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私の願望

【散華】

【散華】

投稿者:小樫名八朗  投稿日:2016 6 8()

 

総官室のドアーが外からノックされた。

中国北部方面駐屯軍総司令官である橘中将が中から答えた。「入れ!」

「斎種穂花(さいぐさ ほのか)、入ります。」という声がして一人の将校姿の若い女性が扉を開けた。

女性は扉を閉めると司令官の方に向き直り、帽子を左手小脇に挟み直立して敬礼をした。

薄茶色の軍服の上着に大尉の肩章を付け、同じく薄茶色の膝より少し長めのスカートに膝下までの編み上げの長靴を履いている。当時の女性としては長身で百六十センチぐらいは有るだろうか。

卵形の小顔、少し茶色がかった肩が隠れるぐらいの長さの髪の毛を額の中央付近で無造作に両側に分け、

やや童顔の八頭身美人である。

「この度の仕儀、私が謝って済む話しでもないが、まずはこの通り。」

と橘中将は椅子から立ち上がり、大尉に向かって深々と頭を下げた。

「指令、頭をお上げ下さい。私はむしろ感謝しているぐらいです。」

と大尉は答えた。

当時は偵察衛星などと言う物が有るはずも無く、情報戦と言えばひとえに所謂スパイ活動に寄る物であった。

斎種穂花も特務機関に所属する将校の一人で、中国名を“穂 花”と名乗り華軍社交界の花形でも有った。

大陸には彼女以外にも数名の女性間諜が体を張って活動していたが、其の職務上華軍の情報は言うに及ばず、

自軍の浦の情報も知り得た為、脛に傷を持つ高級将校達から見ればこれほど煙たい者も無く、ほとんどが

敵に殺されるか、味方の暗殺により終戦までに名も無く散って行った。

斎種穂花にも暗殺命令が出ているのを橘中将は知り、たまたま本部に出頭していた彼女を不憫に思い司令官室に

呼び、その事を告げたのである。

そして、立場上“逃げよ”とは言えない為、ある作戦の指揮を執っていて名誉の戦死をしたと言う事にするから、何も言わずこの場で自決をしえほしい。と諭したのである。

 

橘中将は徐に引出しを開けると、そこから一対の衿章と肩章を取り出し机に上に置いて言った。

「此れがせめてものお詫びの印だ。」

それは少佐の章であった。

「戦死遺族一時金は尉官と佐官では格段にちがう。せめての親不幸の償いとしてくれ。隣の部屋を使用しなさい。」と言って、南部十四年式拳銃を取り出した。

穂花は薄笑いを浮かべながら拳銃を手にして弾奏に弾が実装されている事を確認した。弾は全弾入っていた。

この指令は少なくとも嘘はついていない、と思った。

穂花は弾倉を元に戻すと、橘中将の方に銃口を向けて構えて言った。

「何れにしろもはや私は用済みという事ですね。ここで指令を射殺して逃亡したらどう成されます。」

指令は眉一つ動かす事も無く言った。

「英雄として死ぬか、国賊として死ぬか、それはきみが決める事だ。だが、ここで私を殺したとしても君は生きてこの部屋を出る事は出来ない。

それに、君の事だ、拳銃の一つぐらいは隠し持っているだろう。撃つ気が有ればすでに撃っているだろう。」

穂花は「失礼致しました。」と言うと、拳銃を机の上に戻し、おもむろにスカートの裾を捲り上げると白い脚を露出させた。

そして左太股の付根の幅の広いフリルの付いた赤いガーターの内側に手を差し入れると、掌に入るぐらいの黒い

塊を取り出して指令の机の上に置いた。

「此れは何か。」

と指令は問うた。

「デリンジャーと言う米国製の護身用拳銃です。此れでも南部より口径の大きい弾が二発実装されています。

もう私には用の無い物です。指令に差し上げましょう。」

と言うと再度スカートを捲り上げ今度はガーターを 踝の所まで下げて、前に屈んで足首から抜き取り指令の机の

上に並べて置いて、

「此れもおまけにお付けいたします。米国では娼婦が気の有る男にガーターを送ります。」

と言った。

橘中将は、我々女間諜を軍部は其の程度にしか見てくれてはいないのか、と言うせめての抗議の皮肉と受け取った。そして沈痛な面持ちで言った。

「うむ、有り難く頂いておこう、そして、私が自決する時に使わせてもらおう。」

穂花は何かから開放されたような気持ちに成り、微笑んで言った。

「私も、お志、有り難くお受けいたします。椅子を拝借しても宜しいでしょうか。」

と言うと襟章と肩章を手にした。

「うむ、好きな所へ座り給え。」

と橘中将は答えた。

 

散華2

 

穂花は制服の上着の釦を上から一つずつ思わしげに外し始めた。それは恰も娼婦が男を誘惑する時の仕種であった。そして服を両肩から滑り降すと左の腕に掛けた。高級な絹地で作られているのであろう、光沢の有る真っ白な

ブラウスが目に飛び込んできて将軍は思わず目を細めた。

穂花は将軍の真ん前の両肘掛けの付いたソファーに将軍の方を向いて深々と腰を下ろした。

穂花のお尻はソファーに沈み込み、窓から入って来る明るい光が一瞬股の奥を照らした。そして、将軍はそこに

黒い物を見た。こやつ不敵にも履いていないな、と思った。

穂花も将軍の視線がそこに有る事を意識し、

「近くに来て観音様を拝みになりますか。」

と言って両足を大きく左右に広げた。

今度は穂花の股間が諸に将軍の目に飛び込んできた。黒い部分は上の方だけで、股間の部分は奇麗に剃り上げられている様である。少し黒ずみかかったピンク色の筋が臀部の方まで続いているのがはっきりと見て取れる。

昔の遊女は男の一物が毛切れしない様にこの様に手入れをしていたと聞いていたが、彼女も自分の女としての武器を手入れしているのであろう、とおもった。将軍はニヤッと笑って

「いや、遠慮しておこう、これ以上君に罰当たりはできない。」

と言った。

穂花はさらに挑発する様に、大きく右足を上げ組んだ。そして胸のポケットから革のケースを取り出すと蓋を

開いた。そこには小さな握り鋏と太い針二本と少量の糸が入っていた。握り鋏を取り出すと制服の襟章と肩章の

止め糸を切り始めた。

「いつも疎の様な物を持ち歩いているのか。」

と将軍が問い掛けた。

「はい、女の嗜みですから。」

と穂花はわざとらしく言った。そして章を外し終えるといきなり挟みの握りの部分を引き伸ばして革のケースに

挟み構えた。

「この鋏は握りの部分には焼きが入れて有りません。ですからこの様にすると武器として使用出来ます。これでも男の寝首くらいは掻く事が出来ます。そしてこの針も。」言って革のケースの両端に挿し込んでその真ん中を握り、拳を前に突き出した。

「これで相手の両目を潰すこともできます。」

と言うと何事も無かった様に、針に糸を通し新しい章を付け始めた。

将軍はすべての仕種が計算ずくで良く訓練んされている。生かしておけばもっと使えるものを。と思いつつその

姿を見守っていた。

章を付け終わると穂花は今度は両足を横に流し組んだ足を揃えると凜として立ち上がり、服を着ると手早く釦と

衿の鍵ホックを止めた。そして直立不動で敬礼をし。

「閣下、数々の無礼お許し下さい。そして、私の最後の我が侭をお聞き届け下さい。」

「何か。」

「ハッ、この南部はお返しいたします。死に様は自分で決めとう御座います。それに、閣下のお部屋を血で汚す

のも恐れ多い事ですから。」

 

散華3

 

「自分の命だ、好きにするが良い。それで何がしたいのか。」

「この命、散り際も少しはお国の為にお役に立てたいと存じます。この程若い新兵が五人本土から配属されて来たと聞いておりますが。」

「確かにこの制海権の無い状態で無事たどり着けたのは奇跡でも有る。だが奴等も不憫だ。全く訓練も無く

いきなり戦場へ送り込まれたのでは生きて帰れる術はない。後数ヶ月も持たないだろうから。」

「閣下もそう思われますか。と言う事は、後数ヶ月を凌ぐ事が出来れば生きて帰れる術も有り得ると言う事ですね。閣下が捕虜に成る恥辱を受けるぐらいなら玉砕せよと言われない限り。私が彼らに少し度胸を付けましょう。」

「厳しい事を言うな。それでどうしてほしいのか。」

「彼らに銃剣を持たせて中庭の鉄棒の所へ来させて下さい。それともう一人。この隊に剣術の名人が居ると聞いておりますが。」

「吉岡少尉の事だな。私も彼の腕前を見た事は無いが。」

「その少尉に軍刀を持たせ、若者達を引率させて下さい。」

「判った、少尉には私から緯細は説明しておく。」

「有り難う御座います。穂花、これで下がらせていただき、庭でお待ちいたします。」言うと直立敬礼しそのまま踵を返すとドアーに向かって歩き扉を開いた。

穂花が扉の外に一歩踏み出した時、橘中将は軍帽が脇机に置かれたままに成っているのを見て思わず声を発した。

「少佐。」

穂花は動きを止めて振り向く事無く答えた。

「何か。」

指令は帽子を手にしてハッとした。帽子の裏に懐紙を巻いた一房の髪の毛の束を見たからである。そして彼女が

別れを告げる意味で置いて行った事を悟った。

「許せ。」

穂花はその言葉を背中で聞き静かに後ろ手でドアーを締めると、凭れ掛る様にして目を閉じた。

ドアーの両側に立っていた歩哨が横目でチラッと穂花の方を見て、そこに少佐の襟章を見慌て直立不動と成り敬礼をした。

穂花は目を開くと軽く答礼をして廊下を歩き始めた。擦れ違う下士官、兵卒は皆壁際ぬ寄り道を開けて直立不動

と成って敬礼をした。

師団司令部と言えども、佐官級の将校はそう多くは居ない。穂花はいささか御満悦に成り歩きながら答礼をした。

橘中将は穂花の靴音が遠ざかって行くのを聞きながら電話機を手に取った。

「吉岡少尉を呼べ。」

しばらくして、足音が扉の外で止まった。

「吉岡参りました。」

「入れ。」

少尉は部屋に入ると直立不動で敬礼をした。

将軍はゆっくりと席を立ち窓の外を見下ろした。

其処へ丁度斎種少佐が中庭へ出てきた所であった。

少佐は後から付いてきた二名の歩哨と何やら言い争っている様である。

中将は少し窓を開けた。

「帰れ!。」

「いえ、それは出来ません。」

「私の命令でも出来ないのか。」

「はい、。」

「閣下に命令されたのか。」

「いえ。」

「では、誰の命令か。」

「申し訳有りませんがそれはお答え出来ません。」

「勝手にしろ!.」

中将は、今回の企みが少なくとも佐官クラス以上の者に寄る事を悟り、事態の深刻さを痛感していた。

「少尉、あれの事を知っておるか。」

吉岡少尉も窓際まで歩み寄り下を見下ろした。

「斎種大尉の件ですね。多少は聞き及んでおりますが、使い捨てですか、哀れな物ですね。」

「少佐だ。」

と中将が言った。

「ハッ!。」

と少尉は体を強張らせて答えた。

中将は事の次第を詳しく少尉に説明し、続いて命令を下した。

 

散華4

 

「吉岡少尉は新規配属された兵卒五名に銃剣を持たせ、斎種少佐のもとに赴き、その命令に服従せよ。」

「服従ですか?。」

と小尉は怪訝そうに問い直した。

中将は平常語の戻って、

「そうだ、いかなる命令、要求も聞いてやつてほしい。」

「もし、少佐殿が逃亡を計ったらどういたしますか。」

「万に一つもその可能性は無いと思うが、もしその時は直ちに射殺せよ。

彼女もかなりの手弛れである。絶対に彼女の間合いには入るな。五名の銃には実弾を込めさせよ。そして、君も

拳銃を携帯せよ。斎種少佐は君を指名してきた。君の剣術の腕を見たいと言う事だが。私の軍刀を持って行け。

此れでも業物の古刀が仕込んである。私の名代として、しっっかりと彼女に止めをしてやってくれ。それから、

私の部屋以外の中庭側の窓をすべて閉めさせる。君はこれから下に降りて窓が閉まっている事を確認せよ、

もし閉まっていない窓が有ったり、誰かが隙間から覗いている様な気配の有る窓が有れば直ちに報告せよ。」

吉岡少尉は直立不動で敬礼し、

「吉岡これより新兵五名を引き連れ、斎種少佐の指揮下にはいります。」

と言うと、軍刀を押し頂き出て行った。

中将は彼の靴音を聞きながら再び電話機を手にした。

「此れより、中庭に面した窓全てに灯火管制を引く。私の部屋以外別名の有るまですべての窓を閉じ暗幕を下ろせ。窓際にも近づくな。中庭への出入りも、私の命有る物以外は一切禁止する。全隊に通知せよ。それから、庭に居る歩哨も下がらせよ。」

兵舎全体が急に騒がしくなり、窓が次々と閉じられて行った。

吉岡少尉が五名の新兵を連れて中庭に出てきた。兵卒は背中を内側にして円陣を作り窓の閉まり具合を点検して

いる。そして円陣を崩すと順に少尉に報告をしている。

少尉は一通りの報告を聞き終わると兵舎の中へ入って行った。

総官室の電話が鳴って中将が受話器を上げた。

「吉岡です。閣下の隣の吉良准将殿のお部屋から二~三名覗いて居る様です。」

「一発撃ち込んでやれ。」

「はっ、今何と。」

「そこから一発銃弾を撃ち込め、と言っておるのだ。いや斎種にやらせよ。少佐を電話口によべ。」

その時、穂花は自分の肩の高さの鉄棒の両側の支柱にロープで作った輪状の物を結び付けていた。

「少佐、閣下がお呼びです、電話口へ。」

「君が吉岡少尉か、世話になります。」

と穂花は受話器を受け取った。

「斎種です。」

「吉良准将の部屋から二~三名覗いて居る様だ。この意味が分かるな。」

「はい、感謝します。」

「部屋を狙撃せよ、私は廊下に出ておる。」

「怪我人がでますが。」

「かまわん。其の後、私はこの窓から事の次第を一部始終見届けさせてもらう。」

「有り難う御座います。お見苦しい事も致しますが、お許し下さい。」

そう言って穂花は受話器を置き庭に出ると一人の兵卒から銃を奪い取った。他の兵が思わず身構えるのを吉岡中尉が制した。

穂花は少し前屈みに中腰に成り銃蹄を左膝に当てて左手で銃床を持ち銃口を上向きに支えると右手で一気に装填

幹を押し下げた。ガシャという鈍い音共に弾が装填された。

「ほう、実包が入っているではないか。」

と穂花はチラッろ少尉の方に目をやって言った。

「はっ、銃殺隊を編成して少佐の指揮下に入れ。と命令されて来ました。」

「私の指揮下に入って、誰を銃殺せよと。」

吉岡少尉は肝を冷やし、どぎまぎして小声で

「斎種少佐を。」

穂花はは二ヤリと笑い

「で、あるか。」

と言うと、銃口を少し傾けて引き金を引いた。

銃声が中庭に響き渡り、吉良准将の部屋のガラスが割れ、悲鳴が上った。

吉岡少尉はそれを見て再度肝を潰した。何故なら、さほど狙いを定めた様子も無いのに弾は正確に窓の影に隠れている人物を射抜いたのである。

流石諜報部員、狙撃の腕も一流である。

吉良准将の部屋から二人の将校が廊下に飛び出してきて、窓の外を見ている橘中将の姿を見て立ち竦んだ。

「何を慌てている。」

と中将は問うた。

「ハッ、今吉良准将殿が狙撃されました。犯人は斎種大尉であります。」

「ほう、私には何も聞こえなかったが。なぜ斎種少佐と判ったのか。貴様等は私の命令に反して外を見ていたのか。」

「ハッ、いや、あの。」

と二人の将校は押し黙ってしまった。

そこへ廊下の反対側から数名の憲兵が走ってきて将軍の姿を見て直立不動で敬礼をした。

「閣下、今発砲事件が有りましたが、お怪我は有りませんか。」

一人の将校が口を挟んで、

「今吉良准将殿が狙撃された、直ちに中庭に居る斎種大尉を逮捕せよ。」

「中庭の事に付いては一切斟酌無用と近藤隊長に念を押しておけ。」

と将軍がそれを押さえた。

「おまえ等二人には後で問い質したい事が有る。こいつ等を連れて行って拘束しておけ。それから、隣の部屋の

物も目立たぬ様片づけろ。」

そう言い置くと将軍は自分の部屋へ戻って行った。

 

散華5

 

「整列、斎種少佐に敬礼。吉岡少尉以下五名、此れより少佐の指揮下に入ります。」

「ご苦労、其処の若い者、それぞれ指名、年齢を申告せよ。」

穂花から向かって一番右の兵卒が一歩前に出た。

「村岡俊夫一等兵、十八才であります。」と言って後に下がった。

「菊池直行二等兵、十六才であります。」

「中村七男二等兵、十六才であります。」

「鈴木五郎二等兵、十六才であります。」

「菱池末吉二等兵、十六才であります。」

と順番に名乗りをあげた。

穂花はゆっくりと兵卒の前を行ったり来たりしながら、

「若いな、ちゃんと訓練を受けて来ておるのか。戦場においては敵を殺さなければ自分が殺される。生きていた

ければ非情に成らなければいけない。貴様らは人を殺した事が有るか。村岡一等兵はどうだ。」

「いえ、有りません。しかし、私どもはお国を出る時、共に次に合う時は靖国神社でと誓い合って参りました。」

「おうおう、威勢のいい事だ。しかしこの戦いは消耗戦だ、いかに敵を多く倒し、敵の施設を破壊するか、

と言う事だ。貴様ら素人が戦場に出ても犬死にするだけだ。それに、貴様ら若者は次の時代を背負う任務が有る。ゆえに、私は貴様らに命令する。いかなる事が有ろうとも、草の根を齧ってでも生きて日本へ帰れ。其の為にも、これから私が身を持って人の殺し方を教えてやる。少尉、全員に銃剣を着けさせよ。」

と言うと鉄棒の方へ歩き始めた。

「銃剣を付けよ。」と言う少尉の声と共にガチャガチャと言う金属音を聞きながら、穂花は鉄棒に結び付けたロープの輪に鉄棒を背にして両手首を通した。

「村岡一等兵前へ出て私の正面に立て。」

村岡一等兵は面食らいながらも駆け足で穂花の半間前まで来て直立した。

「その銃剣で私を突き刺してみよ。そうさな、何処が良いかな。胸を殺られては後が持たぬ。このバックルの下を狙え。背中まで挿し通す勢いでな。やれ!。」

村岡一等兵は銃剣を構えたが、それを降ろして直立して言った。

「私どもはその襟章に銃口を向けて良いとは教わっておりません。」

穂花は両手首をロープから外すと村岡一等兵の顔前まで詰め寄り、

「ほう、一丁前の口をきくではないか。ならば此れならば出来るか。」

と言うと、徐に釦を外し上着を脱いで吉岡少尉の方へ差し出した。少尉は丁重にそれを受け取ると一歩後ろに

下がった。

穂花は村岡一等兵の股座をギュッとにぎって、

「何だ、金玉が縮み上がっているではないか。こんな事で人が殺せるか。」

と言うと体を押しつける仕種をした。

村岡一等兵は目の前に白いブラウスに包まれた体の割りには大きな胸を突き出され、赤面した。穂花ははの様子を見て

「何だ、貴様女を知らないのか。」

と言った。

「はい。」

と一等兵は答えた。

「他の物はどうか。」

「いえ、知りません。」

と声を揃えて他の四人も答えた。穂花は二ヤリとすると、

「よし、それではまず、女と言う物がどういう物か、から貴様らに教えてやろう。一等兵以外の四名は兵舎に行き畳を二枚持って来て其処へ敷け。」

吉岡少尉が目配せをすると、四人は走って兵舎の中に消えた。

 

散華6

 

穂花は村岡一等兵の目を見据えながらブラウスの釦を外すと一気にそれを脱ぎ、頭からかぶせた。

村岡一等兵はあわててそれを頭から降ろすと小脇に挟んで戦慄いた目で直立した。穂花は次にスカートを降ろすと、それを足先で一等兵の顔に向けて跳ね上げた。

真っ白なシュミーズの下に薄く透けて二つのピンク色の乳首と下の方の逆三角形の影を見て一等兵の股間が膨れ

上がった。

穂花はそれを見て、

「ほう、少し一人前に成ってきたな。」

と言うとシミューズを一気に捲り上げ脱ぐと一等兵の頭から被せた。

村岡一等兵は半べそを掻きそうに成りながらも直立不動で耐えていた。

そこへ、四名の兵卒が畳を持って来て、裸の穂花の姿を見て一瞬立ち止まり、すぐ目を逸らして鉄棒の横に二枚並べて敷いた。

吉岡少尉が口を開いた。

「村岡一等兵、いつまでそんな格好で突っ立っている、少佐殿の服を畳んで此処に置け。他の四名と共に整列。」

穂花は編み上げの長靴一つの裸身で手を後ろに組み、にやにやしながら兵卒の前を一往復した。兵卒達は顎を少し上向きに直立し、目だけでその動きを追っていた。そして村岡一等兵の前に来ると、

「全員安め。村岡、どうだ、私の下着の匂いは。」

「はい、微かに甘いような。いえ、失礼いたしました。」

「ほう、匂いを嗅げる余裕が出来てきたか、それは重畳。私の胸を触ってみたいか。」

「滅相もあらません。」

「遠慮しなくても良い。」

と言うと穂花は兵卒の右手を掴むと、自分の胸に押し当てた。

「どうだ。」

「はい、暖かく、でも意外に固い…。」

「他の者も触って良いぞ。」

他の兵卒も穂花を取る囲み恐る恐る乳房に手を触れた。穂花は黙って目を閉じ、胸を突き出す様にして立ち兵卒

たちの声を聞いていた。

「本当だ、かたいな。俺の母ちゃんなんかぺっちゃんこで垂れ下がっているぞ。」

「内の姉ちゃんのを見た事が有るけど、ペッタンコだったぞ。」

兵卒の行動は段々と大胆に成り、両手で乳を揉む者、乳首を摘まんで引っ張る者も出てきた。吉岡少尉ははらはらしながら其の様子を見ていた。

一番幼顔の菱池二等兵が恐る恐る言った。

「少佐殿の乳首を吸和わせて頂いてもろしいでしょか。」

穂花は目を開くと、母親の様な微笑みを浮かべて、

「よし、許す。」

菱池二等兵は少し震えつつ、徐に乳首に口を持って行った。

「痛い!、そんなに強く吸ったら痛いではないか。」

穂花は菱池の頭をポカリと殴り付けた。

「私もお願い致します。」「私も。」

箍が外れた様に、それは小犬が乳房を奪い合うごとくの状態となった。

鈴木二等兵の右手がゆっくりと下の方へ下がって来るのを穂花は感じ、その顔を見た。鈴木二等兵は顔を引き攣らせて、慌てて手を引いた。

 

 

散華7


「其処も触りたいか。皆やめ!。」

全員顔色を変えて慌てて後ずさりした。

「貴様ら、女陰を見た事が有るか。」

全員黙って下を向いていた。

「見た事が無いのだな。よし、見せてやる。全員こちらへ来い。」

と言うと、穂花は畳の方へ行き、その縁ぬ腰を下ろすと、仰向けに寝転んだ、そして、足を揃え踵で陰部を隠す

ように膝を曲げた。

「私の足元にしゃがんで座れ。」

全員がしゃがんだのを見届けると穂花は左手を畳に置いて上半身を起し一気に両足を開いた。

「おお。」

と言う声が響いた。

「よく見ておけ、此れが女陰という物だ。貴様らはおめことかおまんこと言っている様だが。正式にはこの部分

全体を称して外陰部と言う。」

そして指先で毛を摘まむと、

「菊池二等兵、此れは何だ。」

「はい、にこ毛であります。」

「ほう、にこ毛とは粋な言葉を知っているな。」

「はい、叔父が幇間をやっています。」

「では、色町へ行った事が有るのか。」

「いえ、まだ連れて行ってもらっておりません。」

「それは残念だったな。これは正式には陰毛という。私は手入れしているから、この部分には生えていないが、

普通は生えている。」

と穂花は又の間を指差し言葉を続けた。

「貴様等が割れ目と言っているのは正式には陰裂と言う。私の場合この様に左右からの土手、正式には大陰唇と

言うのだが、がピッタリと閉じている。女性の外陰部はこの大陰唇と此れの内側に有るもう一組の襞、此れを小陰唇と言うのだが、で外部からの遺物が入らない様に保護している。小陰唇が大陰唇から食み出している女も数いるが、別に異常では無い。色も私のは薄い肌色だが、もっと浅黒い色をしているのが普通である。女それぞれ千差万別、色が黒いから、小陰唇が食み出しているからおぼこでは無いとは言えない、判ったか。貴様等が女と間ぐ合う時この方向から。」

と言って穂花は陰裂に直角に指を差し、

「しゃに無に魔羅を押し付けても、女は痛がるだけで容易に思いを遂げる事ができない。

吉岡、そんな所に突っ立っていないで、お前もここへ来て一緒に見ないか。」

吉岡少尉は面食らった表情で、

「いや、私は見慣れておりますので、その。」

「では、私の後ろから私を抱き起こしておいてくれ。股座を開いた状態で片手で上半身を起しているのは、疲れる。靴を脱いでここへ来て胡座を掻いて座れ。」

「承知。」

と言うと吉岡少尉はばつの悪そうに穂花の横に並んで座った。

「少し胡座を緩めよ。」

と穂花は言うと、お尻を浮かし少尉の胡座の上に腰を下ろした。少尉は両手を後ろについていた。

「うむ、これで腰が安定したし背凭れも出来た。しかし君も無粋な男よのう。膝の上に裸の若い女が居るという

のに、ちゃんと抱き支えぬか。」

と言うと、穂花は少尉の右手を取ると自分の左乳房へ、ついで左手を取ると臍の上へ持ってきた。穂花は自分の

尻の当たりに硬い物を感じない事を不思議に思って、

「冷たい手だのう。心も冷たいのか。通常若い男がこの様な状態に置かれたら勃起ぐらいするだろう。それとも、私では不足だとでも言うのか。」

「滅相も有りません。自分を選んで頂いて光栄に思っております。ただ、今は任務の途中ですから。」

こやつ、心で肉体を律する業を心得ているのか。と穂花は内心感嘆した。

「ま、良い。ならば、私を強く抱き締めよ。」

「承知。」

という声が聞こえたかと思うと穂花は胸を強く締め付けられた。

身体じゅうが何か暖かい物に包まれた様な心地よさを感じ、空を仰いだ。

…ああ、このまま死んで行けたら…薄れて行く意識をかろうじて押しめ、

「馬鹿者、少しは手加減せよ。」

と言った。腕が程好く緩んだ。胸と腹に添えられ居る少尉の掌が心地よく暖かく成っていた。穂花は兵卒の方へ

目を向けると、

 

散華8

 

「さて、両手共自由に成った事だし、話しを続けよう。女陰を無理なく開かせる為には、」

その言葉を遮って、村岡一等兵が、

「少佐殿、失礼ですが、おしっこが…。」

穂花の割れ目から水が湧き出し肛門の部分を濡らしていた。

「少尉、悪いがズボンを汚すぞ。」

「お構いなく。」

「村岡、指先で掬ってみよ。」

一等兵は恐る恐る指を差し出すと、割れ目の下の部分に丸く玉の様に成っている水に触れた。水が指先に吸い付

いた。一等兵が慌てて指を引くと、水は細く糸を引いた。

「それは小便では無い。愛液と言う物だ。女がその気に成ると湧き出してくる。親指を付けて捏ねて見ろ。」

「あ、ベトベトぬるぬるとしている。」

「そうだ、それが魔羅を迎え入れる為の潤滑材の役目をしている。匂いを嗅いで、なめてみよ。」

一等兵は指を鼻先へ持って行った。

「本当だ。小便臭く無い。微かに甘い匂いがする。」

そして舌先に付けて見て

「少し酸っぱい。小便だったら塩辛いのに。」

「調度、愛液も出てきた。女陰を無理なく開かせる為には、魔羅をこの様に割れめの上の部分、ここを恥丘と言うのだが、添わせてこの様に。」

と言って穂花は左の人差し指と中指を揃えて恥丘から割れめの方に滑り込ませた。指先が簸たの中に沈み込んだ。指先を割れ目の中ほどまで進めると、パッと左右に開いた。其処に多少光沢の有るピンクの部分が現れた。

みんなの間から

「おお、」

と言う声が漏れた。

穂花はそれにはかまわず、右手をのばすと。右の土手の内側に有り肉襞を摘まむと外へ引っ張り出した。

「此れが先に話した小陰唇と言う物だ。」

左の人差し指で左側の土手をなぞりながら、この大陰唇は部厚い脂肪の層で出来ていて、外部からの衝撃に対して内部を守る物。此れに対してこちらの小陰唇は大陰唇の内側で左右から重なり合い引っ付き合って外部からの異物が入るのを防いでいる。女が風呂に入っても風呂水は中に入らない、裸で砂浜に座っても砂が中に入る事が無いのは此れが有るからである。」

次に右手でももう一方の小陰唇を摘まむと、両手で左右に引っ張った。兵卒の視線がその部分に集中した。

穂花は大きく広がった小陰唇を左手の親指と中指でさらに広げ、左右の襞の上側の接合部に有る小さな突起物を

右手の人差し指の先で軽く擦りながら、

「これが、善がり疣、ここをこの様に優しく擦られると女子は簡単に良い気持ちに成る。正式には陰核又は

クリトリスと言う。お前等の魔羅の先の部分に相当する所である。そしてその下に有るこの少し肉の盛り上がった様な所の中程に。」

と言って穂花は指先でその盛り上がった部分の横を押した。と、その盛り上がった部分の中程に小さな穴が現れた。

「村岡、ここへ顔を近づけて確り見ていろ。他の者もだ。」

穂花が言った。

村岡一等兵が正面に顔を近づけ、他の四人も頭を突き合わせる様に覗き込んだ。その時穂花が一瞬放尿をし、

村岡一等兵の顔を直撃した。

村岡一等兵は

「ウワ!」

と言う叫び声を上げて後ろに仰け反った。

一瞬何が起こったか判らずホカンとしていた他の四人も、顔から雫を垂らし目を白黒させている上等兵の姿を見て大声で笑いはじめた。上等兵は慌てて腰から手ぬぐいを取り出し顔を拭き始めた。

「どうだ、村岡、おしっこの味は、私のここも拭いてくれ。」

村岡上等兵は慌てて手ぬぐいを握り直すと穂花の局部に擦り付けた。

「ばか者、そんなに強く擦るな。女のここを拭く時は手ぬぐいを軽く押し当てる様にするものだ。少尉、また衣服を汚してしまったな。」

「お気遣い無く。」

少尉は穂花が小便を途中で止めたのを見て驚いていた。普通女性は尿道が短い為、一度放尿を始めると止める事は出来ないと聞いていたからである。よほど股間の筋肉も鍛えているのだろう。少尉は始めて彼女を抱いてみたいと思った。そして一物も少し反応した。

穂花も敏感にそれを感じたが無視して説明を続けた。

「おしっこの穴からその下の大きな穴、ここが赤ちゃんの出て来る所、お前等が魔羅を突っ込む穴だ。正式には

膣口と言い、私のはこの様に大きく口を開いているが、生娘の場合は、この部分にさらに肉の襞が付いていて

開口部を小さくしている。此れを処女膜と言う。私の場合も此処にまだ僅かに残ってはいるが。」

と言って穂花は穴の角を摘まんで引っ張った。そこには小陰唇よりは薄い白っぽい襞が有った。

「お前等は、処女膜は紙の様に薄い膜だと思っているだろうが、実際にはこの様に厚みも有り、中には血管も神経も通っている。初夜の時お前等の魔羅が此れを引き裂くのだから、当然痛みも有れば出血もする。それを心得ていたわってやらなければいけない。判ったか。」

みんな真剣に「はい。」と答えた。

「さて、この五人の内で一番手の小さい奴、そう、菱池二等兵、親指を内側にして握りこぶしを作れ。」

菱池二等兵が握りこぶしを作ると、穂花はその腕をムズと握りこぶしを自分の股間にもってきた。

「硬く握り締めて、どんな事が有っても決して手を広げるでは無いぞ。」

穂花は言うと、大きく息を吸い口を尖らせてゆっくりと吐いていった。

そして、息を吐き終わると同時に菱池二等兵の腕を力いっぱい引き寄せた。ゾボッと言う音がして二等兵の拳が

穂花の股の間に吸い込まれた。

兵卒達はただ目を丸くして口をポカンと開け声も出なかった。

「どうだ菱池、私の体内に入った感触は。」

と穂花は問い掛けた。

「あっ、ああ、あ、はい。拳の廻りに何かぬるぬるした熱い物が絡み付いてきます。拳の先には何かくりくりと

した硬い物を感じます。」

「だいぶ冷静に観察出来る様に成ったな。戦場においても常にそれだけの冷静さを保つ事が出来れば、生き残る

術も生れてくる。赤子が生れる時はもっと大きく広がる。よし、ゆっくりと手を引き抜け。ゆっくりとだぞ。」

菱池二等兵はゆっくりと手を引いたが肉が絡まったまま出て来そうに成ったので動きをとめて、

「少佐殿、取れません。」

と情けない声を出した。

「拳の力を緩めよ。」

と穂花は言うと息を止め、ムッと下腹部に力を入れた。拳がスポンと抜け後に一瞬真っ赤な三寸ぐらいの径の穴が現れたかと思うと、奥から急速にへしゃげ収縮して、あっという間に元の姿に戻ってしまった。兵卒達はただ

ポカンとそれを見ていた。そして皆大きなため息を吐いた。

 

散華9

 

一時の静寂の後、中村二等兵がおどおどとした口調で言った。

「あのう少佐殿、私の筆下しをして頂けないでしょうか。」

それを聞いた穂花の顔が一瞬強張った瞬間、二等兵の体を突き飛ばしその上に馬乗りに成ると彼の銃剣を引き抜き首筋に押し当てた。

それを見た吉岡少尉は穂花から一間ほど離れた所まで飛び退き腰の銃架に手を掛けた。他の四人の兵卒も慌てて

立て掛けてある銃の所に駆け寄った。少尉は彼らが銃に手を掛けようとするのを目で押し止めて言った。

「少佐殿、少し悪ふざけが過ぎはしませんか。」

一時の沈黙の後穂花は寂しそうには答えた。

「間もなく掻き消される命の炎を少しでも燃え尽くそうと鼓舞してる。全てに目を瞑ってくれ。この場に及んで

悪あがきはせぬ。」

少尉は拳銃から手を放し、無言で直立した。

「良いか、中村とか言ったな。他の物も良く聞け。ここは敵地のど真中だ、僅かな油断がこの様に命取りと成る。寝ている時でも決して息を抜くな。これが生き残る最大の術だ。

意外にもこの銃剣はなまくらでは無いな。良く砥がれ手入れも行き届いておる。良い心がけだ。

さて、私に筆下しを頼む資格が有るか確かめて見るとするか。」

そう言うと穂花は銃剣を後ろ手に無造作に少尉の方に投げた。

少尉は体を微動だにせず、右手だけでそれを受け止めた。

穂花は少尉に黙礼をすると、中村二等兵のズボンのベルトと釦を外し、その中に手を滑り込ませると魔羅を引っ

張り出しそれを見て、

「ほう、首を欠き切られるかの状況でも一緒前にいきり立たせているではないか。だいぶ肝が据わって来たな。

しかし、この皮被りはいかんな。」

そう言うと穂花は魔羅を握り締めると思いっきりてを根元に向かってスライドさせた。ピチッと言う様な音がして白い糊状の物がべったりと付いた亀頭部分が露出した。

「痛い!、少佐殿痛いであります。」

中村二等兵が悲鳴をあげた。

穂花はそれを無視して褌の端で恥垢を奇麗に拭き取った。紫がかったピンクの少し光沢の有る皮膚が現れた。

穂花は振り返ると、

「整列、貴様等も皆童貞か。」

残りの四人が穂花に向かって一列に並び、声を揃えて

「はい、そうであります。」

「貴様等も私に筆下しをしてもらいたいか。」

「はい、そうして頂ければ光栄であります。」

「よし判った。貴様等も魔羅をを出してこの様に皮をむいて奇麗に拭いておけ。体は休め、魔羅は起立で順番を

待て。」

少し離れて立っていた吉岡少尉は男四人が魔羅を突き立てて整列している姿を思い浮かべ思わず吹き出した。

「少尉何を想像した?。」

穂花は二ヤリと笑っていった。

「あっ、いや。失礼いたしました。それで、私は何をしたらよろしいでしょうか。」

 

散華10

 

「少尉、私は君を軍務に忠実な融通の利かない堅物と思っていたが、どうやらそうでは無さそうだな。後で更に

無理難題を聞いてもらわなければならない。それまでゆっくりとこの茶番を見物しておれ。」

そう言うと穂花は腰を浮かし中村二等兵の魔羅を掴むとその先を膣口の所に導き再びゆっくりと腰を下ろした。

二等兵の魔羅は完全に見えなくなった。

「どうだ、気分は。」

「はい、何かものすごく暖かく心地が良いで有ります。金玉の方がヒクヒクしてきて・…ああ…。」

穂花はは膣の中で魔羅がビクッとし、熱い液体が迸るのを感じた。

「何だもう出てしまったか。若い者は元気が良いな。」

そう言うと二等兵の腰の手ぬぐいを股の間に当て立ち上がって今度は畳の所へ行き、仰向けに寝転んで膝を曲げ

両足を大きく開いた。

「次、村岡一等兵来い。」

「村岡一等兵参ります。」

と言うと半分脱げたズボンを両手で支えよたよたを穂花の側に来た。

「私の肩の上に両手を付いて、腕立て伏せの体制を取れ。」

一等兵は腰を浮かせて穂花の上にに覆い被さった。穂花は手で魔羅を自分の其処にあてがい、

「よし、ゆっくりと腰を押し付ける様に前へつきだせ。」

一等兵の魔羅も無事穂花の中に沈み込んだ。

「どうだ、心地よいか。」

「はい、女子とはこんなにすばらしいのですね。何か魔羅も根元が強く締め付けられています。ムズ痛い様な…

ああ。」

少尉はその言葉を聞いて“このひと女性は巾着なのか”と思った。

「次、菊池二等兵。村岡と同じようにやってみろ。」

「はい、よろしくお願いいたします。」

穂花はやはり手を添えて導き入れて、

「どうだ。」

と言った。

「あ、はい。私は魔羅の根元以外に中程と頭の括れの部分にも強い締め付けを感じます。括れの部分が擦れて…あ。」

少尉はその言葉を聞いて“今度は三段締めか”と驚いた。

「次、鈴木二等兵。もう説明の必要はないな。」

「はい、鈴木二等兵参ります。」

鈴木二等兵の挿入が無事できると、穂花はまた問うた。

「どうだ。少しは堪えられるか。」

「はい、魔羅の先の所で何かグニャグニャと動いている様です。堪えられません。ハァ…。」

少尉はその言葉を聞いて“え、今度はみみず千匹か”と驚いた。

「最後は菱池二等兵だな。来い。」

「はい、菱池二等兵お世話になります。」

「どうだ、今度は。」

「は、はい。全体が奥の方へ強く吸い込まれる様です。ああ吸い出される。」

少尉はその言葉を聞いて“え、蛸の吸出しか”この女性は三拍子いや四拍子揃い踏みか、こんな女性が本当に

この世に存在するとはと驚愕した。ここで殺してしまう前に一度抱いてみたい。初めて自分の意志に反して

魔羅が疼くのを感じた。穂花が自分のかおをチラッと見てかすかに微笑んだ様に思えた。この女性は意識的に私を挑発している、そう思った。

菱池二等兵が魔羅を穂花の膣より抜こうとした時突然ピチュピチュとい

う音がして膣と魔羅の間から水が迸り出てきた。魔羅がそれに押し出される様に抜けると白いどろどろとした液体の塊と共に畳の上に流れ出た。

「し、少佐殿、おしっこが・・…。」菱池二等兵が叫んだ。

「は、は、は、おしっこでは無い。これが俗に言う潮噴きというものだ。なあ、少尉。」

穂花は少尉の方を振り向くと笑ってみせた。

吉岡少尉はただポカンと穂花の顔を見詰めているだけだった。

村岡一等兵が発言した。

 

散華11

 

「少佐殿、恐縮でありますがもう一回ずつお願い出来ないでしょうか。」

「ほう、どれ、なるほど皆りっぱに回復しているな。若い物は元気だ。よし、許す。今度は私は何もせん、好きにやってみよ。今度は三擦り半等と言うお粗末は許さんぞ。最低十擦り以上だ。心してかかれ。私の表情を変える

事が出来たら誉めてやる。まず、言い出しっぺの村岡こい。」

穂花は膝を立てて長脚を大きく開いて仰向けにねころんで両手を大の字に伸ばした。目は空の雲を見ているような、さっきとは打って変わって魂の無い人形の様に見えた。

村岡一等兵は穂花の上に覆い被さると一気に魔羅を挿入した。今度は穂花が意識的に早く行かせてやろうとして

いるのであろう、魔羅は膣の中で捏ね繰り回される様でたちまち上り詰めようとするのを必死に堪えて腰を揺らした。が、耐え切れず十回そこそこで果ててしまった。村岡が立ち上がると穂花

「まあまあ持った方かな。よし、次、順番に来い。」

残る四人が次々と穂花に挑んだがやはり結果は同じであった。この間、穂花は顔の表情一つ変える事は無かった。

少尉はそれを見ていてこの女性は自分の本能的感覚までコントロール出来るのか。これらの業で今まで多くの敵を凋落し情報を得て来たのであろうと思いため息をついた。最後の菱池二等兵の行為が済むと、穂花は

二等兵の手ぬぐいを取り上げ自分の股座に当てて起上がった。そして、

「さて、これで性教育の時間は終。全員魔羅を仕舞い服装を正せ。次は男女の本当の相婚ひを見せてやろう。」

と言うと自分の襞の間の液体を奇麗に拭き取り立ち上がって少尉の方に歩み寄っていった。

「さて、少尉。此れからは私の無理を聞いてもらいたい。まずは、階級を忘れて、私を君のいとおしい女性として抱いて慈しみ女の喜びを味わせてほしい。この私にも君の様な好青年と結婚し、家庭を持って子供をもうけたい、と言う人並みささやかなの夢は有った、もうそれさえも叶える事が出来なく成った。せめてこの一瞬だけでも

すべてを忘れたい。お願いできるかな。」

「私を選んで頂いて光栄であります。少佐殿。喜んで勤めさせて頂きます。」

「忝けない、少佐殿では無い、穂花と呼んでくれ。ところで、少尉の名前は吉岡何と言うのか、剣術の達人で吉岡なら、まさか清十郎ではあるまいな。」

「はあ、当たらずとも遠からず、です。達人にはまだ程遠いので清(きよし)だけに止めております。」

「ははは、君の意志で付けた名ではあるまいに面白い事を言うな、それでは私は清様と呼ばせてもらおう。これは命令でも義務でも無い、いやなら断ってもらっても良い。心から慈しんでほしい。この世の名残に。」

そう言うと、穂花は少尉の足元にしゃがみ込み、ズボンの前の釦を外し始めた。

少尉は兵卒の一人に、さらしを一巻き取って来るようにに命じた、そして上着を脱ぎ差し出した。一人の兵卒が

進み出てそれを受け取った。次にシャツ、肌着と順に脱ぎ上そしてベルトのバックルを外し上半身裸となった。

服の上がらは判らなかったが、太い両腕、ぶあつい胸板、盛り上がった胸筋、そして六つに割れた腹筋が現れた。

穂花はそれを真近から見て

「おおっ。」

と感嘆の声を上げた。そして、さぞかしこちらも立派な物だろうと期待しつつ褌の横から手を入れて魔羅

を掴み出した、そして今度は

「ハァ。」

とため息をついた。それは期待に反して、長さで三寸、廻りは親指と人差し指で囲める程度で力無く下を

向いている。陰嚢だけが不釣り合いにだらしなく五寸ほど垂れ下がっている。これは私の秘技で大きくするし

ない、と思って手で魔羅を持ち上げると舌を出して亀頭の裏側舐め、そのまま口に頬張った。そして舌先で括れ

の溝をなぞるように嘗めまわした。と、突然魔羅が大きく膨れ喉の奥に突き刺さって来た。

穂花はあわててそれを口から出そうとしたが、歯が食い込んでしまっていて吐き出す事が出来ない。噛み千切ろうにも顎が開ききってしまっていて力が入らない。

「うむ、うむ、む。」

とうめき声をあげてもがく内に次第に意識の遠のいて行くのを感じていた。

その時両頬が何か暖かい物に包まれたかと思うと、口の中の物がするりと外へ滑り出た。

穂花は回復しつつある意識の中で、自分がため息を吐いて馬鹿にしたので仕返しをされた、この野郎、と思いつつ上を見上げてキッとして目を開いた。そこには阿弥陀如来の様な優しい顔が見下ろしていた。

ああ、この男性の手に掛ってなら成仏出来る。穂花はそう思うと今までのこだわりや蟠りがスーと消えて心が軽く成るのを感じた。

目を伏せると鼻先に巨大な物が突っ立っているのを感じ思わず仰け反った。それは胴回り八寸ぐらい、丈は臍下

まで届くほどの肉棒で反り返った表面には血管が浮き出て恰も蔦が巻き付いている様であった。

穂花は今度は

「おおっ。」

と感嘆の声を上げ、自らはしたないと顔を赤らめた。そして先端から一寸五分ぐらいの所にくっきりと付いた歯形をみつけ思わずそこに口付けをした。と、顎が持ち上げられ阿弥陀の顔が覆い被さって来たかと思うと唇を塞がれた。

穂花は頭にジーンと痺れを感じ目を閉じた。暖かくて少し硬い物が唇を割って侵入してきて舌に絡んで来た。

穂花も負けじとと舌をそれに絡ませた。自分の心臓の音がガンガン鳴るのを覚えた。暖かい手が両脇から

背中に回るのを感じると何の抵抗も無くスーッと体を立ち上がらされた。

そして互いの唾液をすべて飲みさんが如く激しく接吻を繰り返した。

穂花は両腕を中尉の背中に廻し乳房が潰れんばかりに抱き着いていた。

又自分と中尉との間に太い肉棒が挟まっているのを感じ自分の腹をそれに擦り付けようとした。その時中尉の左腕が脇の下から抜けたかと思うとあたかも天国に導かれるようにフワリと体が浮くのを感じて目を開いた。

一面真っ青な空が目に飛び込んできた。

中尉は彼女を抱き上げると畳の方へと歩いて行った。穂花は雲の上漂っている様な心地よさにうっとりとしていた。

中尉は静かに穂花を畳の上に横たえると、再び唇を重ねてきた。

少尉の頭越しに陽光が丁度如来に光背の様に輝くのを見て穂花は

「清様、穂花は貴方が心から好きになりました。」

と言うと静かに目を閉じた。

 

散華12

 

吉岡の唇はひたすら唇を吸った後、頬を伝い右のうなじの方へと移動していった。そして、耳たぶをしゃぶられ

息が耳にかかった時そこから全身に向けて甘美な筋肉の緊張と弛緩の波が広がって行き、穂花は

「ああっ。」

と言う声を上げ体をくねらせた。

吉岡の唇は首筋から鎖骨の窪みをなぞって胸の谷間を通り右乳首へ達した。舌先が乳首の廻りを何度も何度も転がす様になぞり、時々赤子が乳を吸うようにしゃぶり付いて来た。そして吉岡の右手は左の乳首を摘まみ揉み、

残る掌で乳房を優しくこね回した。

穂花は無意識に体をくねらせ、その心地よさで股間が熱く成るのを感じていた。吉岡は左右の乳房を張れて硬くなり乳首が十分に勃起するまで交互に吸い揉み続け、そう成った事を見届けると唇を左右の乳房の間から徐々に下腹部の方へと移動させ、形の良いお臍に持って行った。そして窪みの廻りに舌を這わせ、窪みに舌先を挿し入れたりした。その度に穂花は臍が脈打ち熱い物が腸の中に広がって行くのを感じていた。

吉岡は穂花の股間の立て膝を付く形で体を起すとこんもりとした真っ白な腹部を両方の掌で愛しそうに撫で回した。そして、このお腹を切り裂いてみたい、という欲望にかられ股間の肉棒が疼くのをおぼえた。

穂花も目を閉じ掌の暖かみを腹部に感じながら、これからこの部分を銃剣せ突かせるくらいなら、いっそうこの

人の手で真一文字に切り裂かれたい、と思っていた。と、突然吉岡がお腹の上の顔を埋めると、思いっきり其処に噛み付いた。鈍い痛みが身体中に微細な震動を伴って広がって行った。穂花が力の抜けた様なうめき声を発すると同時に、その股間から堰を切ったように水が溢れ出てきた。図らずも二人の意識が一致した腹を切り裂くという

快感。穂花は亢奮と恥ずかしさのあまり両手で顔を覆った。白い腹部は薄いピンク色に染まりくっきりと歯形が

浮き出してきた。吉岡はその姿を見て愛らしさに心を奪われると供に、何処からこの様に液体が湧き出して来るのか知りたくなり穂花の股間を覗き込んだ。液体は濡れて張り付いた恥毛の間から流れ出ている。吉岡は両手で

そっとその草むらを左右に掻き分けた。そして穂花がびっくりし

「いやぁ…」

という悲鳴と供に股を閉じようとするのを、両手で股関節が外れるかと思うほどに力いっぱい左右に押し広げた。穂花は観念したように

「ううむ。ああぁ…」

と声を上げると再び両手で顔を覆った。恥ずかしい、でも自分の全てを見ておいてほしい。生きていた証に脳裏に焼き付けておいてほしい。そう思い神経を股間に集中した。とまるで自分の股間に目が有るかのように、其処を覗く吉岡少尉の顔が鮮明に脳裏に投影されてきた。と、少尉の両手が伸びて来るのが見えた。

吉岡は両手の指策で左右の丘を摘まむと両側へゆっくりと広げて行った。

穂花ほピッタリと引っ付いている粘膜が引き攣るように剥がれて行くのを感じ、心地よい空気が流れ込んで来る

ように感じた。

液体は小陰唇の内側の小豆の様な肉の塊の両脇から、恰も汗が噴き出る様に次から次にと液体が滲み出し玉の様に成っては下へと流れ落ちていた。そして今一つは、小陰唇の下側の交わる部分の上に開いた穴からでその穴が恰が呼吸をするが如く開いたり窄まったりする時、穴が開くとその奥に並々と液体が溜まっているのが見える。

そして穴が窄まると、貝が水を噴き出し様に液体が飛び出してくる。蛤の潮噴きと古人の喩は当を得ていると

思った。穴が再び広がると其処には深淵な洞が出来、すぐに再び並々と液体が溜まってくる。

吉岡は左手の親指と人差し指でその部分を大きく広げる様にし、右手の一指し指を小豆状の物の下から湧き出る

雫に近づけた。雫が指先ぬ吸い付いてきたように思えて少し指を引いた。その時爪が小豆条の物に当たった。

穂花は其処から電気でも流れたように感じてビックとして体を弓なりに反らした。吉岡の指先に液体が糸を引いていた。此れが俗に言う善がり疣、陰核という物かと思いながら、吉岡は指先を嘗めてみた。

少し酸味の利いた塩っぱさを感じ甘酸っぱい香りが鼻に抜けた。吉岡は今度は豆状の物を指先で摘まんだ。

再び穂花の体に電気が走った。

陰核は上半分が小陰唇で覆われたた様に成っている、吉岡は枝豆を剥くように指先で全体を露出させた。

それはピンク色の光沢の有る薄い皮で包まれた意外に硬い物であった。吉岡は指先でその弾力を楽しんでいた。

穂花は陰核に指先の暖かみを感じ、指紋のザラザラが擦れるたびにその心地よさに身をくねらせた。

吉岡は溢れ出る液体をすべて飲み干したいという欲望に駆られ穂花の局部に顔を近づけ舌先を密壷の中に挿し込んだ。

穂花が

「あっ、いや!」

と悲鳴を発して股を閉じ腰を引こうとするのを吉岡は押さえつけ両手で思いっきり穂花の両膝を外へ押し広げた。

穂花は恰も生娘の時の様な恥ずかしさを覚え、前進を桃色に染めた。

全身の力が抜けて行くを感じ

「嗚呼…」

とうめき声を発して両手で顔を覆った。今まで何十人もの男に局部を晒して来て、遠の昔に恥じらい等捨てて来てしまったはずなのに、まだいくらかの女らしい部分が私の中に残っていたとは…。

 

散華13

 

舌先が密壷の中に差込まれるとその部分はもはや自分に意志の外でそれを吸い込もうとする様に収縮し、中の液体は潮噴きの域を通り過ぎて止めどもなく湧き出し溢れ出て尻を伝って流れ出た。そしてお尻と腰の筋肉が収縮し

体が逆海老状に反り返る。

吉岡は舌先で割れ目をなぞって少しずつ腹部の方に移動させた。舌先が穴から出て少し上に辿るとブヨブヨとした少し盛り上がった部分を感じ、その部分を嘗め回した。と、真ん中ぐらいの所に小さな穴が出来、そこから塩っ辛い液体が一滴湧き出してきた。

その時、穂花はその部分に軽い痛みを感じ、全身に何か酸っぱい物が広がって行くのを感じ、ブルッと身震いを

して「あっ、そこはだめ・…、そこは・…」

と消え入る様な叫びを発した。

吉岡は穂花が完全に一人の女に戻っているのをいとおしく思うと同時に意地悪をしてみたくなって、

「少佐殿、今何と言われましたか。最後の方が良く聞き取れませんでした。おそれい入りますがもう一度お願い

致します。」

「もうよい、何でも無い。」

「良くは有りません、今一度ハッキリとおっしゃって下さい。」

「ばか、そこは・・…」

「そこは?」

「お小水の出る所…。」

と穂花は体を強張らせて呟いた。

吉岡は穂花の体がさらにピンク色に染まるのを見て取りいっそう愛しく舌先で其の部分を塩気の無くなるまで何度も嘗め回した。そして、目をその上にある豆状の肉塊に移した。そしてそれを下から嘗め上げた。

穂花は舌面のざらざらとした感触が陰核に伝わり、そこから細かい震動の様な物が内蔵を震わせて一瞬の内に頭に到達すると、サイダーの様に弾ける様な甘酸っぱい感覚が下半身に逆流し、背中とお尻の筋肉を収縮させた。

吉岡の下先が局部から外れると筋肉は心地よく弛緩する。そして完全に弛緩が終わらない内に再び舌先が責めて

来て震動とサイダーが繰り返される。甘酸っぱい感覚が子宮と陰核に蓄積してゆき、穂花の体は益々弓なりに硬直していった。

穂花の体の反りがもう限界に達しようとしていた時、再び吉岡の下先が穂花の陰核に触れた、と、其の瞬間陰核がピクッと痙攣し、穂花は溜まっていた甘酸っぱい感覚がパシッと弾けて一瞬の内に体じゅうに流れ、目の前が真っ白に成り、背中を何かでドンと突き上げられて体が空中高く舞い上がった様な感覚にとらわれた。そして羽の様にふわふわと落下し始めると、再び陰核がピクッと痙攣し空中に突き上げられる。この感じ何度か繰り返され、

段々その間隔が開いて行くのを味わっていた。

吉岡も陰核が痙攣すると尿道口、続いて膣口次に肛門の順に収縮して、今度はその逆の順に弛緩する様子を興味

深く見ていた。そして陰核の痙攣が止まったのを見て再度舌先で嘗め上げた。

穂花は再び体を突き上げられて空中に舞う感覚に囚われ

「アア…」

と声をあげてを弓なりに反らして腰を左右に振った。

吉岡は陰核が痙攣するを楽しんでいたが、それは前より長くは継続しなかった。そしてもう一度その先を嘗めたが今度はもう痙攣は起こらず穂花も単にこそぐったく観じて腰を横にずらしただけであった。

 

散華14

 

吉岡は、今度は自分が穂花のあの肉体を味わう番と思い自分の一握りも有る一物の先を穂花の穴の部分にあてがい、体を伸ばして脇の下の両側に手を突いて上に覆い被さった。

穂花も自分の体が静かに着地した様な感覚の後、暖かい何かが自分を覆い包んで来るのを観じて、ゆっくりと目を開いた。と、其処に吉岡の顔が優しく微笑んでいた。穂花は本能的にその首を両腕で引き寄せ、その唇を息をするのを忘れて互いに舌を絡ませすべての唾液を飲み干さんばかりに吸った。吉岡の部厚い胸が自分の乳房を押しつぶし息苦しくなった穂花は顔を離した。頭の中がジーンと痺れていてでも最高に満ち足りた気分であった。

 

今度は吉岡の方から濃厚な接吻が有り

「入れるぞ。」

と声がした。

穂花は、下半身に暖かい硬い物が押し付けられているのに気付きこの方と一つに成る事が出来る嬉しさに、

こっくりと肯いた。

吉岡は両腕を真っ直ぐに立てると、腰を突き上げた。

と、穂花は一瞬裂ける様な痛みに思わず

「痛い!」

と悲鳴を上げたと共に

「え!」

と思った。それは紛れも無く初夜の破瓜痛みであつた。任務の為に何人もの男を向かえ入れた其処にまだ処女の

片鱗が残っていたのか。忌まわしい過去がすべて清められ今、此の方によって改めて初夜を迎える事が出来た。

と感極まり目から涙が溢れた。

吉岡は、男性経験の豊富なこの人でも自分の極限の物をそのまま受け入れるのはやはり無理なのか。と思い

「耐えよ。」

と言った。

穂花が肯いたので再度突入を試みた。穂花は顔を顰め体を強張らせて上に摩り上がった。

吉岡は両腕を肩の所に置き換えて、穂花の耳元に顔を近づけ

「体の力を抜け。」

とささやいた。穂花は肯きそうしようとしている様だが体の強張りが取れない。

吉岡は耳たぶを軽く噛み、耳の穴に息を吹き掛けた。そして穂花の体が一瞬ビクっとして次の瞬間その部分が弛緩したのを逃さず肉棒を突き入れた。

穂花は引き裂かれる様な痛みに

「ヒっ!」

と再び悲鳴を上げた。目の前が真っ赤に成った。両肩で何回も大きく息をした。目の前の赤い物が少しずつ薄れて行くと共に痛みも引いてきた。穂花は目を開けると自分の下半身がどの様に成っているのか見たくなり首を起こした。

吉岡もそれと判り両手を突いて体を離した。

穂花の目に二つの乳房の間から黒い影の向こうに二寸五分ぐらいの太さの肉棒が突き立っているのが見えた。

しかもそれはすでに自分の腹の中に三寸は収まっているはずなのにまだ五寸以上も残っている。此れを全部入れられたらお腹の中が破れてしまうのではないかと思いごくんと唾を飲み込んだ。でも、それで死ねるなら寧ろ本望とも思った。

吉岡も穂花の戸惑いに気付いて耳元で、

「入れるぞ。」

と再びささやいた。

 

散華15

 

穂花はこっくりと肯いて吉岡の首に両腕を絡ませた。と、その瞬間吉岡は一気に一物を根元まで押し込んだ。

穂花は腰骨の両内側に何かを引き千切る様な鋭い痛みと胃と肺が押し潰されそうな感覚に教われ思わず

「グエッ!」

声を上げた。息を吸う事も出来ない。鳩尾の所ぐらいまで突き刺さった熱い物に押し退けられた内蔵が自分の

落ち着き場所を求めてのた打ち回っている。必至に肩で大きく何回も息をしている内に徐々に普通に呼吸が出来るように成ってきた。

それと共にお腹の痛みも取れ、挿し込まれた肉棒から懐炉を抱いた様な心地よい温もりが腸に漲ってきた。

吉岡の心臓の音が耳元で鳴っているのに同期した肉棒のヒクヒクとした動きが吉岡と自分の恥骨に挟まれた様に

なっている陰核に伝わり、其処から再びあの甘酸っぱい快感が身体中に広がっていった。それに伴い無意識に膣の口元が恰も肉棒を逃すまいとするかのように収縮し、それと同時に膣壁全体がに肉棒を入り口から奥の方へと扱き始めた。さらに奥深い部分の襞に無数の細かいしこりの様なブツブツが出来、それが亀頭を包み込むように、

うねる様に動き始めた。

 

吉岡は驚愕した。巾着と三段締めとみみず千匹と数の子天井がいっぺんに襲い掛って来たからである。そしてそのあまりの心地よさに思わず暴発しそうに成るのを辛うじて堪えて、慌てて腰を引いた。

穂花の膣口が吉岡のそれを逃すまいと反射的に収縮して亀頭の括れの部分に食い込んだ。

お腹の中に突き刺さっていた太い棒が急に引き抜かれた事により穂花は胸につかえていた蟠りや腹に溜まった一物がすべて吸い出された様な晴々とした気持ちに成った。

今度は吉岡が亀頭部分を絞り切られそうな痛みに「ウッ」と顔を顰め、腰を引くのを止めて

「いたい、力を抜いてくれ。」

と悲鳴をあげた。

穂花はすぐそれに気付いて力を抜いた。それに応じて吉岡の摩羅が一気に太く成り、亀頭の傘の部分が穂花の恥骨の内側を強く圧迫した。

と、その時穂花は、再びあの甘美な痺れが其処から全身に広がり、無意識に

「あっ」

という声を発すると共に、腰とお尻の筋肉が小気味良く収縮して体が海老状に仰け反った。

吉岡が再びゆっくりと摩羅を奥へと進めて行くと膣の内壁に出来た寒疣の様なザラザラが亀頭の裏の二つに肉の

盛り上がりを刺激し、その心地良さにこちらも思わず

「う々む」

と声を発した。そして、思いっきり奥まで突っ込むと、今度は亀頭も廻りに肉襞がぐにゅぐにゅと絡み付いて

くるので再び思わず

「うう」

という声を発した。

穂花も自分のお腹の中にゆっくりと暖かい太い物が挿し込まれた来るのを感じ満ち足りた幸福感にしたっていた。そして摩羅が奥まで達した時、子宮の引き攣りと共に心地良い痺れが全身に広がった。次に吉岡の恥骨と自分の

恥骨との間に陰核が挟まって圧迫され、そこからまたあの甘美な電撃が全身に走り、再び仰け反って

「ああぁ」

と声を発した。

吉岡がゆっくりと摩羅を引き抜こうとすると今度は幾つもの肉の輪が摩羅の括れの部分に入り込み締め付け、

扱き上げる。こそばゆい甘い刺激に

「おおっ」

と声を発する。亀頭が抜けかけると膣口がギュと締まり吉岡が

「うっ」

緩むと今度は穂花が

「あっ」

二度奥へ突っ込んで吉岡が

「う々む」「うう」

そして穂花が

「ああぁ」

抜いて吉岡が

「おおっ」。

最初は押さえがちな声がピストン運動が次第に早くなるに連れ、あたりを憚ら無くなり、兵舎の中庭に響きわたった。

営舎の中で橘中将が沈痛な面持ちでその声を聞いていた。そして呟いた。

「間もなく掻き消されようとする命の炎を燃え滾らせているのか、不憫だ。」

二人の間具合はそれからしばらく続いた後、吉岡の動きが止まり摩羅を思いっきり中へ押し込むと

「うっ」

と声を発した。

穂花は自分のお腹の中で太い物がビクッビクッと飛び跳ねて大量の熱い液体が注ぎ込まれるのを感じ、体が仰け

反ったと思った瞬間、廻り一面がピンク色の暖かい空間に漂っている様な感覚に陥った。

お腹の部分を確りとした物に支えられ、其処から熱い物がドックンドックンと体の中に注ぎ込まれる。その熱い

物が爽やかな流れと成って体全体に広がっていく。遠くからドックンドックンという心臓の鼓動とザーザーという呼吸の音がきこえる。心地良い温かさが体全体を包んでいる。

ああ!ここは子宮の中、と穂花は安らいだ気持ちで思った。私は無に帰る事ができた、この安らぎが永遠に続けば…。

だが、お腹の中で感じていたビクッビクッの缶隔が次第に広く成り、やがて止まり張り詰めていた物が萎えると

急に辺り一面が暗く成り、今度は唇に暖かい物が押しつけられてきた。

 

散華16

 

穂花がそっと目を開けると其処に吉岡の顔が有った。穂花は無意識に吉岡の首に腕を絡げその口を吸った。唇を

交合わせ、舌を絡ませ、お互いを吸い尽くさんはかりの接吻がしばらく続いた。吉岡がゆっくりと顔を上げ穂花の目を見た時互いの口元から唾液が細い糸と成って伸びた。

穂花は空ろな目でそれを見ていた。そしてその糸が切れた時、はっと我に返り、吉岡が腰を引こうとするのを止め、再び吉岡の首にしがみ付いて

「お願い、今一度。」

とささやいた。

吉岡は軽く肯いた。

穂花は吉岡の摩羅を自分の体内に収めたまま肘を立てて転がる様に体を入換えると、仰向けに成った吉岡に馬乗りに成る様に跨って体を引き起こした。と、目の前に誰かがいる。ゆっくりと顔を上げると村岡一等兵が放心した様に見下ろしている。穂花と視線が合うとあわてて少し上を向いて直立した。同時に自分の廻りで四つの靴を揃える

音がした。

穂花はいっぺんに現実に引き戻された。今までどんなに情交を重ねていても、いつも廻りに警戒し自分を忘れる

事は無かった。今やっと普通の女に成れたばかりなのに。そんな事を考えながら後ろを振り返った。

四人の若者が顔を赤らめて直立していた。

「休め、姿勢を崩して楽にしろ。どうだ、これが本当の大人の覓合いという物だ。もうしばらくそのまま見ておれ。それから、村岡一等兵 営繕に行きさらしを一反持ってこい。」

「はい、村岡一等兵、営繕に行きさらしを貰って参ります。」

と言うと営舎の中に駆け込んでいった。

「清様、今度は私が有らん限りの手法を用いて精一杯ご奉仕させて頂きます。」

と穂花が言うと、

「私も少佐殿の寝業をたっぷりと楽しませて頂きます。」

と吉岡も答え腰に力を入れ摩羅極限まで太く緊張させた。

穂花は脚の力と両腕の力を抜き背筋を真っ直ぐに延ばし空を仰いだ。

と、その時再び局部に疼痛が走って顔が引き攣った。このまま力を入れると局部の筋肉が断列するかも知れない、と思った。そして先が無いのだから切れてもいいと考え直し、思いっきり膣口を絞めた。今度は吉岡が顔を引き

攣らせた。

穂花は大丈夫だと判って、にやりと笑い、前屈みに吉岡の両肩の上に両手をついた。そして吉岡の目を見詰め

ながらゆっくりと顔を近づけ唇を合わせるろ同時に力を緩め、互いの恥骨の間に陰核が挟まる様に腰を移動させた。ビクッとした電撃の後あの甘酸っぱい心地良さが全身に広がり、それがスイッチと成って膣が無意識に摩羅をお

腹の中に引き込む様に蠕動運動を始めた。それは手で摩羅を根元から亀頭の方に扱き上げる様な感じだった。

そして亀頭の廻りでは肉襞か絡み付き、裏の筋の部分にはザラザラとした膣壁が擦り付く。その快感が摩羅を

伝わって腰骨の奥まで染み渡り、背筋と尻の筋肉を収縮させ、脊髄を通って脳に至り、その思考力を止めて暴発

するのをのを吉岡は辛うじて踏み止まった。

やがて、穂花の腰が上下にまるで馬にでも乗っているように動き出し、徐々にその回数が早くなり、、吉岡も腰で

穂花の尻を跳ね上げる様な動作を始め、穂花の尻と吉岡の腹がぶつかるパンパンという音が兵舎に響き渡った。

突然腹の中で吉岡の太い一物がビクッと痙攣し、お腹の中が熱い物で満たされた瞬間、穂花の頭の中も真っ白に

成り、心地良い暖かさと痺れる様な快感が体全体に行き渡り、そして徐々に醒めかけると再びお腹の中を突き上げられ昇天する。何度か繰り返した後、一物の勢いが次第に弱くなるろ共に穂花の意識も現実の世界へと引き戻されてきた。

穂花がゆっくりと目を開くと横たわった吉岡が優しく微笑んでいた。

穂花は自分の体を吉岡の厚い胸の上に倒れ込むように預け、その唇を吸った。

しばらくの熱い抱擁の後、穂花は吉岡に跨ったまま毅然と背筋を伸ばし置きあがると、

「もうこの世に思い残す事はない。感謝する。」

と言った。

「私も、すばらしい体験をさせて頂きました。」

と吉岡も答えた。

穂花は幸せそうに微笑んだ。それはただの一人の女性であった。

 

散華17

 

穂花は顔を引き締め

「村岡一等兵、さらし。」

と振り返り手を差し出した。

場が一遍に引き締まった。村岡一等兵ほ走って斎種少佐の所に来ると直立してさらしの一巻を差し出した。

穂花ははそれを受け取ると、端から一寸ぐらいの所を糸切り歯に咥え、一気に引き千切って細長い包帯の様な物を作った。そしてそれをくるくるとやはり包帯を巻く様に丸めると、ゆっくりと腰を浮かし吉岡少尉の摩羅が女陰

から抜けるとすばやく膣の中に押し込んだ。

穂花は吉岡少尉を見て微笑むと、

「貴方から頂いた大切な物が私のお腹から流れ出ない様にと・…。」

と言った。その時穂花の又の間から赤い物がするするっと白い内股を伝わり落ちた。目を少尉の下半身に向け息を呑んだ。その部分は自分の血と粘液で薄黒くべたべたに汚れていた。

穂花は慌ててさらしを三尺ほどの長さに引き裂いて手拭いの様な物を作りそれを拭き取ろうとした。

少尉はそれを押し止め言った、

「私も、少佐殿が本懐を遂げられるまで、このままににしておきたいと思います。」

穂花は嬉しそうに微笑んで、

「いつまでも祟るぞ。」

と言った。少尉も答えて、

「臨む所です。いつでも化けて出てきて下さい。お相手をさせていただきます。」

穂花はその手拭いの様な物を折り紙を折る様に四つにたたみ、その場にしゃがみ込むと、袋状に成っている折り角を女陰の裂けて出血している部分に押し当てた。廻りで見ている者達は傷口を拭いていると思っていた。

しばらくして穂花はそれを女陰から離して畳の上に広げた。

皆から

「おおっ!」

と言う声が上がった。白い手拭い状の布の真ん中に

くっきりと真紅の日の丸が染め上げられていた。

さらに穂花はさらしを三寸ばかりの巾に切り、その先一寸ばかりを更に細かく引き裂いて、それを巻いて、細かく引き裂いた方を女陰の傷口に押し当てた。そして、その先端にたっぷりと血が染み込んだを確認して

それで手拭いに文字を書き始めた。文字がかすれると再び女陰の傷口に押し当て、それでもかすれる様に成ると、今度は爪先で傷口を広げ、何度も繰り返し終に「武運長久」の四文字を書き上げた。

穂花は吉岡少尉の前に進み出ると両手でそれを奉げ出し

「此れは私からのお礼の気持ちです。お守りとして何時も肌身離さずお持ち頂ければ嬉しいのですが。」

と言った。

少尉は直立不動で敬礼をし

「身に余る光栄であります。この様に腹に巻いて必ずや肌身離さずに居ります。。」

穂花は嬉しそうに、

「風呂に入る時ぐらいは外せよ。」

そして、さらしを一尺ぐらいの巾で五枚を裂き取りながら、兵卒の方を振り返り、

「お前達にも作ってあげたいが、もはや時間が無い。お前達には此れを授ける。」

と言って、股座からにこ毛を数本ずつ抜くと、布に挟んで兵卒一人一人に手渡していった。

「昔、太閤秀吉がまだ藤吉郎と言われた足軽の時、後の北の政所と成るお寧のにこ毛を貰い戦場に行き、手柄を

立てて出世した。と言う逸話が有る、私の毛でも少しは御利益が有るかも・…。」

兵卒達はそれぞれ押し頂いてそれを胸のポケットに仕舞うと直立不動し、

「有り難う御座います。」

と敬礼した。

「私はこれから死んでいく身だ。しかし、死んでも魂はこの世に留まり貴様等が御国に無事帰還するまで守って

やる。安心して戦場で武勲をあげよ。少尉は必ずこの者達をを連れて生きて御国に帰還せよ。これが私の最後の

命令である。よいか、必ずだぞ!」

「有り難う御座います。心して承ります。」

全員直立し敬礼をした。穂花も答礼をして言った。

 

「此れより、斎種穂花(さいぐさ ほのか)の処刑を行う。銃剣を付けて整列。」

と穂花は命令すると、鉄棒の所まで歩いて行き、先程用意していたロープも輪に左右の手首を通ししっかりと

握ると、両足を少し開いて鉄棒にもたれ掛かる様に立った。

 

散華18

 

吉岡少尉が村上一等兵の助けを借りて、腰から胸の部分までさらしを絞め込むのが終わるのを見計らって、

その、此れから御輿を担ぐ時の様に、眩いばかりの凛々しい姿に目を細めながら、

「少尉、貴様は居合の達人だと聞いているが、その腕前を見せてくれぬか。」

「はっ、自己流では有りますが少々は…。」

穂花は右手をロープから外すと、手を握り親指の爪を左腹部に当てると、臍下一寸五分ぐらいの所を横一直線に

右腹部と移動させた。たちまち白い腹部にピンク色の線が浮かび上がった。

「この様に、此処から此処まで、そうだな、深さは一寸ぐらいで・…、出来るか?」

吉岡少尉は左手に軍刀を握ると、つかつかと穂花ほ方へ歩み寄り、間合いに入った所で立ち止まって直立し、

「切腹でありますか。御命令とあれば。」

穂花は再び右手をロープに通すと、体全体を強ばらせて、

「命令する。」

吉岡は軍刀を腰のさらしの間に差込むと、右足を一歩前に踏み出して、前屈みに刀の柄の手を掛けた。

穂花は一瞬を見極めてやろうと目を見開いて吉岡の手元に注視した。

チッ、と鯉口を切る音に穂花がハッとした瞬間、銀色の影が水平に走り、腹部に冷たい鞭で打たれた様な鋭い痛みを感じた。が目を下に落としても腹部にはただ肌が青白く感じる以外何の異常も無い様に見えた。

目を吉岡の方に向けると、すでに切っ先を鯉口に収めゆっくりと刀身を鞘に収めている所だった。そしてチャリンと鍔が鳴ったその時、穂花の腹部にプツンと赤い物が湧き出して来たかと思うと、たちまちそれが左右に広がり

一筋の線とを描いた。その赤い物が腹部を伝って股座まで達した時悪寒と吐き気を伴った激しい痛みに襲われ、

スーと視界が閉じていくのを覚えた。

穂花は両腕に千切れんばかりの力を込め辛うじて意識を失いそうに成るのに堪えた。目の前が真っ赤に成り、

やがてその視界に皹が入り、赤い色がパラパラと剥げ落ちて次第に視界が開けてくると、崩れ落ちて両腕だけで

鉄棒の柱にぶら下がっている状態で居る事に気が付いた。

立ち上がろうとしても肢に力を入れようとすると、腹部に激痛が走る。

見下ろすと臍下一寸五分ぐらいの所が横一文字に六寸ほどの長さに口が開き、呼吸をするたびにその傷口から血が吹き出し下腹部を濡らし内股を伝って地面に零れ落ちている。しかし思っていた程は出血していない様である。

穂花は痛みを堪えて肢に力を入れ、鉄棒に寄り掛かりながら体をくねらせて立ち上がり大きく息をした。

 

散華19

 

「見事だ。よし、この傷痕をめがけて夫々銃剣で突いてこい。吉岡、号令せよ。」。

「村岡一等兵前へ、構え、突け!」

「えい!」

ブスッと鈍い音がして穂花の体が痙攣した。銃剣は恥骨の少し上当りに二寸はど突き刺さっている。

「刃先が下がっている。一突きで仕留めないと貴様は殺されるぞ。よし抜け。」

「次、菊池二等兵、突け!」

「うおーっ」

ブスッという音がして刃は右太股に突き刺さった。

「ばか者、腰を入れて銃を構えろ。次。」

「中村二等兵行きます。イエーィッ」

今度は刃は左脇腹を擦っただけであった。

「チェッ、どいつもこいつもやる気が有るのか!次。」

「鈴木二等兵、エエーイ。」

今度も刃は股座を掠っただけであった。

「このど助平め、寄りによって私の一番大切な所を使い物にならない様にしやがって。まあ良いわ、次。」

「菱池、」

「どうした菱池、早くしろ。」

菱池二等兵は銃を構え穂花の前に立ったが、ブルブルと奮え出した。

「何をしている。早く突け!」

二等兵は目を瞑って突進したが、刃先は大きく横に外れ空を切った。

穂花は右手をロープから抜くと、拳骨を作り思いっきり二等兵の横面に食らわせた。

「ギャ!」

という声を発して二等兵は地面に転がった。

「貴様等、ゥーム、腹に力が入らん。一撃で敵を仕留めなければ自分が死ぬという事を心に叩き込め。少尉、

手本を見せてやれ。ここを、そうさな、刃を下向きに三寸ぐらい、腹部大動脈に達しない程度に。」

と穂花は臍を指差した。

「承知。」

と少尉は言うと、中村二等兵の銃剣を取り穂花の前に進み出て銃を構えた。

穂花が右手でロープを握り体を強ばらした瞬間、腹部に鈍い痛みと衝撃を感じた。驚いて腹部を見下ろすと、

銃剣の半分ぐらいが寸分狂わず臍を半分に断ち割って突き刺さっている。ほとんど出血は無く、ただ呼吸をするとお腹の中で冷たい物が上下している様に感じられる。

「見事だ、このまま銃床をしっかりと支えておれ。」

と穂花は言うと、右手をロープから外し銃剣の上に置いた。そして吉岡の目を見ると大きく息を吸い歯を食い縛ると声も出さず一気に銃剣を下に押し下げた。刃が恥骨に当たり鈍い音が聞こえたと思った瞬間目の前が真っ赤になり、火箸を万本も突き刺された様な痛みに襲われた。自分では声を出してはいないつもりが

「ぐえー!」

という身の毛の弥立つ様な音が兵舎に響き渡った。この光景には流石に其処に居る全員が目を覆った。

足の力も抜け左手だけでぶら下がっている穂花の腹部は臍から横一文字の傷口と交差して下腹部まで断ち割られ

血が激しく吹き出し股座と内股を真っ赤に染めている。

しばらくの静寂の後、血の滴りが少し収まった時、穂花の体がピックと動いた。繰り返し襲ってくる激しい痛みにうめきつつ上げたその顔は蒼白で唇もどす黒く目の下に隅が出来ているがその瞳だけはまだ輝きを失っていなかった。

穂花は必死に足に力を入れ起き上がろうともがいていた。もがくたびに傷口が開いたり閉じたりし、その都度血が噴き出る。

「ゥゥゥームッ」

というめき声を発して穂花が鉄棒を背に、摩り上がり立った時、傷口が開き中から臓腑の一部が食み出してきた。

穂花はそれを見下ろし満足げに肯くと吉岡の方を見て、

「どうだ、私の無念腹は。」

「ハッ、御見事です。」

 

散華20

 

「まだまだ。」

と穂花は言うと、右手で食み出した腸を掴むと重いっきり外へ引き出した。内蔵の一部が傷口から垂れ下がった。

通常、小腸や大腸は腸間膜で骨盤からぶら下がっている為、腹部が切り裂かれても外へ溢れ出る事は無いが、

刀で切断された部分が食み出して来たのである。

穂花は更に引き出そうとそれを引っ張ったが、胃を捩じられるような痛みに思わず鳴咽した。しばらく荒い息を

繰り返すと、今度は傷口に右手をを突っ込んだ。

穂花はお腹の中が意外と熱いものだと思いながら指先で腸を掻き分け硬い肉の塊を探し当てた。此れが自分の子宮だと思うと何か愛しく成り、しばらくうっとりとしてそれを指先で撫ぜたり摘まんだりしていた。爪が子宮に繋がっている紐のような物を引掛けた時背骨に疼痛が走り我に返った。

指でその紐を手繰ると左腹部の奥の方にぶよぶよとした物に包まれたそら豆大の塊に行き当たった。此れが卵巣…、穂花はは好奇心にわくわくしながら、それを思いっきり握り締めた。頭を蔦抜くような酸っぱい痛みに顔から汗が噴き出るのを覚えた。左手に力を入れてからだをささえると、それを握ったまま力いっぱい腕を引き出した。

「お腹の中でブチッという鈍い音がして体が宙に浮いた様に感じた時、目の前が真っ暗になった。何所かから

「何をしているの、そこで。」

という自分の声が聞こえてきた。その声に必死で答えようとするが声が出ない。遠くから

「少佐殿、斎種少佐殿。」

という吉岡少尉の声がきこえたきた。その声の方に手を伸ばし闇を掻き分けた時、突然視界が開け、また、左手のみで鉄棒からぶら下がっているのに気が付いた。腰骨が折れた様な痛みで立つ事も出来ない。

「少尉、私を立たせてくれ。」

穂花は懇願するような目で言った。少尉は無言で穂花の両脇の下に太い腕を差し入れると、しっかりと抱きかかえ立ち上がった。穂花の体は氷の様に冷たかったが、流れ出る血液は生暖かく感じられた。

穂花は暖かい吉岡の体温が自分の体に流れ込んで来るのを感じていた。

背筋を伸ばす様に鉄棒の寄り掛かると、か細く、

「手間を掛ける。」

と言った。少尉は無言で一歩後ろに下がった。

穂花はゆっくりと自分の腹部に目を落とした。そこには握っている感覚はまったく無いが、確かに自分の手の

中に赤黒い肉塊が有った。

手を開こうとしても言う事を聞かない.、体全体に奮えが来る。懇願するような目で吉岡を見た。

少尉はそれを察して前に跪くと両手で優しく穂花の手を包んだ。

吉岡の手の温もりが子宮に伝わり全身に広がって行った。と同時に手も動く様に成った。

「吉岡、これが私の子宮、ここに貴方の御子を宿したかった・…。」

「お前達も近くに来て良く見るがいい。まだ生きている女の子宮などめったに見れる物では無い。」

 

 

散華21

 

吉岡が横に退くと、兵卒達が前にしゃがみ込んだ。

穂花は肉の塊を指先で撫ぜながら、

「これが子宮という物だ。お前達はは皆この中で命を受け生れてきたのだ。」

そして青白いそら豆ぐらいの塊を指で摘まむと、

「これが卵巣という。腹の中にもう一個有る。お前達の金玉に相当する物だ。この中で命のかたわれの卵子が作

られる。出来た卵子は、このビラビラこれを卵管采と言うのだが此処から子宮の中に入り、命のもう一方のかた

われの精子と出会って受精し大きく成る。こんな神秘な命を貴様等は決して無駄にするな。どんな事をしてでも

生きる術を見つけよ。生きて御国へ帰れ。」

「ついでだが、此れが小腸だ、この様に薄い腸間膜で骨盤からぶら下がっている。腸で吸収された栄養はこの血管を通って全身に運ばれる、そして、この脇から覗いて居るぶよぶよとした管が大腸という。つまり、うんこ製造機だな。」

この言葉には皆思わず笑った。

「ほう、此れを見て誰一人嘔吐する者も無く、しかも笑いまで出るとは、だいぶ肝が据わってきたな。よし、

今度は此れを突け。村上一等兵。」

一等兵は前に歩み出ると、腰を落として一気に銃剣を突き出した。

ブスッと鈍い音がして切っ先は見事に肉塊を貫いた。

穂花はお腹にジーンと来るような鈍い痛みを感じた。

「よし、次。」

菊池二等兵、中村二等兵、鈴木二等兵、と順に突き進み、穂花の子宮は

割れた柘榴の様に赤い内壁を晒しだしていた。

「菱池二等兵、ほう、もう震えてはいないな。心してやれ。」

「菱池二等兵、突きます。えいぃぃ。」

刃先は肉塊の少し下あたりを貫き横に振れた。穂花の子宮が ボトッという音を立てて地面に転がった。

全員一斉にそれを注視し、続いて穂花の顔を見た。穂花はため息を吐くと、

「まあ、格段の進歩というか。もう私も長くは持つまい。次はここを間を置かず順番に突け。」

と右乳房を指差して言った。そして右手を鉄棒に絡め足を踏ん張った。

村上一等兵が無言で穂花の前に出ると他の者もそれに続いた。胸に衝撃と供に鋭い痛みが走ったかと思うと、

目の前が真っ赤に成った。続いて四回ドスン、ドスンと強い衝撃を感じたがもはや痛みは無かった。最後の刃が引き抜かれた時、喉元に熱い物が込み上げてきて穂花は咳き込んだ。口と鼻の穴から血が吹き出した。

散華22

 

霞む目で吉岡を見た穂花は

「もう良いだろう、楽にしてくれ。」

と、今度は左乳首を指差して言った。

少尉は肯くと軍刀を抜いて刃を横向けて水平に構えた。

一歩前に出たと見えた時、穂花は胸に冷たい物を感じた。衝撃も痛みも全く無かった。下を見ると刀の切っ先が

乳首を上下に分けて、三寸ぐらい乳房の中に埋もれている。

「見事。」

穂花は言った。

「御遺体は?」

少尉が言った。

穂花はニヤッと笑って

「その時が来るまで曝せ。」

少尉は

「承知。」

と答えるとゆっくりと刃を押し込んでいった。

穂花は心臓に目が有るかのように、自分の心臓に向かってくる刃先が見えた。刃先が心臓に触れた瞬間鋭い痛みが走り目の前が真っ暗に成った。

心臓がスコン、スコンと空打ちをして停止したのがわかった。

穂花は最後の力を振り絞って足を踏ん張り鉄棒に寄り掛かって空を仰いだ。一瞬真っ青な空が見えたと思った時

漆黒の闇と静けさが訪れた。

穂花は鉄棒に寄り掛かり立ったまま息絶えた。鼻と口と胸と腹の傷口からはまだ血が滴り落ちている。

とその時、にわかに空が掻き曇り大粒の滝の様な激しい雨が降ってきた。

広場にいた者達は慌てて兵舎の入り口へ駆け込んだ。穂花の姿も白い雨の幕に遮られ見えなく成った。

雨は小半時降ってまたピタッと止んだ。六人は穂花の所へ駆け寄った。

其処には、全身の血が綺麗に洗い落とされた白いほっそりとした肉体が空を見上げる様に佇んでいた。

その顔は微かに笑みを浮かべた様で、唇に残った紅が異常に栄えてみえる。右胸と腹部はパックリと口を開け肉が食み出している。

「壮絶だな。」

と後ろから声がした。振り替えるとそこに橘中将が立っていた。皆直立不動で敬礼をした。

「少尉、お前達でこの遺体を警護しろ。この遺体に手を触れたり、害を及ぼそうとする者がいたら射殺しても良い。少佐に服を着せてやれ。裸のままではあまりにも惨めだ。」

兵卒達が服を持ち寄ったが遺体を動かさずに服を着せる事は不可能で戸惑っていると、中将がポケットがら小さな裁縫道具を出して少尉の手に渡した。

菱池二等兵が地面に落ちている肉塊を拾い、丁寧に付いている砂を落とすと少佐の腹部に押し込んだ。

村上一等兵はそれを見て、さらしの残りを手に取ると、傷口を押さえながら丁寧に少尉の体に巻き始めた。

他の者もそれを手伝った。胸から下腹部そして太股まで丁寧にさらしが巻かれると、生きているような優雅な穂花の姿が甦ってきた。

少尉は兵卒に指示し、少佐の制服の袖の部分と両脇の縫い代を解き、被せる様に少佐の体に掛け、再び解いた部分を縫い止めた。スカートは、足元を僅かに持ち上げ履かせた。最後に濡れた髪の毛を丁寧に拭き揃えた。

「整列。」

と少尉の号令が掛った。

「斎種少佐に敬礼。銃を天に向け構えよ。順に放て。」

橘中将も敬礼をしていた。

五発の銃声が兵舎に響き渡った。

 

 

散華23

 

「此れより二人一組交代で昼夜分かたず少佐殿の警護を行う。少佐殿から三間の所に縄を張れ、だれも此れより

中には入れるな。入ろうとする奴は中将殿がおっしゃられた通り射殺して良し。縄までは立ち寄り自由とする。

今十七時、交代勤務は十九時から開始する。まずは村上一等兵と菊池二等兵銃を持ち少佐殿の両脇に歩哨に立て。次は中村二等兵と鈴木二等兵、その次は菱池二等兵と村上一等兵、の様に十二時間交代で別命するまで続けよ。

当直に当たる者は十八時半までに夕食を済ます。明け後に朝食とする。夜勤明けの二番目の者、つまり今回は菊池二等兵が続く昼勤の昼食を、昼勤の二番目の者、つまり今回は鈴木二等兵が続く夜勤の夜食を用意せよ。十九時までは私が警護する。本日当番の二人は直ちに食事と風呂をして此処に集合。他の者も随時食事と風呂を取り休息。解散。」

「少尉、これから君達六人を一階級昇進させ吉岡小隊とし、私直属とする旨全体に布告する。そのつもりで行動せよ。

明日拘束している二人の処刑をここで行う。」

橘中将は言うと兵舎に戻っていった。少尉と兵卒達は直立してそれを見送った。そして将軍の姿が兵舎の中に消えるのを見計らって兵卒達も一列に成って足並みを揃え兵舎に入っていった。

 

翌朝二人の将校が憲兵に広場に牽かれて来た。

そこには橘中将と吉岡中尉そして五人の兵士が真新しい襟章を付け銃を持って待っていた。

二人の将校は斎種少佐の遺体と対面する位置に立てられた杭に縛り付けられた。

橘中将はその前に立ち、

「この裏切り者共が、貴様らのせいで何人の兵士が命を落としたか!」

と言って手で二人の襟章と肩章を引き剥がした。二人は青ざめて

「い、命ばかりは・・・。」

と声を震わせて言った。

中将は

「ほう、命乞いか、よし命は取らないでおいてやる。後で銃殺の方が良かったと後悔するだろうがな。こいつ等を裸にしろ。」

村上上等兵以下四人の兵士は銃剣を抜き、二人の軍服を切り裂いた。

「中尉殿・褌はどういたしますか?」

と菱池一等兵が言った。

「全部だ。」

と吉岡中尉は言うと自分の軍刀を抜き褌を切った。

そこには見るの哀れに縮み上がった魔羅と金玉が有った。

「なさけない、しかしお前たちにはこんな物でも持っている資格は無い。」

中尉は陰嚢をむんずと握ると刀を根元に当て一気に引いた。

「ギャア」

と言う声と共に見事に魔羅と金玉が地面に転がった。

と、中尉は魔羅の無い股間に刀を差し込むと、ゆっくりと撫で上げた。

股間がぱっくりと二つに裂けた。

「此れで少佐殿と同じに成ったな。」

と言いつつもう一人にも同じことを行った。

兵舎じゅうに悲鳴は響きわたりほとんどの窓から顔が現れた。

「少佐の時と同じ方法で二人を処刑せよ。但し、命は取るな。」

と中将は指示すると兵舎に戻っていった。

 

散華24

 

「これより二人の処刑を行う。お前らは少佐殿に行った仕置きを覚えているな。その時と同じ順序で行う。全員銃剣を付けよ、村上上等兵から始!」

「はい、私一度目は恥骨の少し上当りに二寸はど突き刺さしました。」

と言うと突き出した銃剣は見事に目掛けた所に刺さった。兵舎に再び悲鳴が響いた。

「菊池一等兵、私は右太股に突き刺さしました。」

「中村一等兵、私は左脇腹を擦っただけでありました。」

「鈴木一等兵、私は股座を掠っただけでありました。」

それぞれは申告どうりに見事にその場所を刺した。

「次、菱池一等兵。」

と中尉は号令した、が菱池一等兵は恥ずかしそうにもじもじとしている。

「あのう、私、出来なくて、少佐殿に殴られて・・・。」

「そうだったな。なら、この二人を思いっ切り殴ってやれ。但し指を骨折

するといけないから、そこらの石ころを拾ってそれで。」

と中尉は苦笑しながら言った。

二巡目は全員みごとに腹部を突き、二人の腹はずたずたに裂けた。

そのあまりの悲惨さにいつしか兵舎の窓は全部とじられていた。

「良し、仕置きはここまで。あとは絶息するまで晒しておけ。

それまで順番どうり二人が警護に当たり他の物は食事と休憩。今度は二時間ごとに交代しろ。」

と吉岡中尉は命令を出し。将官室に向かった。ドアをノックして

「吉岡入ります。閣下、これで宜しかったのでしょうか?」

と問うた。

「うむ、少しやりすぎかとも思ったが、少佐の無念を考えるとな。それに気の緩んでいる部隊の引き締めにも成る。しかし、これから君たちへの風当たりは強く成るかも知れない。若い連中を守ってやってくれ。奴等はまだ生きているのか。」

「はい、腹部に傷を負ってもなかなか死ねない事が良く分かりました。止めを刺してやりますか?」

「いや、ほっておけ。あと数時間は持つまい。」

 

 

散華25

 

二人のうめき声は夕方に成って聞こえなくなった。

あたりが少し薄暗く成り、東の空から上った満月が穂花の遺体を照らした。

と、どこからともなく真っ黒な蟲の群れが湧き出し、穂花の体を覆って行った。村上上等兵はびっくりして慌てて総監室に電話をかけた。

「吉岡中尉殿はおいでですか、少佐殿が大変なことに成っています。」

中将と中尉は急いで中庭に出た。

菱池一等兵が手で必死に蟲を払い除けようとしている。吉岡中尉はそれを見て

「これは死出蟲だ、少佐殿が成仏されようとしておられる。静かに見守って差し上げろ。他の三名も集合させよ。」

それからしばらくの間中庭に蟲が遺体を食べる不気味な音が鳴り響いた。

月の光がいっそう明るく成った時、蟲の群れが突如として姿を消した。

そこには白骨と化した斎種少佐の姿があった。

穂花の右手の縄が切れ、ガサッという音と共に体がずり落ちた。

その姿は、片足を地面に付けた膝立姿勢で右手を胸に頭を垂れている。

左手を上げ優雅にお辞儀をしてた。

「少佐をこの場所に葬ってあげなさい。」

と言い残すと中将ほ部屋へと戻りかけた。

「あちらの二人はどうしますか。」

と中尉が問いかけた。

「目障りだ、営舎の外にほり出して晒しておけ。」

六人はその場に穴を掘り、その底に畳をひいた。それは五人が筆卸をした時の物だった。穂花の遺体は中尉の胸に抱かれ、静かに畳の上に寝かされ、中尉はその体を日章旗で包んだ。

六人は穴の周りをかこんだ。

「斎種少佐に敬礼。」

営舎の中からも軍靴の鳴る音があちらこちらから聞こえた。

 

橘中将の隣の吉良准将の部屋は二つに仕切られ中将側の部屋に吉岡中尉が、他方に五人の兵卒が寝泊まりし二人の将校の部屋は彼らの作業部屋に改装され、それぞれの部屋は廊下を通らなくても良い様に内戸が設けられていた。

その夜更村上上等兵は枕元に異常をを感じ、そっと銃剣を握って

「だれだっ」

とさけんだ。他の者もその声で慌てて飛び起きた。菱池一等兵がベッドの柱で頭をぶっつけた鈍い音がした。

他の四人はそれを見て一斉に

「ドジ」

と笑った。

穂花はその様子に菩薩の様な微笑みを浮かべ消えて行った。

同時刻に、吉岡中尉は寝ている体の上に何かが覆い被さって来るのを感じて飛び起きようとしたが、金縛り状態で体を動かす事が出来ず目だけを見開いた。そこの穂花の顔が有った。

「少佐殿」

と声を発した。すると頭の中で

「少佐殿では無く穂花でしょ。」

と言う声が聞こえた。吉岡が

「穂花、もう一戦交えようか?」

と声をかけると穂花は嬉しそうに笑ってそっと唇を被せてきた。吉岡はリアルに冷たい物が唇に触れて、はっと

したその時金縛りが解け、あたりには誰も居なかった。

丁度その時、橘中将は自室に人気を感じて目を覚ました。ベッドの枕元に有る軍刀に手を掛けると

「だれだ?」

と言った。

返事が無かったのでゆっくりと起き上がり暗闇に目を凝らした。

すると其処にボヤットした物が現れ、それがだんだんと人の形状を成していった。

「斎種少佐か。」

と中将は言ってベッドに腰を掛けた。

斎種少佐は無言で直立し敬礼をした。

中将も黙って敬礼を返した。

斎種少佐は微笑んで後ろを向くとドアの外へと消えて行った。

 





  1. 2018/08/10(金) 16:01:00|
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