ、雌犬!踊れ踊れ!もっと足挙げて」
「エメリナさん、まずはダンスからどうぞ~。浅ましい女盗賊の惨めな踊りビッチダンスを、私達に見せて下さいね?」
だが、見物人の期待と予想とは裏腹に、そして彼女自身の宣言通り、首への強烈な圧迫感と窒息という二重の苦悶にも関わらず、吊るされた直後のエメリナは、多くの絞首刑囚が見せる激しい脚の動きを見せなかった。
「ぐぅぅッ……がぅぉッ……」
肉体の反射で起こる生理現象を、精神力だけで押さえ込んでいたのだろうか、喉の奥から濁った苦悶の声を漏らすも、足先はわずかに震わすだけ
女賊の意地
『首吊りダンス』『女囚の最期のの舞踏ラストダンス』『吊るされ女ハングドビッチのカンカン』……など、悪意と嗜虐が見え隠れする俗称で呼ばれるこの現象は、公開絞首刑の一つの大きな『ヤマ』だ。そんな見せ場にもかかわらず、派手な踊りを見せてくれない女囚に、見物人からは当然の如く不満の声があがる。
「おいおい、なにやってんだよ、エメリナ。もっと足挙げろや!テメエの女の孔ヴァギナ、丸出しにしろ!」
「品の無い牝囚の腰振りダンスを見せろよ!オラ、もっと足挙げろ!腰を振りたくれ!!」
「ぐ……っそぉッ……だ、誰が……アンダら、クズどもぃッ……あじぃ、挙げで、アダジの『女』を晒ず、モンかッ!」
吊るされて気道を強烈に絞り上げられているのに、聞き取りにくい声で悪態をつくエメリナの姿は、空中から直立不動に見物人たちを睥睨しているかのようだった。
「どこまでも気の強え女囚だな……凄え性根だとは思うが、つまんねえな」
「まったくだ。こっちは金払って処刑見物に来てんのに……こらあ、雌犬。シラけるマネしてねえで、諦めて足挙げて俺らをたのしませろや!」
「まあまあ、若いの、そう焦んなよ。意志の力で生理現象を押さえ込み続けるなんて無理だ……今にアレも、雌犬に相応しい姿を見せるだろうぜ」
おそらくは年季の入ったベルトラニストだろう、その見物客の言った予想は、すぐに現実のものとなった。
「ぁぁ……ぁぅッ……」
脳への血流の減少の為、一瞬だけ意識が朦朧となった。その瞬間、責め苛まれている肉体が強靭な精神の支配を放れ、勝手に動き出す。バタッ、バタッと前後に40度くらいの角度で足を動かすその様子は、全力疾走をする走者のようでもある。
(あッ……い、イヤだッ……こ、こんな……あ、私の足ぃッ……と、とまってぇ)
「おお、待ってました!とうとう足を挙げ始めたな……だが、そんなんじゃ足りないぞ!エメリナ、もっと威勢良く足挙げろや!」
「そうだそうだ!もったいぶってねえで、股が全開になるくらいまで足を跳ね上げて、マ○コ丸出しにしろ!」
首への絞りがキツくなってきて、すでに悪態も反論もまともにできぬエメリナは、苦しげに呻き。
「ふっぐッ……ふっぎぃッ……ご、ごんな……みっどもない……見ぜたぐ、なッ……」
だが、本人の意志とは裏腹に、エメリナの足は勝手にその動きを激しくし、足がヘソ付近まで跳ね上がる。
『走者』からついに『踊り娘』になる……場末のはしたないストリッパーではあるが。
足を挙げて腰をくねらせ、自分の女陰ヴァギナを見せ付けるかのような動きは、まさにストリップのようであった。
「見ろよ!とうとうマ○コ丸出しにして踊り始めたぞ。口ではあんなカッコいいこと言っておいて、実に惨めで滑稽だな!?」
「あんだけ大口叩いて、結局踊ってやがるじゃねえか……こらぁ!女盗賊。ダンスの次は脱糞ショーだぞ?!覚悟できてるかァ!?」
「さっきは『クソ漏らさない』って、大口も叩いてやがったな?せいぜい、しっかりケツ穴アスホール締めておけよ!」
「そうだぜ!大穴広げて吊るされてるブザマな妹達に、姉として『立派な女賊の最期』の見本を示してやんな!」
脳への酸素供給を断たれ、意識は朦朧としてくる。この時の女囚の心境は、完全に推測するしかないが、おそらく相当な屈辱感と悔しさに、心を焼かれるような思いであったことは、想像に難くない。
(くッ……悔しいッ!こんな、こんなゲス……連中に見世物の笑い者にされ……死ななきゃならないなんてぇ……)
暗くなっていく視界の片隅に、ユラユラと動く二つの影が映る。それが、吊るされて虚しく揺れる妹達の骸だと悟ると、消えかかっていく心の中に、恐怖と恥辱と怒りの感情が沸き起こってきたであろう。
(ああぁッ……畜生ッ……私も、あんな風に尻をポッカリ開けて、死んじゃうのかぁ……リアンナ、マリーカ、姉さん悔しい、悔しいよッ……)
脳への血流が激減すると、その機能も低下していき、視覚聴覚嗅覚といった五感が極端に鈍くなってくるものだ。この時のエメリナも、おそらくは自分の周りの状況が認識できないくらいまで、感覚機能が落ちていたであろう。
(あ、ああぁ……静か、だわ……それに、暗い、わ……)
大歓声渦巻く刑場も、聴力が激減したエメリナにはほとんど届かず、驚くほどの静寂があった。視界も今では、ほとんど失っていた。その中で、たまに彼女の耳に入ってくるのは、屈辱的な見物客の煽り。
「……リナッ……んな足挙げ……えの恥知らずな穴が丸見……」
「……んな惨めなアヘ顔……恥ずかしくないのかし……」
「……ビクビクッて腰振って……たないエロダンス踊りやが……」
そんな声によって、エメリナは今の自分の状態を悟らされる。
(ああ……わ、私いま……相当ぶざまで……恥ずかしいこと、なってンだろうなァ……)
そう、この大勢の人間がいる刑場の中で唯一、エメリナ自身だけが、自分が晒している無残な様相を知らなかった……焦点の合わぬ目を、ギョロリと大きく見開き、舌を突き出している無残な表情を。だが、これまで公開処刑を見てきた経験と、観衆の声とで、自分がどういう醜態を晒しているのか、ほぼ想像がつく。
(あ、あぁ……きっと私、足……大きく、挙げ……股間、全開に……して、恥ずかしいトコ、丸晒しに、してンでしょ、ね……)
(くッ、悔し……は、恥ず……い……)
長姉の最期
わあああぁぁッ!!
うおおおぁぁッ!!
場内を怒号のような歓声が包んでいた。悪意と嗜虐と好色の暴風の中心にいる女囚は、すでに動いてはいない。見開いた目は虚ろに宙を見詰め、だらしなく半開きにした口からは、舌を突き出している。
さきほどまでのエメリナの苦悶の表情と、はしたない足掻きに、観客は興奮した。そして今は、弛緩しきった表情と、力ない四肢に欲情する。
最期まで気丈な態度を崩さず、凛とした顔で命乞いもしなかった彼女だが、吊るされてしまっては苦悶に顔を歪めながら踊り狂い、最期にはみっともないアヘ顔を晒す。その落差がまた、観客の嗜虐心をそそるのだ。
そして、観客の嗜虐を最もそそる女囚の醜態は、排泄物の粗相である。肉体のコントロールを失い、女としての尊厳と誇りを失い、最も恥ずべき内容物を自分の身体から吐き出して見物人に晒す。
これ以上の落差、あるいは醜態があろうか?そしてエメリナもまた-気丈で凛とした態度を崩さなかった彼女であっても、また-その醜態を回避することはできない。
じょぉっ……
じょぼぼぼおおおぉぉッッ!!
女の膀胱から、完全に弛緩した尿道括約筋をすり抜けて、黄金色の熱い体液が体外へと迸る。
「おおおぉッ!?あれだけ威勢の良いこと言ってたけど、とうとうションベン漏らしたな」
「いやでも、あのエメリナさんのことだ。脱糞は我慢してみせるかもしれんぜ?」
「だらしなくジョバジョバ漏らしやがって……オイコラ!せめてクソは我慢してみせろ!!ケツ穴アスホールしっかり閉めてろ!!」
ぶりッ……
ぶりゅりゅ!!むりむりりいぃぃっ!!
屈辱の罵声の中、エメリナの肛門括約筋も完全に弛緩する。女の白い尻肉の間から、やや黒みがかった黄土色の糞塊が顔を覗かせ、ボトリと地面に落ちる。それに続いて、
ぶぶッ!ぼりゅッ!……
っと、大便を断続的に吐き出していくエメリナのアヌス。
その光景は、国家というシステムに逆らい、権力に抗ってきた女盗賊の完全屈服の瞬間とも言えた。そして、日々の圧政に苦しんでいる観客も、この瞬間だけは倒錯的な快感を爆発させることができるのだ。
「おひょひょひょおぉっ!!とうとうクソ漏らしたか。エメリナなら、ひょっとして我慢するんじゃないかって思ったのに……残念でした!!」
「キリッとした美人の、気丈なエメリナちゃんも、吊るされちまえばこの様かァ……幻滅だな~。ぎゃははッ!!」
「いいか!テメエら女盗賊なんて、いくらカッコつけててもタダの糞袋なんだよ!そのことを心に刻みながら、クソ撒き散らして死んで逝け!!」
吊るされたエメリナの身体は、縄のねじれによってクルクルと回転し、吐き出し続ける大小便を、辺り中に撒き散らす。そんな惨めな最期を晒す女盗賊を、民衆はいつまでも罵り続けるのだった。
- 2018/07/12(木) 16:03:00|
- 絞首刑
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